やっと気づいた!
「さーて、誰の差し金で何をしようとしていたか洗いざらい吐いてもらうわよ」
蔦でグルグルに巻き付けた男性を見下ろす。
アバターか本体を食べてパワーアップとかも考えたけど、一ついい使い道があったから残しておいたのよ。
「お母さんの言う通り、今全て暴露すれば命だけは助けてあげますよ」
はい、というわけで私のアバターはマヨヒガちゃんのボディになりました。
もともと人間に紛れて活動するための肉体は機械で作っていたらしいんだけど、なかなか不気味の谷を越えられなかったらしくてね……。
最終的にホムンクルスの生成に手を出していたけどそっちもうまくいかず、こうして私が持ち込んだ物を使うことになった。
魂とでも呼ぶべきものの移植はすぐに済んだし、幸いというべきか拒絶反応もなかった。
結果的に一般人よりは強いかなぁってレベルの人を捕縛するくらいなんてことない様子だ。
なおゲーム内で私のアバターがどうなったかは知らない、消失していたら運営にバックアップから再生してもらう。
「誰が話すもんか!」
「じゃあ今度は左腕で」
さっき食べたのは右腕、魂のダメージが肉体に残っているということは両方がイコールで繋がっている存在ということ。
まぁ、幽霊みたいなものでしょ。
「お母さん、ここは私が」
ずずいっと前に出てきたのはマヨヒガちゃん。
その手にはバーベキュー用に買った金属製の串。
「なにするの?」
「ちょっと脳みそこねこねしてお話ししてもらおうかと」
びくっと肩を震わせる男性、ちょっと痛そうだしそりゃ怯えるか。
私も注射嫌いだからね。
「だーめ、串が使い物にならなくなっちゃうかもしれないじゃない」
「ですがこれが一番早いと思います」
「速くてもレギュレーションは守らなきゃ。そんな拷問みたいなことしちゃだめ」
いやぁ、祥子さんが泣きつかれて眠ってくれてよかったわ。
こんな光景見せたらかろうじて平気だったスプラッタ描写にも弱くなっちゃうからね。
「お困りのようだね刹那」
「えぇ、たった今困りごとが増えたところです」
さてどうしようかなー、とか考えてたら不意に天井から声がした。
はいはいナイ神父ナイ神父。
「どこから!」
「落ち着きなさいマヨヒガちゃん。この人は考えるだけ無駄な相手だし、そもそも相手にしないのが一番だから」
「酷いなぁ。せっかく親切心で助けに来てあげたのに」
「本音は面白そうだから、でしょ?」
「はなまるだいせいかーい! というわけでニャルラトポイント贈呈!」
「いりません。そんで、彼はなんなんですか?」
「刹那も感づいているんじゃないの? ここまで情報と状況、それと味が揃えばね」
「はぁ……」
大きくため息一つ。
うん、まぁ気付いてはいたわよ?
なんかおかしいなぁという感覚がどこかで残っていて、ゲーム内とはいえ色々食べてきて、そして現実でも食べた。
その味の類似点からしておおよその状況は理解できたし、今までの違和感もすべて消え去った。
そもそもおかしいのよ、幽霊という存在が。
肉体を持たずに魂だけで活動できるのは既に生命体とは言えない。
そのくせ人間だった頃よりも凶悪な力を得ているとか、それはもう摂理を無視している。
つまるところ、上位存在とでもいうべきかしらね。
もっと雑な言い方するなら神様。
「彼、天使かなにかですかね」
「ニャルラトポイント贈呈」
「ぶっ飛ばしますよ?」
いい笑顔なのが余計に腹立たしいわ。
今まで気づかなかったのは理由があるのです。
そろそろ最終話(最終話とは言っていない)書き終わりそうです。
本編完結後普通に後日談とか番外編投稿する予定です。
不定期になるかもしれないけどね!




