幽霊船での遭遇
…何が起こったかは分からない。だが、今見えているのは確かだ。俺たちは今、噂で聞いた船に乗っている。見た感じ、幽霊船と言っても過言では無いほどに朽ちている無人の客船。俺と赤美ちゃんがいる場所も下手したら足場が崩れるほどに朽ちている。さて、どうしたものか…
長門さん達が助けに来てくれる?いや、それは無さそうだ。霧は濃いし、まず第一、どこなのかが分からない。なら、やることは1つ。
「探索を、しよう!!」
そう言って俺は赤美ちゃんの手を繋ぎ、足を1歩前に出した。
バキッ!!
明らかに聞いてはいけない音だった。その音が何を意味しているのかすぐに分かった。
そう、床が抜けてしまっていたのだ。
「わぁぁぁぁ!!」
俺は断末魔の如く叫びながら赤美ちゃんと一緒に落ちていく。2、3mか落ちて俺はしりを強打した。
「痛ったぁ…」
その直後、赤美ちゃんが俺の上に落ちてきた。
「グエッ!?」
つい潰れたような声がでてしまった。幸いにも俺に怪我は無いし、俺がクッションになったからか赤美ちゃんも無傷だ。
しかし、状況が悪化はしたと言える、こんな不気味な船の中に入ってしまったのだから。本当は軽めに探索しようとしたのに…
そう思っていると、明らかに俺が探索しようとしたばっかりに状況を悪化させてしまったのと赤美ちゃんを巻き込んでしまったという罪悪感が心の底から湧いてきた。赤美ちゃんを見ると無心の顔をしながらボリボリと飴ちゃんを食べている。俺は幽霊船からの恐怖心もあり、何を思ったのか飴ちゃんをボリボリと食べている赤美ちゃんの目の前で思いっきり土下座した。
「本っ当にすいませんでしたぁぁ!!」
それも床に両手を思いっきりバンッ!!と叩きつけて。それが更に状況を悪化させた。両手を床に叩きつけた反動で床が再び崩れ、俺は土下座の姿勢を保ったまま断末魔を上げながら落ちた。
「嘘ぉぉぉんんんんん!!!!」
一方、赤美ちゃんは飴ちゃんをボリボリと食べながら無言で落ちていった。
再び落ちて3、4mぐらい落ちたであろうか。俺はさっきと同じようにしりを強打した。
「痛ったぁぁ!!」
そしてさっきと同じように赤美ちゃんのクッションになった。
「ぬぅぅぅんんん!!」
何となく流れが分かっていたのでクッションになる瞬間に受身は取れたのでダメージはさっきよりはなかった。俺は起き上がり落ちてきた穴を見た。だいぶ深くまで落ちたようだ。多分ここは船底に近い場所だろう。流石にこれ以上は落ちることは無さそうだ。俺は安堵したが同時にさっきの罪悪感が再び湧き出し、俺はボリボリと飴ちゃんを食べている赤美ちゃんの目の前で今度は全身を伸ばしながら地面に顔面をつけ、床土下座をした。
「誠に申し訳ございませんでしたぁぁ!!!!」
多分、第三者から見たらシュールな光景が広がっている。俺は床土下座をキープしながら無言になっていると突然、どこからか小さな爆発音が連続して聞こえてきた。それはまるで銃声のようだった。
「なんだ?」
俺は起き上がりその音の方に耳を傾けた。すると微かだが人の声らしき音が聞こえた。
「声が聞こえた…」
赤美ちゃんもどうやら聞こえたらしい。これは助けを求めれるかも。俺はとっさにそう思い赤美ちゃんの手を繋いだ。
「助けてもらおう、それで何とかなるかも。」
その事を聞いた赤美ちゃんは頷き、俺は船の奥へと進んで行った。
廊下はさっきまで乗っていた戦艦大和とは真逆で真っ暗でジメジメしている。所々朽ちて場所によっては朽ちた穴から別の部屋の空間が見える程だ。俺と赤美ちゃんは慎重に廊下を進んでいく。時折、さっきの爆発音が聞こえてくる。それと同時に人の声も聞こえてくる。その音は先に進むにつれ、徐々に大きく聞こえてくる。
「…て…う…」
少し何を言っているのかわかる距離まで近づいてきた。
「や…だ…う…」
連続して聞こえる爆発音もどんどん大きくなる。
そして更に近づいた時だった。突然、その音は鳴り止み、人のような声も聞こえなくなった。とにかく俺はさっきまで聞こえてきた場所に向かった。すると、目の前に人の影を見つけた。その人は猫背気味だがちゃんと動いている。俺は咄嗟に助けを求めた。
「すいません、迷い込んでしまって。助けてくれませんか?」
助けが届いたのかその影は俺の方に近づいてきた。俺はひとまず安心かと思った。しかし、それは安心とは真逆だった。近づいてきたのは皮膚がえぐれ、骨が所々見え、髪は抜け落ち、目は潰れている、まるで動く屍だった。しかも明らかに俺たちに襲いかかってきてる。俺は咄嗟にとにかく攻撃しなくては!!と思った。しかしそれと同時に船に武器を置いてきてしまっていることに気づいた。
「武器が無いッ!!」
俺があたふたしていると怪物がスピードを上げ、俺に襲いかかってきた。
終わった…と思ったその時、爆発音と共に怪物の頭が吹き飛んだ。そして目の前で倒れた。視線を前に向けるとそこには銃をこっちに向けている誰かがいた。今度はさっきの怪物では無さそうだ。その銃を向けている誰かがゆっくりとコツンコツンと足音を鳴らしながら俺達に近づいてくる。俺は咄嗟に赤美ちゃんを庇った。そして朽ちてできた穴から差し込んでいる光が銃を向けている誰かまるでスポットライトのように当たった。変わったガスマスクをつけており、少しごつい服、そして少しごつい帽子。まるでドイツ軍人だった。その人は左手を腰に回し、右手で俺たちに銃口を向け、低い声でこう言った。
「Guten Tag」と。




