さらば生態系
「はーい、悪魔も鬼もちゅうもーく」
なぜか演説することになった私、話すと長いようで短いお話。
領主様にね、私と同じ外様の相手だから説得の手伝いしてほしいって言われたの。
なんで私がって言ったんだけどねぇ、悪魔なら同類だろうって言われた。
種族を見抜かれたかと思って聞いたら酷いこと言われた。
「君の精神性って悪魔みたいなものじゃないか」
殴ってやろうかと思った。
耐えた私は偉い。
「ダンピールは外界との交流を断っている。それを承知のうえできたのかしら」
「代表してお答えさせていただきます、悪魔王陛下。我らがダンピールのもとに来たのは全て承知の上です」
あ、やっぱり悪魔王ってのはバレてた。
「その理由は? 他の大陸じゃダメだった?」
「はい、英雄の大陸は既に地獄の一部のような物。数多くの悪魔が潜伏しており、またあそこは傲慢の領域と暴食の領域が隣り合わせ。我らのような脆弱なもの共では食い物とされて終わるでしょう」
「化け物大陸は? あっちは悪魔の砦とかあったはずだけど」
「あちらは強欲の領域です」
「そうなの? というか英雄大陸なら暴食の同類として迎え入れてもらえないの?」
「はい。そしていいえです。まず化け物の闊歩する大陸は戦場です。やはり我らのような脆弱なものは捨て駒になるのが限度。そして英雄の大陸では我らを受け入れる余力がないとのことです。ベルゼブブ様直々のお達しを頂きました」
あの野郎……そりゃまあ? たしかに忙しいのはわかってるわよ。
ゲリさんがすっごい頑張っているのもわかっている。
英雄と飛行系化け物の共存のために奔走している。
だけど、ベルゼブブ遊んでるだけじゃない!
あいつ暇さえあれば街に降りて食い倒れしてるの知ってるんだからね!
「……いくつか条件があるらしいけど、聞いてもらえるかしら?」
「なんなりと」
「はい、領主様交代。で、聞いての通り他の大陸に任せるのは無理。どこでもいいから適当な土地に村なり集落なり作って監視した方が早いわ」
「の、ようだな……悪魔諸君。聞いての通り我らは国を閉ざしている。だがどうしてもというのであれば我らが宗主様に話をしてみようと思う。その見返りとして君たちが命を落とした際はその肉体を貰いたい。当然こちらから攻め込むようなことはしないと誓おう」
「補足だけど、その集落作るの私も手伝うし、そこを拠点として活動させてもらおうと思うわ。つまり何かあったら……この国が消滅するということで」
「え⁉」
なんか領主さんが驚いてるけど、当然よね。
彼らの王様よ私、そりゃ庇護下に置くでしょ……人の土地だけどさ。
「というわけで隔離用の土地ちょーだい」
「そんな簡単に……」
「どこかあるでしょ?」
「……あの山の麓ならば問題ない。宗主様に話を通すにも時間がかかる。了承してもらえるだろうな」
んーと、遠くに見える山だけどキメラ馬車なら1日くらいかな。
全力ダッシュなら3時間くらい?
でもこの人数……ざっくり300人くらいだからね。
となるとやっぱりあれしかないか。
「領主さん、余ってるモンスター素材無い?」
「無いな。我らダンピールは素材を余すことなく使う」
「そ、じゃあちょっと海に潜ってくるから勝手なことしないでね。あ、狩っちゃいけないやつとかいる?」
「この辺りにはいないが……今から狩りだと? 何を考えている」
「ふっふっふっ、貰った戦艦と私の船を合わせてキメラを新調するのよ。そのために必要な素材が足りないからね」
海の生き物なら船に相性がいいでしょ。
まぁ……最終的に陸地を走らせて空を飛ばすんだけどね。
その時はドラゴン素材とか使うか。
「そんじゃ、行ってきまーす」
ばびゅーんとひとっとびでいけるから海辺はいいわね、潮風は嫌いだけど。




