伊皿木家の愉快な子供達
さて、とりあえず祥子さんは重症なので最低でも三日は休んでもらうことにした。
トラブルによる急な出産という事で世間に通達したのだが、地球に元からいた人たちは納得、異世界から来た人たちは困惑と言った様子だった。
まぁ、なんでもありな状況になってるこの世界では今更。
十月十日の原則がある世界だと異常というのはよくわかる。
問題は……。
「……………………」
「……………………」
無言で向き合う我が子熾君と、久しぶりにうちに遊びに来た辰兄さんである。
しばらく顔を見合わせ、言葉を交わすことなく見つめあう二人。
長い時間が過ぎた気がした。
そしてどちらからともなく手を差し出し、そして握手をしたのだった。
この二人、東京湾に沈めた方がいいかしら……。
「刹姉」
「大丈夫一会ちゃん、同じこと考えてたから」
「マリアナ海溝で行けるかな」
「東京湾じゃ浅すぎたわね」
「縁が言ってたわ。困った時は太陽へって」
「それで生還した人だから無理ね。この前ブラックホールの中心見てきてもらったしどうやったら死んでくれるのかしら」
我が兄ながら色欲の一点でここまで殺意を抱けるのも珍しい事じゃないかなと思う。
だってさ、そういうのって繁殖に必要不可欠だから仕方ない物だと思うのよ。
そりゃ度が過ぎれば殺意にもなるけどせいぜいが刃物じゃないかなと。
だけど致死率200%の任務に放り込んで新しい奥さんと子供連れて帰ってくる変態にもなるとね……。
なんかもう半分くらい尊敬し始めてる自分が嫌だ。
「一つ言っておくけど刹姉も大概辰兄側だからね? うちの兄妹の中では二番目にカス」
「……祥子さんにも似たようなこと言われたけれど本気で凹むからやめて」
「ゲーム内の現地妻がこっちに来ていることも、第二第三婦人がいる事も、異世界で浮気しそうになったことも、その他諸々あんないい人捕まえておいて何やってんだこの馬鹿姉と思ってるわ。正直三回くらいは殺したい」
「……猛省してます。というか現地妻?」
「英雄さんとかいう人。あと妲己って人も。さっきうちに上がり込んで妻になる予定じゃからよろしくのと言われた」
妲己ぃ!
何やってんのあいつ!
また祥子さんに十二割殺しされる!
リザレクトするの結構疲れるのよ?
閻魔様に会いに行って、また来たのかよ早く帰れよお前って言われるの何回目だと思ってるの!
今の世界、あの世とこの世の境目が無くなってるから地面掘ったら普通に地獄に行けるような状態だからこそ生き返るのも難しくないんだけど、統合前から顔見知りになっていたのもあって扱いが雑なのよあの人!
「それと祥子姉さんから連絡来てたわよ。妲己さんのこと伝えたら〆ると一言だけ」
「……墓前にはお饅頭をお願い」
「火葬しても復活する人にお饅頭用意するのは無駄だと思うからヤダ。自分で買いに行ってくればいいじゃない」
「六文銭も積もれば大金なのよ!」
「今年に入ってから7回目だっけ? これで8回だから末広がりで縁起がいいわね」
「私の死亡回数で縁起の良し悪し測らないで? というか死んでいる時点で縁起悪いから」
「いい? 辰兄が死なない分刹姉が死んで縁起を良くしないといけないの。あれを殺せれば一番なんだけど頭ごと脊椎引き抜いて生きてる存在をどう殺せというの?」
「宇宙人と同化しても自我を保ち逆に侵食する謎の存在だから死とか言う概念が無いと思う」
「でしょ? だからまだぎりぎり生物の範囲に収まってる刹姉がその業を背負うべきだと思うの」
「嫌よ、兄の業を背負って死ぬとか」
「世の中そういう物よ。諦めて」
「やだぁ……」
何故私がこんな苦労を……まぁ外宇宙探査の仕事与えたの私だけど普通に日帰り温泉感覚で新発見して帰ってくるとか思わないじゃない。
「それとあの甥っ子、早めに矯正か去勢しないと第二の辰兄になるわよ」
「それは分かってる。早めに何とかするつもり」
「あと刹子、あれもどうにかしないと国を傾けるわよ。さっき妲己って人から色々聞いていたから」
その言葉を聞いた瞬間に気配察知で妲己たちの居場所を確認して走ったわ。
過去最高の速度が出てたと思う。




