最終決戦の始まり
ベルゼブブを尋問した結果わかったことは、暴食系譜の悪魔もこの一件には深くかかわっていたという事実である。
まず彼らの行動原理だけど、基本的に私と同じで美味しいものが食べたいという一点である。
そして種族的な特性として喰った相手の能力を取り込むことの他にもう一つ、食った相手をエネルギーとして貯蓄できるというものがあるそうだ。
そのエネルギーを放出することで地球までのゲートを開く、いわばタンクが彼等の役目でありその先は爵位持ちが地球へ突撃するという内容だそうだ。
なお基本的には爵位持ちがエネルギーを放出する役割を担うらしいが、足りなければ適当な人間を下級悪魔に喰わせてエネルギーに変換するらしい。
予備バッテリーみたいな物かしらね。
あとは食前の運動みたいな?
まぁ祥子さんにぼっこぼこにされて捕まってるらしいけど。
「で、この世界の住民全員を異世界に飛ばすにはどれくらいのエネルギーが必要?」
「無理ですな、我ら暴食の悪魔全員が限界まで力を取り込み、そして存在全てを抹消しても足りません。どころか全ての悪魔と天使の力をもってしても無理でしょう。人間やエルフなどは当然足りませぬ」
「ふむふむ、なるほど……ちょっと賭けに出るしかないわね」
私の役割、この世界に来た理由は簡単だ。
調査、そして破壊である。
世界そのものを調査して、地球とぶつかる可能性があるのであれば世界そのものを破壊するというのが任務だ。
だがその中で救える相手がいるなら救助せよ、というのも祥子さんは言外に命令している。
あの人、根は甘ちゃんだからね。
今までの任務も基本的に救える相手は救えと命令されてきた。
だから……。
「リリエラ、アリヤ、これから最終決戦となるけど2人は先に逃げてもいいわよ。それくらいの余力はあるから」
「御冗談を、私は悪魔を切り捨てるためにここに来ています」
「お姉さまだけに押し付けて私だけ逃げるつもりはありません!」
「そ、じゃあ覚悟を決めてもらうわよ」
「「はい!」」
2人の返事を聞くと同時に明鏡止水を発動。
合一により世界と自身を混ぜる。
もはや私は個人であり、この世界そのものだ。
果てしなく広がる宇宙、その最果てまでもが私であり、私という肉体はもはや仮初の器でしかない。
「ふぅ……」
そんな器から一つため息をこぼし、そして【ソレ】を行使した。
宇宙を含めた全世界のエネルギー化、そして同時に全住民の地球への転移である。
方法は合一で理解したし、そこから得られた情報の中には地獄に関するものもあった。
そして悪魔達の戦闘力なんかも理解できた。
はっきり言って雑魚同然である。
日本で鳩の代わりに飛び交うようになったドラゴンよりも弱い。
目の前の悪魔王、ベルゼブブですらゲリさんが片手間にどうにかできる程度、地球にいるベルゼブブのデッドコピーと言っても過言ではないレベルで弱い。
それだけ情報の密度や、作り込みが違うと言える。
これは単純に神様の能力不足と、調査不足があったのだろうと推測するけどそれはどうでもいいこと。
全ての生物がこの世界から姿を消し、そしてエネルギーとなった世界は消費され消えていく。
けれど私は知っている。
世界が壊れる時、それは惑星の崩壊時に起こる極大のエネルギー放射と同じくするものが生まれると。
私の息子、黒助君みたいな存在だ。
あの子はただ寂しがりだった。
これは個体差である。
いくつか世界を相手取ったことがあるが、この世界はもっと攻撃的と言っても過言ではない。
ステータス画面の奥で襲ってきた影、あれがそれを証明している。
あれこそさっきベルゼブブが言っていた天使と呼ぶべき存在、種族ではなく神の使いという意味での天使だ。
言いかえるならば世界に存在する種ではなく、世界そのものの守護者というべきだろう。
世界が崩壊するとなれば守護者はその力を集めて元凶である私を殺しに来る。
そこまで手間取ることは無いだろう。
だけど、それを倒した後の事を考えると私一人で挑むのはいささかリスキーなのだ。
道連れ、奴らにはそういう手段がある。
壊された世界共々、目標を何もない空間に閉じ込める事が可能だ。
そこでイレギュラーとなるリリエラとアリヤがいれば、少なくとも私が捕まったとしても逃げる事ができるだろう。
無論一人でどうにかすることもできたが、そこは本人たちの意思次第という事で確認を取った。
「来るわよ」
そして、それは光が消えゆく世界の中でどす黒く人型を取り始めた。
過労、胃炎、咳のコンボで辛い!
だけど煙草が美味しい!




