視聴者との漫才
こうして船旅となったのだが……。
「退屈だわ」
『だろうね』
『そりゃ操舵が必要ないからな』
『釣りでもしてろ』
お、配信付けててよかった。
いいわね釣り、私結構苦手だけどこっちだと釣れるかも!
えーと、釣り竿がないから蔦でいいわね。
腸を引きずり出して釣り上げる必要が無いというのは楽だわ。
「よいしょっと……いや、やることができたとしても暇なのは変わらないわよね」
『気付くのが遅い』
『せめて釣竿を握れ』
『俺の竿を握れ』
「はい、BAN。えっちなのはいけないとおもいます」
『どの口が言ってんだ』
『食欲以外の目的で使用されたことが無い口だろ』
『戦闘で使うじゃないか』
『こりゃ一本取られたぜ』
なんだろう、私を放置して盛り上がるのやめてもらえないかしら。
コメント欄だけで盛り上がってるとボッチの私がみじめになってくる。
『というか、こういうのって普通複数人で行くものなんじゃないのか?』
「やめろ、傷口を抉るな」
心無いコメントが私を傷つける。
そしてそこに塩を塗り込む。
塩塗りこんだならしっかり味染みさせてから焼きなさいよね!
「そもそも英雄大陸に一緒に来てくれる人いないし、化け物大陸に戻るの面倒。あっちの港出禁食らってるから座礁させないといけないから」
『真正ボッチで草』
『数少ない友人が王様になったから完全にボッチになってるな』
『こいつも王様だぞ。悪魔王で、魔王』
『魔王に土下座してこい、こいつに比べたら常識人だ』
「私のリスナーって人の心とか無いの?」
『お前よりはある』
『それなりに人でなしの自覚はあるがお前よりはまし』
『人の心があるやつがお前のチャンネル見るわけないだろいい加減にしろ』
流石に泣きそうになってきた……。
「そんなこと言ってると放送閉じて、目的地に着くくらいまでログアウトするわよ?」
『おつふぃりあー』
『おつふぃりあー』
『おつふぃりあー』
「違う! そうじゃない! 引き止めなさいよ!」
『かまってちゃん?』
「配信者なんて皆そんなもんでしょ!」
『お前だけ定期』
『レッドクイーン様を見習え』
『なんなら社長を見習え』
あれのどこを見習えと……。
いやまぁ、レッドクイーンさんはすごいけどね。
現役アイドルの立場を生かしてライブ配信とかやってるけど、毎回アンコールの嵐で終わらないから。
たしか最長79時間歌配信したんだっけ、途中休憩なしで。
『おい、引いてるぞ』
「え? あ!」
ぼーっとしてて気づかなかったけど蔦が何かを捕まえたみたい。
「フィーッシュ!」
思いっきり踏ん張って引っ張り上げたそれは鯨だった。
……捨てるところがないから助かるわね。
前話のマッチポンプに関しては259話参照でよろしくお願いします。
刹那さんがね、いろいろ重要人物に酷い事してね、結果船が漂着しちゃったの。
???「おつらみー」




