ピロートーク
祥子さんによる詳細報告という名の尋問は夜が明けてから行われた。
……ピロートークというならもっと色気のある内容がよかったのに。
あるいは普通にお仕事で話をさせてもらえればよかった……嫉妬するたびに押し倒されるこちらの身が持たない。
何ならこの人辰兄さんより性欲強いんじゃないかと思うことがあるくらいにはベッドヤクザだから……。
「大体の事情は把握したけど、腑に落ちない事があるのよね」
「と、言いますと?」
「あっちの世界の神様とやらはナイ神父、ニャルラトホテプ様への恨みだけで世界を作って壊そうとしたってこと? 流石に短絡的というか、向こう見ずというか……もっと神様って思慮深いと思うんだけど」
「祥子さん……」
ポンッと、シーツだけで胸元を隠した祥子さんの肩を叩く。
恐らく私の眼は死んだ魚よりも濁った色をしているだろう。
「神様って言うのは向こう見ずです。今まで私を拉致して異世界転移やら異世界転生させようとしてきた人たちの報告書読み直すといいですよ。あの人達ナイ神父みたいに面白そう以外の理由もってないですから」
なんなら中には「いやー、うっかりで次元の狭間に飲み込んじゃった」なんてレベルの人もいた。
ぶん殴って次元の壁ぶち抜いて帰ってきたけど、本人連れて地球の神様連合の前にぶん投げて放置したからその後どうなったか知らないけどね。
「ちなみに、今回はちゃんと話が通じただけマシです。酷い場合は問答無用で殺しにかかってきます。なんならこっちの世界でちゃんと手続きして、八百万の一員になったというだけで常識的だし、人間に近い感性を持っています」
「そんなに?」
「はい、酷い人だと世界を使ってデスゲームやTRPGやってる人もいますよ。人間の運命をダイスで決めて、勇者とか英雄がスライム相手に殺されるような。結果的に国が滅びても、世界が滅びても知ったこっちゃない。ゲームソフトが一個壊れた程度にしか思わないような人もいます」
まぁその手の人は世界や人を顧みない代わりに他の世界から補充するような、つまりは拉致転移させるような真似もしないから大人しい類なんだけどね。
一番最悪なのは世界を使って終わりない闘争を楽しんでいるタイプ。
勇者を召喚して、魔王も召喚して、さぁ戦え! とか言い出す人。
その手のタイプは最優先対処事項として公安のエージェントや八百万の誰かが派遣される。
神様をボコってから、喧嘩両成敗で強制的に仲良くさせてはい終了解散、今後同じ戦争したらまた潰しに来るぞと脅して終わるのだ。
「なるほどねぇ……それで、そろそろ現実逃避やめましょうか」
「……そうですね」
私と祥子さん、揃って布団をめくる。
流石に素っ裸なので寒いが、シーツを祥子さんに預けている以上仕方のないことだ。
広いベッド、キングサイズを超えるゴッドサイズの6畳分のベッドの上で、私達と同じように素っ裸で眠るリリエラとアリヤ。
詳しくは語らないけど、昨晩深酒をした祥子さんが「浮気というのは心が移っているから浮気なのだ、違うという事を証明しなさい!」とベッドに連れ込んで、致した。
アリヤは鍛えていたがこちらの基準では並以下、リリエラも最低限の体力しかないのだ。
私と祥子さんのスタミナについてくることなく早々にダウンしたのだが……。
「リリエラはともかく、アリヤに手を出してよかったんですかね……」
「この家に住む以上いずれそうなってたでしょ。それに弱すぎるからすぐにでも力をつけてもらう必要あったし」
いわゆる房中術というやつだ。
こう、えっちなことをしてパワーをつけるというもの。
それによりアリヤは段階とんで向こうにいた悪魔王くらいなら軽くぶった切れるだけの実力をつけた。
なお本物のベルゼブブやゲリさんには勝てない模様。
ちなみに本物、という言い方をしたが化けオン世界のという意味だ。
正式にベルゼブブという悪魔はいるし八百万の一員だけど、凄く真面目で土壌汚染対策や農林水産省の方で仕事をすることが多い。
神様よろしく、悪魔だが性別はない。
名義的に男の姿をしているけれど私達との接点はほぼないので化けオンの方を本物、八百万の方をオリジナルと呼んでいる。
「リリエラは?」
「第二婦人とか言ってたけど割と本気でせっちゃんに惚れてたからね。あー、これはなにか手を打たないと私が後ろから刺されそうと思ったから発散させたの」
「刺されそうって……祥子さんそれくらいじゃ死なないですよね」
「でも痛いし、国際問題になるからね」
こちらに送った人達はとても弱いので宇宙にある巨大コロニーで生活してもらっている。
要するに外敵がいない場所なのだが、一つの国家として認められているのでリリエラやアリヤが何かやらかすだけで国際問題に発展するのだ。
それを阻止するという意味では……まぁ私の貞操くらいで済むなら安いのだろう。
「ただし!」
「はい!」
「本気で心が浮ついたりしたら……刺す」
「えっと、どっちの意味でしょう……」
「包丁と注射、それとアレをね」
同性間子作り用アタッチメント、別名ディルドーの事だろう。
……どっちというか、全部だった。
「あと二人っきりもダメ、私の監視下でのみ限定、守らなかったらやっぱり刺す」
「……肝に銘じます」
「その肝を食べる人に言われても説得力が無いのよねぇ……」
そんなこと言われましても……。
新作公開しました!
今回はほらーやぞ!
私なりのホラーだからお察しの通りギャグホラーだ!




