やりたいほうだい
「だーくっそ! 中ボスレベルは抑えてくれてるのに雑魚が多い!」
道すがら、天使やら顔に口だけしかない羽の生えてる黒い人型生命体やらをぶちのめして進んでいるけどなかなかお城に辿り着けない。
かなり面倒だし、余計なエネルギーを消費させられる……。
「何か一発逆転の手段……ない!」
無いなら、突撃あるのみ!
「お母さん」
「ま、マヨヒガちゃん!?」
突然ウィンドウが開いたと思ったらマヨヒガちゃんの顔……つまり私のアバターが映し出された。
その背後にはナイ神父。
うーん偉そうにふんぞり返ってワイン飲んで……。
「あー! それシャトーペトリュスの78年物! こっそり隠してたのに!」
無茶苦茶高級なワイン飲まれてた……。
くっそ、あとで請求してやる!
「よろしいですか?」
「あ、ごめん。なにかしら」
「はい、化けオン運営に話を付けました。そしてこちらからも諸々の準備が完了したところです」
「準備ってなんの?」
「成功率は15%、失敗すればどうなるかわからない。その上で、承認していただけますか?」
「だからなんの!?」
「足りない分は勇気で補うということでよろしいですね。では承認を得たということで……テセウス号! 変形合体!」
「えええええええええええええ!?」
なにも承知していないのに勝手に認められてしまった……。
何かを叩き割った音がしたけど……ん? 何かしらこの地響き。
そして謎のBGM。
今はログインしているわけじゃなく、電脳世界に直接飛び込んでいるから音楽とか流れないはずなのに……。
『テセウス号、変形合体開始』
機械的な音声が流れた。
えっと……この声、ナイ神父の物よね。
『変形シークエンス、1から27まで省略。合体シークエンスに入ります』
背後に目を向けると置いてきたテセウス号が宙に浮いていた。
そういえばナイ神父に教わった機構取り込んでたわねあれ……いやな予感がしてきた。
『テセウス号合体……うぉぉぉぉおおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉおお!』
なんか雄叫びあげてる!?
しかもいろんなパーツが分離して、組み替えられていく……これ、クリスちゃんと見たロボットアニメのワンシーンみたいな……ん? 合体?
まさか!
『合体! テセウスガイガー!』
ロボだこれー!
『母のため、俺は戦う!』
「え、ちょ、まー!」
巨大ロボットになったテセウス号。
その拳が街に向かって振り下ろされた。
ちょうど私の真上に。
「ふんぬっ!」
やばい、そう思うと同時に身体が動いてその拳を受け止める。
……おっも!
何これクッソ重い!
うずめさんの99%殺しパンチよりも重い!
「こなくそー!」
『おぉ、流石母上。我が一撃をこうも簡単に受け止めるとは。しかしすみません、大丈夫だとわかっていましたが巻き込んでしまいました』
「大丈夫だと思ってたって……」
『俺の生みの親が俺より弱いはずがありません。なので周囲の雑魚諸共潰すつもりで行ったのですが、いやはや修行が足りませんでした』
「今度ぶっ飛ばす」
『修行ですか! それはありがたい!』
あ、だめだ、これ話通じないタイプだ。
『雑魚はお任せを。さぁ母上、先に!』
「あーもう、わけわかんないけど任せた!」
『はい! テセウスビーム! テセウスファイヤー! テセウスアンドヘブン!』
なんかみょうちきりんな技をぶっ放しまくってる全長100mほどの巨大ロボット。
その行く末を見守る勇気は私にはなかったわ……。
マヨヒガちゃん「こんなのどうですか?」
運営「面白いから許可、ただし限定的で今後使えないデータになるからヨロ」
ナイ神父「音声は僕が収録しよう」




