ファイルナンバーEX5:伊皿木羽磨
ファイルナンバーEX5:伊皿木羽磨
執筆者:井上結弦
当該ナンバーについて語るうえでの異常性を以下に記す。
・ナンバー4よりも劣るが、一般人を凌駕する戦闘能力
・ナンバー2はもちろん、ナンバー3に劣るが一般人を凌駕する霊能力
・ナンバー1より劣るが一般人を凌駕する回復力
以上の点から当該ナンバーは他のナンバーと比べて能力が劣っているといえる。
結果から見て重要性は極めて低く思われるかもしれないが、逆に言うのであれば極めて高い能力を持つ人間という位置づけになるだろう。
その結果、当該ナンバーの遺伝子を利用した実験は最も安全であり、彼のデータから医療の根幹を崩すレベルの薬品の生成すら可能かもしれない。
そこで当該ナンバーの許諾を得て実験を実施した。
まず一般的な病気の代表である風邪に対して有効な薬を作れないか考えてみた。
解熱鎮痛、その他炎症を抑制する薬が必要だと考えたが当該ナンバーの提案により代謝の向上とタンパク質の変質防止、体温の向上を目的とした薬を生成。
見事に当該ナンバーの予想通り10分で風邪を治す薬が完成した。
しかしこれは体温によって風邪のウィルスを駆除するものであり、究極的には既存の対処療法と変わらないものである。
また体温を強制的に上げる事による不快感と、代謝の向上による飢餓感が問題である。
その点を指摘したところ「刹姉に比べたらまともな手段」とのこと。
たしかに風邪のウィルスを駆逐するような薬の生成と比べたらまともと言えるかもしれないが、緊急事態でもなければ使用を控えた方がいいと思われる。
またオーバードーズによる危険性も考えられるため当該薬品はお蔵入りとする。
なおサンプルは10tほどあるので公安内で必要なものは上伸するように。
【作りすぎである、限度を考えろ】
次の実験に移ろうとしたところ当該ナンバーの姿がない。
急遽探し回ることになったが、一通り探し回った後集合をかけたところ当初の場所にて発見。
どこに行っていたか聞いてみたところ「うとうとしていただけでずっとここにいた」という回答。
まさかと思い監視カメラを確認したところたしかに当該ナンバーの移動した形跡はなく、またカメラはその姿を映し続けていた。
我々が見失っていただけだという事実だけが残ったが、30人体制で全員が同時に彼を見失い続けていたという事実が気がかりである。
そこで許諾のもと睡眠薬を処方、睡眠時の記録をつけた結果面白いことが判明した。
カメラなどの電子機器は反応を示すが、ナンバーズで言うところの気配というものが希薄になったのである。
少しでも目をそらせば見失ってしまいそうになるほどである。
「影が薄い」などという言葉があるが、まさしくその通りだ。
見失えば最後、再び目視するには起きて動いている彼を見つけるしかない。
そう思っていた。
だが研究を続けていくうちに更なる事実が判明した。
この能力とも呼ぶべき気配希薄化は成長途上であった。
まずカメラなどの電子機器が彼を見失い始めた。
続けて効力が眠気を感じた瞬間にまで拡大。
数日研究を続けたところ日常生活中の彼を見失う事も増えた。
どうにかできないかとナンバー3に確認したところ、しばらく山籠もりをして帰ってきた。
そこにいたのは存在感しかない……巨大な熊のような男だった。
なんというか、ナンバー5の面影はあるのだが……。
ともあれ帰還した彼に気配希薄化を使えるか聞いてみたところ目の前から姿が消えた。
そうとしか言いようがないのである。
すぐに呼びかけて貰うと眼前に現れた。
恐らく一歩も動いていないのだろう。
これは素晴らしい進歩である。
【なぜ許諾をとらずにナンバー3を引き合わせたのか説明を求む】
【それとナンバー4がご立腹だ】
【ここに彼女の言葉を記しておく】
【人の弟に何してるんだ?】
【羽磨は頼まれたら断れないタイプだ、それを利用したんだろう】
【泣かしてやる】
【またナンバー3からも言伝がある】
【修行にかかった費用と、約束の報酬ください】
【好きなだけご飯おごるって言いましたよね】
【破ったらあなた達の影を物理的に薄くします】
【以後軽率な行動は慎むように】
【なお報酬にかかった費用に関してだが、経費で落ちる事はない】
【研究を続行せよ、無論新薬の開発方面で】
【なお風邪薬の特効薬ならば化け物になろうオンライン運営が既に開発成功している】




