色欲の悪魔
お買い物行ってて遅れました!
それから数時間、朝が来て日差しを浴びた二人はようやく目を覚ました。
私は脳みそを半分ずつ眠らせてたから徹夜は問題ない。
むしろこの状況で無防備に寝てるのはどうかと思ったので身体だけは休めた。
こう、物理的に神経ちぎって全身脱力させておいたの。
「おはよう」
「おはようござい……ひっ」
「はいはい怯えない、それからアリヤもおはよう」
「はい、おはようございます……」
怯える悪魔っ子と居心地の悪そうなアリヤ、まぁ致し方なし。
「面倒だから直球で聞くけど、悪魔っ子ちゃんは何か悪さとかするために街に入ってるの?」
「えと、私の事ですよね……? 悪さをする気はないです、はい。私、悪魔の中でも弱い方で同じ系統の悪魔からも馬鹿にされていじめられてたので逃げてきたんです」
うーむ、表情筋の動きや声、心臓の音からして嘘はないわね。
汗とかからも嘘をついてる時特有の臭いはしない。
という事は真実か。
「弱いから馬鹿にされる……強欲か傲慢系列?」
「いえ、色欲です」
「あー」
合点がいった。
色欲系列の悪魔は戦闘力が低い。
ただドレイン系の技だけは特定条件下のみで、という注釈は付くけど暴食を超えて最上位だ。
今回はそれが仇となり私から力を吸い過ぎたという事ね。
「ん? でも色欲の悪魔が弱いからってなんで同族からも?」
「えと……その……」
ん? 何もじもじしているのこの子。
「私……生娘で……」
「はぁ」
「端的に言うなら男性経験が無いんです……」
「処女サキュバスみたいなものかしら」
「そう、ですね……サキュバスはまた別種族ですけど、同じドレインを使えて異性相手ならその効果が倍増するという意味では同じです。正直に言ってしまうとサキュバスクイーンやインキュバスキングはもちろん、ちょっと腕の立つ淫魔よりも弱いです私」
「まぁ性的ドレインできないならそうよね」
色欲系列は異性相手へのドレインが倍以上の効力を発揮する。
具体的には暴食の悪魔が持つドレイン能力、これを基準の1として色欲以外がその半分から十分の一。
色欲は同等の1から始まり、異性相手とその熟練度では100くらいまで行く。
それこそ辰兄さんクラスの人が色欲の悪魔になったら男女問わず1万くらいのパワーを持つドレインが使えるけど、地球に存在する色欲の悪魔の中でも最上位に位置する人は100が限度だった。
具体例を出すなら私が即座に空腹でぶっ倒れる位の威力持ってるので一級危険生物として登録されるくらいの強さ。
握手したら死ぬような相手。
そして相手から奪った力を自分の物にできるけど、私相手に試した結果死にかけてその能力の大半を失ったという悲しい人でもある。
だがドレイン能力だけは健在だったので登録はそのままだ。
「理由を聞いてもいい? こう、色欲の悪魔の間で餌場みたいなのがあっておこぼれも貰えないとか?」
「いえ、そういうのは無いんです……」
「じゃあどうして」
「その……初めては好きな人とロマンチックにと決めているので……」
……おぉう、予想外の答えだ。
しかも凄いピュアだった……いかん、私最近穢れてる気がしてきた。
いい子に囲まれ過ぎて自分が汚い大人になったという自覚が芽生えてしまった。
「なるほど……で、好きな相手できた?」
「それが運命の相手をお仕事しながら探していたんですが……男の人が怖くなっちゃって……」
「うん、荒くれ者の集うような酒場で働いてたらそうでしょうね」
「もういっそ弱いままでいいから人間の街を転々として細々生きていこうかなと思っていた所でした」
「なるほど、でもたぶん今のあなた並の悪魔はもちろん、下手したら人間側の英雄より強いわよ?」
「え?」
私相手にドレインをかました人、能力の大半を失ったが身体能力の向上が見られた。
それこそ現代の化け物はびこる世界でトップクラスになれるだけのパワーを持っている。
とはいえ、本人がそれほど頑丈ではないので全力出したら死ぬので力を抑え込んでいるらしいけど。
「私からドレインしたでしょ。ほらこれ握ってみて」
差し出したのはビール瓶。
それをそっと受け取った彼女だったが、少し握ろうとしただけでビール瓶にひびが入った。
やっぱりね……。
「さて、色欲系列でも最強クラスのパワーを得たあなたはこれからどうする? 返答次第では……」
アリヤが剣に手をかけ、私は拳を鳴らす。
「……お姉さまとお呼びさせてください!」
「ふぁっ?」
予想外の答えが飛んできた。
脈絡どこ行った!
iPhone15proMAXの注文に……8+では限界が来たのです。
そして帰り際に買った一万円分のウェブマネー無くしました!
死にたい……




