海底都市
海上をしばらく走っているとゲーム通りリヴァイアサンとかに襲われた。
まぁ返り討ちにして道中のおやつにしたわけだけど、頭が5つもあるサメとかいたのは驚いた。
ゲーム時代には見かけなかったけど……思えば当時は海の散策してなかったなぁ。
陸ばっかり見ていたと思う。
うん、船旅の間なんかはログアウトしてたし……この機会にちょっと見ておきますか。
軽くジャンプしてからダイビング!
「むぉ……」
水が奇麗だ……びっくりするほど透き通っている。
裸眼でも問題なく、太陽光も結構な深さまで届いている辺り地球の海水とは成分が違うかもしれない。
帰る前にはその手のサンプルもいくつか持って行った方がいいかもしれないわね。
「む……」
200mくらい潜ったところで流石に真っ暗になった。
同時に敵意を感じる。
「むんっ!」
拳を突き出して衝撃波を飛ばすと赤い液体が周囲を汚した。
何かが近づいてきていたのはわかるけど……よくわからないので放置。
浮上すればもしかしたら浮いているかもしれないからね。
沈んだ場合はこのまま潜り続ける予定だからどこかで拾えるでしょ、海流にもよるけど。
「むぅ……」
しかし水温が低いわねぇ……。
このままだと数日で低体温症になりそう。
呼吸に関しては数週間は平気だけど体温はなぁ……自力でどうにかするにはカロリーが必要だから何か食べたいけど、流石に水中で食べられるのは新鮮なお刺身くらいしかない。
ずっとそれだと飽きるのよねぇ。
と、少し考えこんでいる間に水深500mを突破した。
感覚でしかないから正確な数値はわからないけれど、このまま沈んでいけばいずれは海底に辿り着けるかもしれない。
私はあまり興味ないけど、海底資源なんかがあればいい報告ができるかもしれないしね。
そう思った瞬間だった。
「……!」
海の底に丸い球体のようなものが見えた。
球体、それもバカでかいのだ。
例えるなら……そう、スノードームだ。
丸いガラス玉の中で雪のようにラメが散っているあれ。
それを超巨大にしたような物体が眼前にあった。
そちらに進み、触れてみると意外なことに柔らかい。
非常に柔軟で、すこし力を籠めるだけで突き破れそうだ。
……海中だけど、大丈夫かな?
ふっ、と手を差し込んでみたらするりとはいれた。
そのまま引っ張られるように飲み込まれていき、そしてズンッとした重圧を感じた。
……重力?
水中特有の浮遊感が消えて地面に向かって落ちていく。
くるりと回転して着地をしたが、水が降ってくることもなく入ってきた穴は消えたようだ。
「ここは……空気もある、重力も地上と変わらない様子だし……放射能とかそういう危険なものもない」
ついでに言えば人気もない。
いうなれば海底都市だろうか。
落ちてくる際中に見たのは外の世界と変わらない中世ヨーロッパじみた街並み、そして大きな神殿とお城の三つだ。
その街の端っこに落ちたわけだが……。
「食べ物の臭いだ……」
鼻腔をくすぐったのは新鮮な食べ物の、それも調理された何かの匂い。
人の気配はないのに不思議である。
「こっちだな……」
臭いに誘われるまま足を進めると「らぁめん」と書かれた看板があった。
……いや、日本語!?
まぁいいけどさぁ……暖簾をくぐって中に入ってみる。
「らっしゃい」
「醤油とんこつ、ネギチャーシューメンマ味玉トッピング追加で」
「あいよっ」
挨拶されたので普通に注文してしまった。
中にいたのは半透明のおじさん。
その人がラーメンを作っているが……。
「ねぇ、ここってなにかしら」
「海底都市、アルカンシェルさ。お客さん生身でここに来たのかい?」
「えぇ。海底都市?」
「外の世界が化け物に支配されてから人間はまともな生活ができなくてなぁ、地下やら海底やら空中やら、奴らが来られない所に身を隠したのさ。ただその過程だったり結果だったりはするが俺らも人であることを辞めなきゃいけなくなったんだよ」
「と、いうと?」
「見ての通り、俺はゴーストさ。この海底都市に住んでる連中の大半はそうだ。まぁ腹も減らねえし殺されることもねえ、飼育している家畜の世話も苦労しねえし農業だってやってる。ただ肉体を捨てただけで飯とかは普通に食うしな」
「そういうこと……」
まぁ、聞いての通りなのだろう。
地上に住めなくなったから生活の場を移した。
その際に肉体を捨てた、あるいは他の場所だと肉体を変貌させたのだ。
「ほい、霊体豚の豚骨ラーメンいっちょ」
「いただきます」
出されたラーメンを口に含んだ瞬間、脳みそが爆発するような感覚がした。
美味すぎる!
感覚がした→たぶん本当に爆発してる。




