劇場版最高だったね
なんやかんやでうちに住むことになったアリヤとリリエラ、客間を使ってもらう事になったが生活必需品を買う必要があったという事実を思い出したのは日が傾いてからの事だった。
アリヤがね、あの日が来たのよ。
いわゆる女の子の日。
なので近場のドラッグストアにみんなで出かけたんだけど……。
「これなんですか?」
「シャンプーね、髪を洗うための洗剤」
「こっちの似たような容器のは?」
「それはコンディショナー、髪をシャンプーで洗った後にコーティングして髪の毛を奇麗にしてくれるの。そっちはボディーソープで身体を洗うための洗剤で、そっちはハンドソープで手を洗うためのもの。あとは消毒液とか、ヘアオイルとか、化粧水とか」
「はえー、いっぱいあってよくわからないですねぇ……」
そんな事を言いながらもちょっとお高いのを籠に放り込んでいるリリエラはちゃっかりものである。
付き合いは浅いが、こっちに来てから順応も早かったのでなんとなく察してはいた。
一方のアリヤだが……。
「タンポン……? ナプキン……?」
「大きな声じゃ言えないけれど、中に詰めるか下着にかぶせるかの違いですよ。運動するなら中に詰めるタンポンの方がいいですけど、定期的に取り換えなきゃ危険なので。でもナプキンだと激しい運動したりすると血が漏れたり……、今使ってるのはナプキンです」
祥子さんが小声でレクチャーしているもののアリヤはその種類と違いに翻弄されているようだ。
なおアリヤはかなり軽い方らしく、見た目はけろりとしている。
私や祥子さんが結構重い方なので、少しうらやましい。
……うっかり血が垂れて公安の防災部隊が出撃してからは女の子の日は外出しないようになったのはいい思い出。
「あ、せっちゃん。私別途買ってくるものがあるから先にお会計しておいて。公安名義の領収書もよろしく」
「はーい」
私としては特に買う物もないのでそのままお会計に。
地震大国日本ではこのご時世でも現金が主流である。
まぁクレカとかもあるんだけど、今回は経費で落とすから現金の方が後腐れ無い。
「しかしまぁ……二人にはこっちの常識とか学んでもらわないといけないわね。教本があるから明日にでも持ってくるわ」
異世界人向けの教本が公安主体で作られたのは随分前の事。
たしか……祥子さんの出産と同時期くらいだったかしら。
「あとは日本語を読み書きできるようになることね」
私の言葉に二人がげんなりとした表情を見せる。
ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字の組み合わせを見せた瞬間目を回していたから。
あと同音異義語とか、漢字の組み合わせで読み方が違うとか、一般的な外国人が日本語勉強する時のあの独特な表情を見せていたわ。
言語は八百万パワーで通じているから会話は問題ないんだけどね、さっきのリリエラみたいに文字が読めないからなんなのかわからないとか結構あるのよ。
そういう人向けにガイドなんかもいるんだけど、まぁ異世界人で日本に遊びに来られるのは結構な富裕層だったりする。
お金の問題というよりは身元保証という意味で、国がちゃんと保証してくれるかどうかという部分で。
有力なのは特級冒険者とか、貴族とかがメインだけど商人でこっちに来られる人はまだ片手の指ほどしかいない。
なお特級冒険者はダンジョンでドラゴン倒したと自慢していた人達が心折れて帰っていくのが通例で、貴族は偉そうにしていると殺意マシマシの視線で睨まれて腰を抜かすという流れが結構一般化している。
商人はまぁ、まだ一人しかあったことないけど結構いい性格してたわ。
上手く立ち回りつつ、美味しい所を持って行く感じだったわね。
「お待たせ。あ、せっちゃん。申し訳ないけど特急のお仕事頼んでいい?」
「特急ですか、という事はどこかの国がピンチ?」
「えぇ、まぁ……ほら、あのSF的な世界から来た人たち。宇宙と地球で確執あるじゃない?」
「あー、あの物騒な人達ですね。反物質砲で地球焼こうとしたり、核ぶっ放そうとしたりしてた人達」
なおどちらも伊皿木家総出で止めに行った。
私が辰兄さんを投げつけて核を空中爆発させて阻止したり、ビームで迎撃したり、飲み込んだりして、縁ちゃんが反物質砲を吸収して対処。
避難とかは一会ちゃんたちがやってくれた。
「その人達がまた……」
「性懲りもなく?」
「えぇ、コロニーに核を打ち込もうとしているらしいの」
「あー、じゃあちょちょいと行ってきます。明日の朝までには帰ってきますので」
「えぇ、お願いね。あ、あとこれバレンタインのチョコレート。じゃ、行ってらっしゃい」
何を買いに行ったのかと思ったらチョコレートだったんだ。
うん、糖分摂取できるのは嬉しいよね。
というわけで、軽くジャンプしてから結界を作り足場にして本気跳躍!
大気圏を突破して、息を止めながら核ぶっぱしようとしている部隊の後を追いかけた。
その翌日、祥子さんから懐妊の話を聞いて帰って早々猫みたいな表情になってしまったのは余談ね。




