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化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


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クリスマスだよ、刹那さん切なさ乱れ撃ち

「シングルベールシングルベール鈴が鳴るー……」


 新婚の私、そんな私が初めて迎える祥子さんとのクリスマスの予定は仕事によって潰された。

 私の仕事ではない、祥子さんのお仕事である。

 総理大臣に休む暇無しと言わんばかりで、ファンタジーやSFを含む色々な世界が統合された結果クリスマスなどという概念がない国や、そもそもそういうお祝いを邪教扱いする国も出てきたのである。

 前者は各種企業が「商売のチャンスだ!」と意気揚々と乗り込んで、一部企業は業績を上げているので商魂たくましいというべきか……。

 後者は私達のお仕事で、あなた達の宗教を否定する気はないのでこちらの事に関しても無関心でお願いします、無茶な勧誘とか問題行動起こしたらぶっ飛ばしますと穏便にお話合いするだけだ。

 当然穏便に済まないこともあるので、そういう時は全員ぶちのめしてからテンショーさん達に頼んで神様を呼んでもらって、その上でお話合い。

 神様相手にお話合いが通じなかったらやっぱり肉体言語、私で勝てない場合はナイ神父がご家族を連れてくる。

 アザ様とか言ったかしら、あの人。

 全自動移動型ベッドでいつも眠ってるけど、起きると半径5㎞圏内が吹っ飛ぶ。

 私も何度か巻き込まれたけど全身の血液が沸騰して暑かったわ。

 それで済めばよし、すまなかったらナイ神父とアザ様が本来の姿になって周囲の人達を洗脳……もとい、理解力を深めてもらって終わる。


 基本的にあの人達は国や国境関係なく動けるからね、日本の責任にはならない。

 ちなみに責任を追及し続けてくるところもあったけど、日本からアメリカへパスした。

 彼らの存在を世に知らしめた人物がアメリカ人だったという理由でね、アメリカに投げたら今度イギリスに行って、その次は太平洋に飛んで、また日本に戻ってきて、ブラジルにプレゼントして、突き返されて、面倒になってナイ神父に直接渡した。

 結果国が一個無くなった。


 そして祥子さんはその後処理に駆り出されている。

 こう、国民の不満を云々とかそういうのなんだけど、あくまでもそれは表向き。

 今回はその際になくなった国の再興と、難民支援のために動いている。

 あの、私もちょっと短慮だったと思うけど祥子さんが本当に困ってたのよ。

 毎日のように使徒を送り込んできて、あらゆる国に喧嘩を吹っかけてくる。

 式神みたいなもので倒してもキリがないし、かといって放置もできない。

 ちょっと前の、統合される前の状態で言うならあれね。

 毎日国のどこかで一斉に車のタイヤがパンクするような、迷惑で鬱陶しいけど戦争に至るほどの事件じゃない、だけど連日……具体的には半年も続けばぶちぎれるような小さなテロ行為。

 それが続いていた。


 タイミングが悪かったというか、色々互いに羽目を外しすぎたというか、今私も祥子さんも妊娠中であり大きく動けないのだ。

 そんなところにこんなストレスはよくないという事もあって、早々に解決に乗り出したのはいいんだけど仕事を振った相手が縁ちゃんだったのがよくなかった。

 雑に全員死なない程度に、しかし再起不能になる程度にぶちのめした結果残党による報復行為が行われて、それに腹を立てた一会ちゃんが縁ちゃんと辰兄さんを連れてその国にカチコミをかけた。

 更にはどこから聞きつけたか刀君とその奥様も参戦、ノリで永久姉も参加、羽磨君がバックアップをしてマヨヒガちゃんがサポートをした。

 つまり伊皿木家総出で事にあたったのである。


 まぁ、オーバーキルだったわね。

 その時点で国はもう崩壊寸前、立て直しは不可能という状態だったのだけど最後に一会ちゃんが差し伸べた手を払いのけて、責任追及を始めて、結果元祖地球組と呼ばれる国々と、統合された後の各国合意のもとナイ神父たちに全部任せることになったのだ。

 結果、今に至る。


 あの、統合後に現れた国々もその国には迷惑してたらしくて……満場一致でゴーサイン出たわ。

 ゲリさんの所もベルゼブブが妊娠発覚直後で気が立っていたらしくてね、よければ自分が行って焦土にしてきましょうかなんて提案された。

 流石に王様直々というのはアレなので保留にしてたけど、その必要もなくなりゲリさんは祥子さんのサポートをしながら同盟国として奔走してくれている。

 もちろんベルゼブブとの夫婦の時間は確約したうえで公安の一員として働いてもらいつつ、王様としての時間も作っている。

 一番忙しいけど、ゲームやってた頃よりも生きている実感があるというのだから悪い話ではないのだろう。

 というかゲリさんの会社員時代の話聞いたら発狂しそうなくらいのブラックだった。

 統合後真っ先にやったのがゲリさん引き抜きのためにその会社潰す事だったくらいにはブラックだった。

 ブラックというか、漆黒というか、ダークネスというか、ダークロウというか……。

 サービス残業とかそういうレベルじゃなくて会社泊まり込みでVOT内で仕事させて、違法改造したVOTでセーフティ切って栄養剤を注入し続けて死ぬ寸前まで働かせるような。

 そんな企業だったんだけど、要領のいいゲリさんは自作のツールで仕事を全てこなして化けオンで遊んでいたらしい。


 結果として、「このツールあればこの会社いらないよね、ゲリさんメンテお願いしていい?」「週に1度こっちのツールでメンテさせてくださいな、そのメンテは俺が半年に一回するんで、問題起こったらいつでも呼んでください」という会話の後会社を更地にした。


 保護した人たちは死ぬ寸前だったけど、優秀なエンジニアだったので公安で重宝。

 会社をブラックにしていた人達、つまりはお偉いさんたちはみんな逮捕されたわ。


 そして、晴れて自由の身となったゲリさんは王様に、まさに奴隷からの成り上がりストーリーだったのである。

 その話がノンフィクションで伝記になって、ウハウハのガッポガッポらしい。


 が、忙しい身の上なので私と違って仕事に追われるクリスマスをおくっている。

 祥子さんも同じだが、こちらは妊婦さんとしても先輩なので検査なども増えているとか。

 一会ちゃん主導で検査が進められてるけど、私が相手というのもあるし、祥子さんが天使というのもあって常に経過を観察しなきゃいけないとか。

 というわけで一会ちゃんもいない。

 そして護衛である縁ちゃんも同行して、サポート要員の羽磨君は公安と市役所員を兼任しながら化け物専用の病院を立てて三重にお仕事している。

 既存の医学が割と役に立たなくなってきたからね……いや、国外ではまだ需要あるのよ。

 統合後に出てきた世界とかには。

 コロニー住民は生体メンテナンスポッドとかいうのがあるらしくて医療に人間が不要らしいけどね。


 そしてオカルト案件の増えた今永久姉は相変わらずの仕事人間、もう結婚はあきらめたと死んだ魚の目で言っていた。

 ので、ねぇねぇ妹と弟に先越されてクリぼっちなのどんな気持ち? ってメール送ったら1日7回ランダムに腹痛に悩まされる呪いかけられた。

 私でも解呪できないレベルの強力なの、一般人だったら即死するレベルのやつを。

 流石に反省して土下座して、地獄で知り合いカオス陣営になった時のイベントで肩を並べて戦ったアイゼンを紹介しておいた。

 あいつ悪魔で趣味も性格も悪いけど、今まで永久姉が関わった男よりはましだからね。

 今はプラトニックな関係でお付き合いしているとかなんとか。

 ……ナマモノ紹介しておけばよかったかな?

 と、いう事で仕事の鬼である永久姉もいない。


 辰兄さんはブラジルのハーレムを楽しみに旅行に行った。


 刀君は奥様とラブラブデート。


 マヨヒガちゃんと黒助君はナイ神父の手伝いで、今は中国でとーてつさんと一緒に次の事業についてお話合いをしているので家には私一人である。

 とても、寂しい。


 クリスちゃんたち神様に属する人とか、神様達は年の瀬の飲み会だそうで……昼にうずめさんとフレイヤさんが飲み比べ始めたから助けてという三日月委員長のヘルプを見なかったことにして電源を切ってから部屋の片隅でじっと座ってた。


「……クーリスマスは今年も一人ですー」


 もう歌うしかないのだ。

 そうだ、せっかくだからポケットの中のモンスターでも見よう。

 電波復旧してアニメとかも見られるようになったんだ。

 最近新作が人気らしいしね……ははっ、嘘だと言ってよ。


「ただいまー! せっちゃん生きてる?」


「祥子さん!」


 ぼーっとテレビを見ていた私だったけど、その声を聞けば元気百倍よ。


「はいはい、危ないから走らないでください祥姉」


「ん、身重なんだから」


「そうね、ごめんなさい一会ちゃん、縁ちゃん」


「愛しの妹たち!」


「刹姉は暑苦しいから座ってて」


「あるいは足を折って動けなくする」


 すっとその場に正座した。

 縁ちゃんの脅しは冗談ではない、この子はやると言ったらやる、それだけの覚悟を持っているのだっ!

 実際この前折られたしねぇ……。


「ただいま戻りましたお母さん」


「ただいまー」


「マヨヒガちゃんに黒助君も!」


「ケーキ買ってきました。あと中国で買った料理もあるので一緒に食べましょう」


「僕はジュース買ってきたよ!」


 なんていい子達……。


「はー、お仕事疲れたわぁ。せっちゃんと結婚して自由な時間増えたとはいえ、そろそろ産休貰いたいわ。一会ちゃん跡継がない?」


「まだ早いと思っていますので、産休中の補佐はさせてもらいますよ」


「そう、残念ね」


「でも母子ともに異常なしで安心しました。明日は刹姉の検査だから逃げないでね?」


「うっ……はい」


 一会ちゃんの検査、時間かかるのよねぇ。

 ま、お腹の子のためにもさぼる気はないけど。


「それにしても祥子さんお腹大きくなりましたね」


「そうねぇ、元気に生まれてくれたらそれだけで十分なんだけど……たぶんそれだけじゃ済まないわね」


「ですね」


「ん」


「でしょうね」


「だと思うよ」


 お腹をさすりながら苦笑する祥子さんにみんなが同意したが、どういう意味だろう。

 でもまぁ、楽しそうだからいいか。

 そしてこれからも楽しくなるんだから!


「さ、パーティしましょ!」


 次のクリスマスには家族が増えているだろう。

 その時はもっと落ち着いて、一緒に過ごせたらいいわね。

さて、ポケットの中の戦争見るか……。

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― 新着の感想 ―
[一言] どっかの国に王様を鉄砲玉として送り込んでくるヤバい国 これもうわかんねえな
[一言] シングルヘールシングルヘール 鈴が鳴る時に誰かの悲鳴が上がるー
[一言] ポケットの中から戦争が1つ、2つ、3つ……9つ ……足りない……数え足りない……まだある……
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