マジでハッピーなウェディング
私達の結婚式の数日後、とある一組のカップルが結ばれることになった。
こう、経緯は省くんだけど……結婚式の翌日、祥子さんが腰痛めて動けなくなっちゃったのよ。
その際に公安側が野党側の協力者という形で呼んだ人物が超有能、祥子さんしか対処できなかったようなあれこれを片付けてくれてたの。
うん、三日月委員長。
文句を言った人は夜道刀を持った謎の人物に追いかけられたらしい。
その間に持ち直して、裏からできるお仕事としてゲリさんとかを使って事態の収拾を図るという内容だったんだけど……まぁそれはさておきよ。
そんな風にこき使われたゲリさんは「お休みください……なんでもしますから……」と祥子さんに泣きついた。
対する祥子さんとしては使い捨てるには惜しい人物、代え難い良人材、あわよくば次の総理大臣か外務大臣に。
なんて見方をしていたのだけれど、それだけに根回しも怠ることができずにいたため以前から相談されていた話を推し進めることにした。
それがこれ、「幸せいっぱい新婚さんの結婚式パート2」である。
ちなみにパート1は私達だけど、参加者の大半は神様達だった。
つまり元人間相手には根回しになっておらず、せいぜい諸外国からお祝いのお手紙が届いたくらい。
たまにプレゼントもあったけど……とりあえずスペインの大統領、媚薬送ってきたの許さないからな?
栄養ドリンクと間違えて一気飲みした祥子さんがサキュバス祥子さんになって搾り取られたの許してないからな?
あとイギリス王室の方々、ロンドン橋を本当に落としたのは謝るのでご祝儀を当時の修繕費ほうふつとさせる金額で送ってくるの勘弁してください……。
はなしがそれたけれど、そんなこんなで結婚式が行われることになった。
ゲリさんと、そして元悪魔王のベルゼブブの。
なんかあの二人ゲーム時代は仮想国王夫婦してたらしいけれど、今こうして世界が現実となった結果仮想じゃいられないとなって、そこで生真面目なゲリさんは結婚式して、3か月分のお給料使って指輪かってと奔走したらしい。
時間がない? だったら休めるだけの時間を作ってしまえと祥子さんがべらぼうに高い結婚式プランを組んだのだ。
私達が公安にいた頃の稼ぎですべて用意して、各国の重鎮とか神様誘っての壮絶なパーティを開いた。
え? 王様をこき使う公安が許されるのかって?
私、悪魔王です。
私、公安にこき使われてます。
前例、あれば、問題、なし。
「ゲリさんおめでとー」
式を終えて披露宴の際に一言伝える。
一般的な結婚式みたいにテーブル回ってもらってもよかったんだけど、数が多すぎて……。
結果的にみんなで好きなタイミングであいさつに行ける昔ながらのパーティ形式にしたら外交始まってという状況である。
ので、私達が真っ先に来たのだ。
「あ、フィ……刹那さん。今回はどうも、本当になんとお礼を言ったらいいか」
「いいのよ、そんなに気にしないでちょうだい。こっちが無理言ってたんだから」
「そうよ、私達の無理を聞いてくれてたんだから」
ねー、と一緒に挨拶に来た祥子さんと顔を向き合わせて声を揃えた。
出資者という立場だけど、これだけ大きな結婚式であり大物が参加しているのだ。
なんなら全世界テレビ中継もされている。
慌てて人工衛星ぶち上げまくってどうにかこうにか電波を届かせることに成功して、更にスペースコロニーも利用してめっちゃ頑張った結果、電波問題は解消されたのだ。
本当にぎりぎりだけどね!
ゲリさんに大気圏突破してもらって落下してきそうな人工衛星撃ち落としてもらったりもした。
本当に苦労かけたわ……。
「そういえば祝砲はどうするの?」
「祝砲っすか?」
「えぇ、自前の持ってきたけど」
懐から引っ張り出したデザートイーグル、クリスちゃんが持ってきてくれた昔の相棒である。
が、それを取り出した瞬間周囲の黒服さん達が一斉に構えた。
「祝砲あげましょー。弾そのままでいいから総員ゲリさんを狙って!」
「え?」
「一斉射ー!」
そう宣言したが、発砲したのは私だけだった。
しかも外した……いや、避けられた。
身体を炎に変えたゲリさんを弾丸がすり抜けたのだ。
「む、やるわね」
「あのくらいなら問題ないっすね。でも祝砲って空砲なんじゃ……」
「私達は実弾でやってたけど、どうなのかな。 そこのお兄さん、どうなの?」
「知らないです。あいにく平和と水を安売りしてる日本育ちなもので」
「そっかぁ、じゃあ物騒な国の人に聞かないとね」
「刹那さん、あそこの席で美味しいご飯配ってます」
「せっちゃん、これ以上独占しちゃいけないから行きましょう」
なぜか急に二人が結託し始めたけど、ご飯が待っているなら仕方ない!
ベルゼブブと話できてないけど、うん、仕方ないわよね!
しかしなんで急にご飯の話されたんだろう。
ちょっとフランスの大統領辺りに声かけようかなと思っただけなのに……。
とかげは幸せになりました。
ベルゼブブ? 何か口走って刹那さんに食われそうだからずっと黙ってた。
祥子さんの腰の痛みは初夜の話、端的に言うと「以前刹那さんが取り込んだ媚薬を使って祥子さんをメロメロにして初体験の痛みを緩和したはいいけどそのままサキュバスになった」というだけです。
なおこの二人の初夜はとかげの身体がドラゴンのままなので人間形態のベルゼブブとは相性が悪く、蠅形態で行われるため「絶対に」書きません。
とかげは虫型ケモナーというジャンルを開拓している変態さんだったので問題なかった。




