悪魔かこいつ悪魔王だったわ
やればできる、そういわれ続けて30年近く……ようやくだわ。
今まではできなかった、やれそうだなと思っていたけど躊躇していたこれができた。
「忍法水面走行!」
『ただの力業じゃねえか!』
『右足が沈む前に左足を出す、理論は簡単だ』
『人間技じゃねえけどな』
うーむ、初挑戦だったけど海でやる前に湖とかで慣れておくべきだったわね。
波に足がとられて走りにくいわ。
「敵接近!」
お、こっちの動きに気づいたみたいね。
でもいささか遅い。
機銃らしき物体がこっちを向き、マズルフラッシュが眩しいけどそれだけだ。
「とりゃあああああああ!」
気合で全ての弾丸をはじく。
秒速何百発かはわからないけど、結構重い弾丸ね。
でも足を止めるわけにもいかないから避けてはじいて急接近!
そのまま船の側面を足場に駆け上がり、甲板に立つ。
「こんにちは、ビザは持ってないけど入国させてもらうわよ? なぁに、ただの観光客だから安心しなさい。安心して……死になさい」
こっちのペースに乗せたらあとは早い。
撃ってくるなら避けるか、近くにいる人を壁にする。
切りかかってくるなら殴り飛ばす。
他の船からの砲撃は近くにいる人投げて空中で止める。
私にしっかりした足場を与えたことが敗因と知りなさい。
「はーはっはっは!」
高笑いしながら大暴れ。
しかしこの人達……確かに血の味は化け物と英雄のをミックスした感じはする。
つまりこのゲームにおけるダンピールの立場だけど、それにしては異様に強いかな。
なんていうのか、ゲームスタート間もないってレベルの強さじゃない。
ということはNPCかしらね。
「NPCならやりすぎはよくないわね。復活しないから」
『プレイヤーならいいみたいなこと言いだしたぞこいつ』
『手遅れだろこれ』
『トラウマ植え付けられるプレイヤーもいるんだぞ』
『艦隊高笑いしながら全滅させておいて何をいまさら』
「全滅じゃないわよ。船1隻乗っ取って、あとは反転して帰っていったわよ」
うむ、最初に乗り込んだ船は私が制圧した。
といっても甲板だけだけどね、まぁ残った人はなぜか怯えて攻撃してくる様子ないからよしとしておこう。
「んー、これ貰っちゃっていいかな」
『いいんじゃね?』
『どうやって運ぶ気だよ』
『キメラ船も含めてどうするんだよ』
「全部インベントリに突っ込む。テセウス号はキメラだから召喚する方向で、このくらいなら担いでも問題ないから」
『人間の荷重量上限ってどのくらいだ?』
『こいつ人間じゃないから』
『設計図にないエラー品みたいなもんだ』
『生きてるバグ、虫じゃないけどバグ』
好き放題言ってくれてるけど否定できなくなっちゃったのよねぇ……。
鬼になっちゃったけど封印してるからぎりぎり人間も混ざっている。
つまりリアルダンピール!
「ま、そんな些細なことはさておき……インベントリに収納できないから生きてる人捨てるか。この距離なら泳げるでしょ」
港までの距離はわからないけど視認できる範囲。
ちょっと試してみましょう。
近くに転がってる死体を持ち上げて、おおよそ80㎏ってところかしら。
サイズ的には170㎝くらいだから空気抵抗とかが……面倒ね。
首を捥いで、思いっきりぶん投げる。
「えーと、うん。水しぶきあがらないから港にぶつかったわね。ってことは50㎞以内だから泳げるか。はい、生きてる人全員海に飛び込んでー、あるいは投げられるか選んでね」
『鬼畜外道がいると聞いて』
『はい低評価』
『誰かこいつの頭冷やしてやれ、聖水ぶっかけろ』
やめてください死んでしまいます。
ゲームのキャラは弱いんです。




