伝説の剣の由来ってだいたいこんなんだと思うの
土を食べた結果少し理解できた。
この真下に凄い巨大な銀鉱脈がある。
それが聖属性を受けて一気に活性化し、そしてミスリルに変異したのだ。
結果的にこの辺りは悪魔にとって不利なフィールドとなって、いわゆる聖域化したという事だろう。
「でもこんなところに銀の鉱脈か……また妙なところに妙なものがあるのね」
「この辺りは昔火山地帯でした。同時期に複数の山が噴火して高度が上がり、今使われている鉱山以外は平坦な場所になったと聞いています」
「それ、人的被害凄かったんじゃない?」
「歴史上稀に見る自然災害だったと記録されていますね。とはいえ、昨今の悪魔問題に比べたら些細な被害ですが」
自然災害を超える悪魔災害か……まぁ地球側も笑い事ではないんだけどね。
実際災害よりも被害を出す戦争というのは珍しくない。
総合的に見たら外部との交流が限られたり、インフラが止まったりする戦争の方がやばいというのは第三次世界大戦前に判明していることだ。
たとえ局所的であっても世界中に連鎖的被害をもたらすことだって珍しくない。
だから変異した後の世界では方々に派遣されて、戦争や内戦の仲裁を行う事も増えた。
今回はその延長と言ってもいいかもしれない。
まぁ、最悪の場合どっちか、あるいは双方それなりにボコって戦えるだけの力を削いで退散するんだけど……今回は最悪この世界を滅ぼすというレベルだからね。
それでも避難できる人は避難させる予定でいるから大丈夫、また魔王とか言われないでしょ。
一時、世界を混乱に導いた魔王とか呼ばれてたもの。
そんな中二病的な呼び方されるくらいなら暴食の方がいくらかマシだわ。
「ところでリリエラ、この聖域だけどどのくらいの効力がある? 威力は効いたけど期間とかそういうの」
「そうですねぇ……ざっくりとですが、この強さを維持するというのなら十年くらいが限度だと思います。でもそれからは徐々に弱まっていくだけで完全に効力が消えるとなると数百年はかかるかと」
「長いわねぇ。というかよくわかるわね」
「下にある巨大な力からあふれるのがどのくらいか、というのを計算すればおおよそは。ただ問題として人間がこの聖域を保つためにやらかしそうな案件がいくつかあるかなという事と、悪魔が対抗手段として使ってきそうな案件がいくつかあるというくらいですね」
「具体例は?」
「どっちも生贄です」
あー、まぁ、はい、よくあるパターンね。
人間側だと魔力かしら、それをミスリルにそそぐために適当な人間を殺して魔力に変換して注ぎ込む。
悪魔だと感情面の問題で、世界を呪うレベルのあれこれをミスリルにぶつけるために拷問の後惨殺くらいはやりそう。
結果的に同じことではあるんだけど、過程が違ってくる。
とはいえそれを見過ごすのもね……うん、封印しましょう!
「アリヤ、周囲でここの異常に気付いたような気配とかはある?」
「さすがにわかりませんよ。ただ人の気配は無いです、一番近い里までも結構ありますし気付かれてないかと」
「それならよし、じゃあさっそく!」
明鏡止水で合一して、ミスリルをぎゅっと圧縮して、その周りを魔力でコーティング。
土地に染み付いた聖属性もまとめてそこに閉じ込めて土地は元通りとなった。
……まぁ、興が乗ってミスリルを剣の形にしたり圧縮の際に周囲に空洞ができたりしたけど大丈夫でしょ。
向こう数十年は誰も触れられないだろうしね!
「よし、封印完了。サクッと次の街に行って、悪魔の本拠地でも目指しましょ」
「……あれをこんな簡単に封印するなんて、流石お姉さま!」
「いろいろ言いたい事はありますが、なんかもう今更過ぎて何も感じなくなってきてます。返して、私の感情返して!」
「アリヤ、それは私が奪ったのではないわ。あなたが捨てたのよ」
「捨ててませんから! ぶった切りますよ!?」
「できるものなら」
飛んでくる不可視の刃を軽く躱しながら水筒のお茶を飲む。
いやー、温かいお茶はいいわね。
ホッとするわ、ホットだけに。
「あ、それとリリエラは明日から対聖属性の特訓追加。体調は大丈夫だったみたいだけど顔が引きつってたから。あんな感じだと人里でばれるわよ?」
「え?」
「それとアリヤの魔剣も同じ特訓、つまりアリヤ自身も特訓追加ね」
「え?」
「それじゃー行きましょうかー!」
真っ青な顔色の二人だったが気にすることなく次の街を目指すことにした。
なおその数時間後だが、たどり着いた街でさめざめと悲しげに酒を煽る二人はこれから死地に赴くような雰囲気を纏わせていたとだけ言っておく。




