成長?
そこから領主様のお屋敷に招かれた。
いや、連行されて監禁されたって言うべきかしらね。
どちらでも構わないけど。
「はぁ……まーた退屈。暇は神をも殺すって言うけど至言よね」
『それは同感、遺憾だがな』
『マジで暇は敵』
『暇より憎む物はない、これは共通認識』
「私に同意してくれるリスナーがいるって新鮮……」
『そりゃまあたまにはいいこと言うなって』
『でもお前の人間性は否定する』
「やっぱり辛辣……」
なんでこう私のリスナーは手厳しいのかしら。
恨み買うようなことした覚え無いんだけどな……いや訂正、そんなにないんだけどな。
ほ、ほら! 人は生きてるだけで誰かに迷惑かけてるって言うじゃない!
私の場合ちょーっとそれが多かったかなって心当たりが……ね。
「お食事をお持ちしました」
「待ってました!」
メイドさんがカートを押しながら部屋に入ってきた。
ノックも無し、というのはまぁ悪感情も含めてでしょうね。
そんなだと主人の程度も知れるとか言われそうだけどご飯が美味しければそれでいいわ。
「ん……? この食前酒とスープは下げてちょうだい。私、ご飯を無駄にしたくないの。あなたが代わりに飲んで」
「え?」
「食前酒は毒入り、匂い的に……強心作用のある類ね、適切な量なら薬だけど過ぎれば毒になるタイプ。スープはわざわざ聖水用意して作ったのかしら。なかなかいい嫌がらせするわね、こっちは臭いじゃなくて気配だけど」
「な、なぜ……」
「それは何に対するなぜなのかしら。何が入っているかは今言った通り。あなたに飲ませるのはそれを運んできたから。ご飯を無駄にしたくないのは信条。他に質問は?」
「……くっ!」
メイドさんがスープをこちらに向かって投げつけてきた。
避けるのは簡単だけど、それじゃせっかく煮込んだ食材が勿体ない。
わざわざコンソメスープ作ってきてくれたみたいだからね、あまりものかもしれないけど使われた食材が多すぎる。
だから近くに置いてあった花瓶の水を捨てて全てキャッチ。
「はい、入れ物が変わっただけで飲むのには苦労しないはずだから」
「ば、ばけもの……」
「だからそうだって最初から言ってるじゃん。それで、化け物に喧嘩を売ったあなたはなに? ダンピールだとして、本物の化け物を怒らせ殺し合いに持ち込もうとする……勇敢? 蛮勇? どっちでもいいけどね。私の前でご飯を無駄にするようなことをした人は……」
「ひっ!」
「例外なくぶち殺しているのよ」
「あ……あ……」
メイドさんが腰を抜かして震えている。
水たまりが広がっていくのは無視するとして……どうしたもんかしらねぇ。
「あまり、うちの従業員をいじめないで貰いたい」
おっと助け船、領主さんが部屋に入ってきた。
「いじめられたのはこっちよ。食べられない物を食べさせようとする、最低の行いじゃない? しかも殺そうとしてきた」
「ふむ……なら責任者として責任をとる必要があるか」
花瓶を掴み、そのまま中身を飲み干した領主さん。
そのまま食前酒も飲み干してから、何かの薬を飲んだ。
「大丈夫なの?」
「あぁ、心肺機能を弱める薬を摂取した。毒だが二つを合わせれば問題ない」
「そんな簡単なものじゃないでしょうに……」
「なに、ダンピールは頑丈なんだよ。それよりお客さんが大量に押し寄せてきてね……どう対処するべきか悩んでいるのだが、君の意見を聞かせてもらえるかな?」
「ご飯が先」
「いいだろう。彼らとて招かれざる客だ、多少待たせたところで問題はあるまい」
……この言い方、どっちかの大陸から人が押し寄せたかな?
まぁどうあがいてもしばらくは入れないでしょうけど……いや、潜り込むことならできそうかな。
一部の、ゲリさんみたいな子竜化スキルみたいなの持っている人ならね。




