ボス戦っぽいなにかだと思ったか
私とゲリさんの手足が復活するまで数分、他愛もない話や今のドロップアイテム、ついでにこの段階で呼びかけた外の人たちの状況を整理していた。
まずドロップアイテムだけど。私は破損した大きな魔核というアイテム、レアドロップの一つなんだろうけれど壊れている。
多分錬金術関連で直せるんじゃないかしら、壊れてない魔核とかそういうの一杯集めて。
まぁゴーレムを作るくらいならキメラ作るから正直いらない。
それと魔道回路が5個くらいぽんぽんと落ちた。
普通のゴーレムだと1個落とすか落とさないかだから、結構な大盤振る舞いよね。
対してゲリさんだけど、融解した装甲板というのがドロップしたらしい。
あとやっぱり魔道回路。
組み合わせたらゴーレムを作り直せるのかもしれないけれど、ゲリさんも錬金術はスルーしているらしいから無用の長物。
そこで出てきたのが外で戦ってる人。
どうやら私達がゴーレムの数を減らしたことで塔に侵入できたっぽい。
その中の一人に検証班って人がいるらしいんだけど、その人になら高く売りつけられるとかなんとか。
どうやら私、他のゲームで知り合っているらしいけれどこっちじゃ初めましてだからね。
顔を見ない限り誰かわからないわ。
とまぁ、そんな話を終えて肉体の再生も終わったことで気を取り直して上層階へ足を踏み入れた。
「来やがった! 全員戦闘配備!」
お? アイコン的にNPCじゃない人たちだ。
多分塔で雇われたプレイヤーたちなんでしょうけど……ゴーレムと共闘すればよかったのに。
そうでなくてもこっちがぼろぼろのところを攻撃すれば一方的に勝てたでしょうになんでそうしなかったのかしら。
ま、こっちとしては助かるんだけどね。
「ゲリさん、こういう雑魚の相手はどうするべきかわかる?」
「え? 俺のブレスで一網打尽とか?」
「いいえ、数に頼る相手なら、こっちも数を用意すればいいのよ」
ここに来るまでにゴーレム戦では使うことなかった存在。
端的に言ってしまえば下僕たちを押し付ける。
彼らも銀弱点を私から引き継いでいるし、聖属性の弱点も持っている。
そしてプレイヤーの皆さんは銀装備か、よければミスリル装備の人もいる。
でも数の暴力ってすごいのよ?
弱点をどうにかしてしまえばいいのだから……。
「邪悪結界!」
尻尾の数が増えたことで効果時間も範囲も強化された邪悪結界、その範囲内であれば銀だろうがミスリルだろうが関係ない。
強いて言うなら私もある程度前線に近いところにいなきゃいけないくらいだけど、ゾンビの壁がある以上それを突破できるかと言えば……。
「なんだこいつら!」
「くそっ! 銀も聖属性も効かないぞ!」
「炎だ! 炎を使え!」
とまぁ大パニックになっている彼らには無理でしょう。
そしてゾンビに纏わりつかれている人を見かけたら私がさっくりと心臓を抜き取る。
あるいは首を落とすなりして終了。
はっきり言ってね、人間プレイヤーって脆いのよ。
化け物プレイヤーの中には首を落とされたり心臓を引っこ抜かれたくらいじゃ死なないのもいる。
だけど人間は確実に死ぬから、防御面は紙もいいところ。
特に銀の鎧とかはこちらが対策とれていたら鉄装備よりも脆いから簡単に貫ける。
……まぁ厚紙が障子紙に変わった程度の違いでしかないけれど。
「あ、ゲリさん。右から来てるよ」
「んー」
ゾンビの壁を迂回してきた敵がゲリさんに剣を向けるけれど、その鱗に阻まれて刃が通らない。
さっきのゴーレムが持っていた巨大なマシンガンでやっと、というレベルの硬度なんだから銀の剣でどうにかなる相手でもないしゲリさんにも邪悪結界が効いている。
となれば、あとは言うまでもなくぷちっという音が響いただけだったわ。
3人、あっさり消えたわね。
「さぁて……そろそろお腹も減ってきたし」
「あ、いやな予感」
私の呟きにゲリさんが一歩後ずさる。
「カーニバルの時間よ!」
下僕たちには捕らえる事を優先させて、捕まえた相手をバケツリレーの要領で運んでもらい、ワタシ、アナタ、マルカジリ。
なんかわんこそばみたいねこれ。
そうこうしている間に5分もたたずに全滅した彼らからドロップアイテムを頂いて、と言っても大半が銀だったから換金アイテムよね、私達にとっては。
そのまま次の階へ進んだ。
そこはまるで制御室ともいうべき場所、何人かのNPCがこちらをちらりと見たけれど慌てるでもなく、怯えるでもなく、そして戦意も見えない。
「あら? 戦う気はないの?」
「魔の者と争う理由はない。下の者達を雇ったのも、ゴーレムを差し向けたのも、捕らえようとしたのも上の意志。ここで我らを殺すというのなら好きにすればいい。所詮は替えのきく命だ」
あぁ、これ知っているわ。
達観を通り越してあきらめた眼をしている。
全てを投げ出して、組織の歯車であることを良しとした眼。
「なぁフィリアさんや」
「なんだねゲリさん」
「俺、この人達見てると今すぐログアウトして退職届書きたくなってくるんだけど」
「フリーで仕事できる自信があるならそれもありかもしれないわね」
「……もうちょっと我慢する」
ゲリさんの泣き言はともかくとして、もう一つ階を上ると今度は研究施設のような場所に出た。
たくさんの魔族素材が置いてあるけれど……どれも品質は最低値。
そんな素材を相手に下の階にいた人達みたいに死んだ目で仕事をしている人たちもスルー。
はい、もう一階上ります。
今度はゴーレム生産施設、これは厄介なのでゲリさんのブレスで薙ぎ払ってもらった。
これで今後ゴーレムが襲ってくる回数は減るでしょう。
そして私達はついにたどり着いた。
この、ばかばかしい塔の最上階へ。
そこにいたのは……円卓を囲み会議でもするような恰好で、すでに息絶えた老人たちだった。
「死んでるわね」
「死んでるねぇ」
互いに顔を見合わせて、とりあえず片っ端から確認していく。
間違いなくどれも死んでいる。
懐から財布を抜いても、心臓を掴みだしても、なんか高級そうな指輪とか盗んでもピクリとも動かない。
とりあえず全部ゲリさんのブレスで火葬する。
「乱暴なことをする。死体あさりとは感心しないな」
突如そんな声が響いてきた。
「なに奴!」
ゲリさんが芝居がかった言葉づかいで周囲を見渡すけれど、そんなことするまでもなくモニターがおりてくる。
半ばミイラになっていたからわかりにくいけれど、窓際に座ってたおじいちゃんの顔によく似ているわね。
「わしらこの塔の守護者なり。命尽きた今はかりそめの肉体に魂を宿しているがな」
「かりそめね……ゴーレムのことかしら?」
「あのようなもの、下っ端どものための道具にすぎぬ。わしらは専用の肉体を用いるぞ」
その言葉と共に出てきたのはキメラとも呼ぶべき姿のなにか。
まぁ見るからにいろんな魔族の特徴を持っているのよね。
例えば私みたいに蔦をはやした狼男とか、無駄にイケメンなんだけどドラゴンっぽい羽が生えているとか。
「わしらの肉体に対する冒涜、その身で償ってもらおう」
「あら、私達を次の肉体にするつもり?」
「しかり、純正の魔の者と我らが作り上げた疑似的なものでは性能も大きく違うだろう」
「へぇ……もしかして招き入れた人もそういう結末を?」
「そのつもりだったが、あれらは役に立たんな。あのような脆い肉体などいらぬ」
なるほど、人間プレイヤーも利用するつもりでいたけど想定以上に弱かったからそのまま無視したのね。
本当なら彼らはエサに引き寄せられて使い捨てられる運命だったと……へぇ?
「別にこの身体、あげてもいいんだけどゲリさんは?」
「むしろこの身体の方が倒しやすいと思うけどね、正直こいつらにくれてやるには上等すぎるんじゃないかな」
まぁ、VOTを通していろいろな制限が解除されているとはいえ機械のアシストあってようやく動かせる肉体。
生身で動かせるとしたら本物の化け物か神様くらいのものよ。
司馬さん辺りはあっさりアシスト切って動きそうだけど。
「貴様らの意見などどうでもよいわ。ここでその身を置いていくがいい」
その言葉と同時に私とゲリさんの前に画面が表示される。
『注意、この戦闘で敗北すると敵は貴方方のアバターと同じ能力を持つ姿へと変貌します。敗北時デスペナルティの時間が2倍に引き伸ばされます。またリスポンエリアが地下2階に再設定されました』
……まーじで糞運営。
「えぇ……?」
ゲリさんも困惑している。
まぁそうよね、敵の数は10体。
こっちは二人だけど、あっちは化け物プレイヤーと同等かちょっと下程度の実力。
分が悪いのは言うまでもなく、こちらが負けると不利になる……なるかしら?
聖水でもぶっかければ勝手に死ぬようなことになるから弱体化の可能性もあるんだけど……まぁいいや。
「とりあえず勝てばいいのよね」
「だねぇ、どうする?」
「ゲリさん、ブレス」
「おいっす」
ゲリさんのブレスがキメラたちを包み込む。
その威力は自由の翼に対して向けた物よりも強く見えた。
一瞬で全員が炎と雷に包まれるが……。
「無駄じゃ! そのような攻撃、この聖剣の前にはな!」
キラキラと光る剣を掲げて叫ぶ下半身が馬のおじさん。
多分あれが親玉ね。
だったらやることは一つ。
「ひょ?」
いつもより強く踏み込んで、一瞬でその首を落とす。
見せしめのようにその頭部を齧ると馬のタテガミっていう部位みたいな味と食感。
結構美味しいわね。
ついでに奪い取った聖剣だけど、邪悪結界が効いているのに腕が痛い。
さっさとインベントリにしまってしまおうとしたその時だった。
「汝、よくやったと褒めたたえよう」
私の腕もろとも、乱入者にその聖剣が奪われた。
接種6日目にして左腕がしびれているので明日は様子見させていただくかもしれません。
更新続いてたら「あぁ、動くんだ」くらいに思ってください。
感想返信は月曜日に行わせていただきます。
Q&A~主人公~
Q,あなた主人公の自覚あります?
A,それは美味しいんですか?
Q,瑕疵物件で一番怖かった出来事は?
A,ゴキブリが出た時
Q,瑕疵物件が原因で体調崩したりとかなかったんですか?
A,とくには
Q,明らかに人外と関りありますよね
A,幽霊関連は結構関りあるけど他に何かあるの?
Q,幽霊に対して一言
A,食べ物粗末にするような輩は地獄にけり落とす
ただのいたずらなら放置する
Q,最近困っていることは?
A,ご飯が美味しくて食欲が増えてる、お財布が軽い
Q,祥子さんは元気ですか?
A,寝室以外はいまだにうるさいらしいけど冷房いらなくていいと喜んでる
Q,人間プレイヤーとかNPC食べるのって躊躇しないの?
A,とくには、生きてるムカデ食べた時よりは怖くない
Q,よく欠損するけどリアルでもそんな捨て身なの?
A,そんなわけない、ゲームだと割り切ってるからできる
Q,リアルで死にかけた出来事は?
A,数えきれない、けど鮮明に覚えているのはシベリア虎と戦ったとき
Q,苦手な食べ物は?
A,ダイオウグソクムシの姿揚げ、硬いから口の中に刺さる
味は好き
Q,師匠って誰?
A,いろんな人がいるけど軍人さんとかが多い、中には武道に人生奉げた人もいる
Q,おっぱい大きいですね
A,霜降りです




