表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

613/618

鬼! 悪魔! 刹那!

 さて、快適な空の旅だけど……。


「ゲリさん、今どの辺?」


「あー、奥多摩の手前ってところっすかね」


「そっか、じゃあもう危険地帯は抜けたわけだ」


 アメリカ軍の航路を横切った際に戦闘機が何機か近くを飛んで見張っていたのだ。

 正直怖いとかより五月蠅かったわ。

 戦闘機と同じ速さで飛べるゲリさんも大概だけど……あの爆音はきつかったわ。

 以前その場のノリで入ったライブハウスの100倍は五月蠅かった、誇張抜きで。


 それ以上に問題があるとすれば報道ヘリも飛んでいた事だろうか。

 流石一国の王様と総理大臣なだけある。


「円香ちゃん、耳は大丈夫?」


「なんとか……騒がしいのにはそれなりになれてますから」


「あら意外。もっと静かな場所で暗殺する系だと思ってた」


「仕事は選びませんし、相手は場所を選んでくれませんからね」


 軽く笑みを作っているが引きつってるし冷や汗もだらだらである。

 相当きつかったのがうかがえるけど、まだ余裕はありそう。

 一方祥子さんはと言えば鞍に取り付けられた背もたれにのっしりと身体を預けてタブレットでお仕事中だ。

 この人はこの人で肝が据わっている。

 ゲリさんタクシーは意外と各国の要人に使われているから慣れたものだ。

 なお祥子さん本人が一人で飛んだ方が早いのだが、護衛などの随伴者がいた場合ほとんどついていける人がいないので彼を利用しているらしい。


 その数少ない例外が縁ちゃんと、ご飯が絡んだ時の私、そして性欲が絡んだ時の辰兄さんだ。

 ……自分で考えておいてなんだけど嫌な並びだな。

 まるで私が辰兄さんと同類みたいだ。


「ちなみに聞いておきたいんですが、そちらのお嬢さんはどういったお知り合いで?」


「あら、タクシーが詮索? それとも王様として?」


 きらりと祥子さんが目を光らせた。

 普段のおっとりした眼差しが剣呑な政治家のソレに変わる。


「あぁいえ、ただの雑談っすよ」


「まぁいいわ。せっちゃんの親戚よ。遠縁であってるかしら」


「伊皿木と木皿儀が混ざったって話はちょくちょくありますが、基本的に子供は伊皿木家に来ていたはずなので血縁的には大昔に血を別った親戚ですね。滅茶苦茶遠縁です」


「ということ。大丈夫、この子はせっちゃんほどいかれてないから」


 どういう意味ですか祥子さん?


「安心しました」


 どういう意味だゲリさん?


「比較対象がこの人というのも……」


 どういう意味よ円香ちゃん?


「あ、もうちょい東に」


「うっす、こっちすね」


「あぁ行き過ぎです。15度くらい戻して」


「了解っす」


 ……案外仲がいいわね。

 ゲリさんも円香ちゃんもファーストコンタクトの割には打ち解けているようだ。

 一方私は謎の疎外感に包まれている。

 いや、暇なのよね……今じゃ空の上でも電波通じているけど、端末使ってゲームやるほどじゃないし。

 かといって祥子さんみたいに仕事があるわけでもない。

 円香ちゃんのように空の旅を楽しむというには慣れ過ぎてしまった。

 なんならよく落ちてくるコロニー受け止めるために自力で飛んでるからあまり面白いモノも無い。


「のどかですねー」


「俺の背中に乗ってそんなこと言えるのフィリアさんくらいですよ?」


「気になってたんですが、そのフィリアってなんすか?」


「あー、私のゲーム時代のキャラクターネーム。フィリアって名前で遊んでたの」


「へぇ……」


 む、何やら詳しく聴きたくないと言った感じの気配がびんびんに感じ取れる。

 ならば語ろうではないか。


「化け物になろうオンラインってゲームでね、吸血鬼ベースのキャラクターで大体の物を食べられるようにキャラクリしたら序盤は苦労したのよ……そりゃもう何回も死んでね? 途中からは気を付けるようになったし、プレイヤー達も聖水ポイ捨てするようなことなくなったから死ぬ機会は減ったけどそれでもちょくちょく死んでたわ。最後の方なんかは生身でゲームの世界に突撃よ。大変だったわ」


「……なんか、刹那さんってどんな世界でも順応するか即死亡するかしかなさそうな人っすね。死因も餓死か、うっかりミスで」


「失礼な。いざとなったら樹木や岩でも栄養摂取できるから餓死なんかしないわよ」


「うっかりミスの方を否定してほしかったっすけど……」


「ふっ、お嬢さん。フィリアさんにとっちゃこの程度序の口だぜ……ネットに伝説が諸々載ってるから調べて見な。伊皿木刹那とか、化けオンスペースフィリアとか、暴食さんとか、イート・フィリアとか」


「やな予感しかしないのでやめておきます……」


「ところがどっこい、そうもいかないのよね。はいこれ」


 2人の世界に入っていたゲリさんと円香ちゃんに祥子さんが釘を刺した。

 差し出されたのは仕事用とは別のタブレット。

 そこに表示されたのは私の過去の言動や、諸々の切り抜き動画である。


「これから木皿儀家相手に交渉するわけだし、どんだけ無謀な戦いを挑んだか知るにはせっちゃんの情報も必要でしょ。今のうちに見ておいた方がいいわ」


「……はい」


 それを受け取り、チラリと見た円香ちゃんの顔色が青くなったり赤くなったり紫になったりしていた。

 ……ころころ変わる表情ってみていて楽しいよね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 鬼「誠に、非常に、エブリシングマキシマムアルティメット遺憾である」 悪魔「そんなとこに並べるとか、人の心はお持ちですか?」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ