表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

526/618

とあるエルフ達の人間嫌い《前編》

「我らエルフ族は人との融和など認めぬ!」


「じゃあ不可侵協定の話も断るという事ですか?」


「そうだ! そして人族の使者よ! 貴様にはここで死んでもらう!」


 今日は出産後初めての遠征任務で地中海西方の小島に来ている。

 非友好的なエルフが住む島があり、近づく船を攻撃してくるという事で問題になっていたのだ。

 その対処なのだが、ひたすら人間を嫌っているためまともに取り合ってもらえないのだ。


「あの、つかぬ事をお聞きしますがなんでそんなに人間を嫌っているのですか?」


「嫌うだと?」


 エルフの女性剣士がこちらに剣を向けたまま唸る。

 子持ちになったからか、手荒な真似は控えようという気持ちがわいてくるのよね。

 これが母性かしら。

 ……それにしてもビキニアーマーで剣士で、くっころの似合いそうなお姉さんだなぁ。


「憎んでいるのだ!」


「それまたどうして」


「この森を見ろ」


「はぁ」


 言われるがままに周囲を見渡す。

 小島とはいえそれなりの広さがあり、たしか人間の住んでいる集落も存在していたという記録がある。

 まぁあくまで記録と形跡だけであって既に滅んでいるっぽいけどね。

 それにしてもなかなか立派な森だ。

 背の高い木がまっすぐ天に向かって伸びている。


「奇麗な森ですね。強いて言うなら奇麗すぎる……植林でもしたのかな?」


「それだ!」


「どれですか」


「昔、この島は大陸の一部だった。その頃人間はエルフの奴隷を欲し、そして人風情が森の中で我らに敵わぬと知った」


「それはいつ頃?」


「およそ2000年前、我らの父母の代だ」


「ははぁ、でも口ぶりからして諦めたわけじゃないですよね、人間」


「無論だ。奴らの欲望は底知れず、その虚栄心も深淵の如き深い物だった。奴らは敵わぬと知ったら方法を変えてきた。森に火を放ったのだ」


「ほうほう、しかし森は再生された」


 ん? でもエルフが森を再生したとしてなんでここまで人に恨みを持っているんだろう。

 こうしてお子さん世代が元気にのびのびと島の人間を皆殺しにできたってことはだ、つまりエルフは奴隷として捕まえられたわけではない。

 あるいは捕まっても逃げてきて今は平穏に生きている。

 たしかに遺恨は残るだろうけど……。


「再生させたのだ、愚かな人共の国に忍び込み井戸に毒を投げ、毎夜建物に火を放ち、権力者を一人ずつ殺して対処させた」


「あ、人間が再生したんですね」


「然り。だがあろうことか奴らは再び過ちを犯した。故にこの土地を大陸から切り離しエルフだけの聖地としたのだ!」


「その過ちについて聞きたいのですが」


「この木を見て何もわからぬか?」


「木? 立派に育って食べ応えがありそうくらいしか」


「……人間は木も食べるのか?」


「あ、いえ、私は食べますけど他の人は食べないんじゃないですかね」


 著者祥子さん、一般的な常識について日本編が発行され世界中で旅のガイドブックになった。

 なぜか私も丸暗記させられた結果、最近はこの手の調停とか対話系のお仕事が楽なのだ。


「そうか、わからぬなら教えてやる。この木はな……杉だ!」


「杉?」


「あぁ、毎年冬があけるとエルフは杉の発する花粉に悩まされるのだ……四方八方から押し寄せる花粉、あの悪魔の粉により体調を崩し寝込むものまでいる! 森を焼き、杉を植え、我らを苦しめ続けることに余念のない人をどうして許せるというのだ!」


 そういえば日本も杉花粉が問題になってた時代があったって聞いたっけ。

 最終的に花粉症重傷者の過激派が杉林を燃やせと駆逐する勢いで切り倒して、燃やして、盛大なキャンプファイヤーしてから出頭して花粉症被害が減ったらしいけど。

 まぁまだ残ってるけど化けオン運営特製、飲むだけでアレルギー全般が治る錠剤で日本人にはアレルギー患者がほとんどいない。

 いるとしたらお薬飲ませられない子供くらいかな。

 だから今度は子供向けの物を、赤ちゃんでも大丈夫な吸引形式の物をとどんどん作ってるけどね。


「んーと、花粉被害が無くなれば、あるいは森を杉以外の木でどうにかしたら和平とは言わずとも不干渉は約束してもらえませんか?」


「できるものならばやってみろ! その前に貴様の首をもらい受けるがな!」


 振るわれた剣が首にあたる。

 コキッと音がした……最近デスクワークばっかりで首が凝ってたからね。


「馬鹿な……弓隊! 魔法隊!」


 木の上から放たれる無数の矢と魔法、飛びのいたお姉さんには当たらないけど私は直撃コース。


「ふっ、やったか」


「派手な花火ねぇ」


 ニッと笑っているお姉さんの肩に手を乗せて感想を述べる。

 まぁ、花火というかキャンプファイヤーよね。


「馬鹿な!」


「あの程度じゃ死なないですよ? とりあえず花粉症を治す薬の手配と、植林に適した杉以外の樹木を用意するので後日また訪れますね」


「……逃がすと思っているのか?」


「追ってこられますか? というかついてきます?」


 ウォンと影移動を改造して作ったワームホールを作る。

 これをくぐれば自宅に帰れるので、遠征任務は行きだけが大変なのだ。

 帰りはマヨヒガちゃんが設定してくれた座標に飛ぶだけでいいからね。


「………………貴様本当に人間か?」


「最近じゃちょっと怪しくなってきましたけど、一応人間のつもりです。まぁ鬼の血が混ざっているみたいですけどね」


「……普通の人間よりはマシという事か。いいだろう、3日待ってやる。それまでに薬を用意できなければ、そしてその薬が本物であり毒物でないと判断できないようであればこの聖域に近づいた者は皆殺す」


「わかりました。じゃあ先に植林の手配かな……薬は薬局で買えるし」


 結構お手軽に手に入るから助かるのよねぇ。

 問題は植林だけど、花粉を飛ばさない杉……じゃダメよね。

 んー、葛と竹とミントとドクダミのハイブリッドならあるけどアレは土壌が枯れるし、一晩でこのくらいの島は剣山みたいになるからダメよね。

 また化けオン運営に頼んでなんか作ってもらおうかしら。


「じゃ、また来ますねー」

後編は次週!

ちょっと今週忙しいのでごめんなさい!

あとSCP形式のレポートは前回で一段落だと思います。

もともとキャラ設定まとめるための物だったので。

そしてルールに抵触しそうな部分伏字にしました、注意喚起ありがとうございます。

気が緩んでるみたいです、ちょっと滝行してきますね……人外魔境の山奥で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 花粉症エルフとかほかの地域のエルフに聞かれたらバカにされそうな奴らだ… あとサラッと地獄みたいな作物精製されてて草。なんでそんな無差別生態系破壊作物作ったんだと思ったけど手軽に大量入手でき…
[一言] 今の穏やかなせっちゃんはわりと交渉人として優秀なのでは?←
[一言] 運営じゃなくて娘さんを頼った方がいいと思う(白目)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ