ダンピール大陸
「もーぎもーぎりーんご、もーぎもーぎしたーらもーぐもぐ」
適当な歌を歌いながら林檎を捥ぐ。
そしていくつかつまみ食いしながら、その感覚を確かめる。
うん、やっぱりエネルギーがすっごい。
全身からあふれ出るような感覚だけど、ルルイエさんにやってもらった封印をかけてみると身体の中で小さくなる感じがした。
なんていうのかな、PCのファイルを圧縮した感じ。
体内にエネルギーストックを作って、必要な時に放出できるようにしようと思いついたのだ。
残ってる林檎はいろんな実験や素材強化にね。
「よし、じゃあそろそろ行きますか」
もう十分だろう、そう思って窓を開けて空高く飛び立つ。
ふと眼下に広がった森は既に竹林になっていた。
というか、木から竹が突き出して天然の檻となっている。
うーん、これは普通に生活するのは無理ね。
ちょっと降りて竹とたけのこを採取してからもう一度飛び立って、そしてしばらくしてから馬車に乗り換えた。
ガラガラギャアアアアアアとけたたましい音と共に街道を爆走し、途中なにかを潰したような感触をお尻で感じ取りながら港に到着する。
いつものごとく、馬車を見て怯えた人たちに囲まれたけどアホ王やゲリさんの話をして関係者として通してもらった。
なんか連絡とってたけど、セーフ判定されたみたい。
そして海辺に行き、適当な船を捕まえる事にした。
ダンピール、化け物と英雄のハーフが暮らすという大陸に赴くためだ。
その話を適当な船乗りに聞いてみたところ……。
「あんなおっかねえ所行けるわけねえべや。船が沈められちまう」
なんて反応が返ってきた。
「おっかないって?」
「英雄はやることが過激だが俺ら人間の味方だ。化け物は俺らの敵だが好戦的じゃねえ。だがやつらはちげえんだ。過激で好戦的、余所者なんか見た日にゃ即座に殺しに来るんだで」
「即座にって……」
「誇張も比喩も抜きだべさ。それこそ見知らぬ船があったらどんな事してでも潰しに来るべや」
「そう……つまり普通の船じゃ無理ということ?」
「んだ。それこそ王様が持ってるような鋼鉄の船でもねえ限りあんなとこいけねえだ」
ここにきて少し困ったことになってしまった。
まさか普通の方法じゃいけないとは思わないからね。
うーん……どうしようかしら。
キメラ馬車みたいにキメラ戦艦作ってもいいんだけど素材集めるのが面倒なのよね・・…。
流石に船旅するならそれなりのサイズにしないと沖に出た時波でひっくり返るし、食料の貯蔵も必要になってくる。
かといって飛んで行くにしても面倒くさいし、そもそも私の飛行能力はおまけみたいなもの。
ゲリさんとかの特化した人に比べたら時間と労力がかかりすぎて……。
飛行機を作るのもいいけど、その時は私がビームや爆発を使っても壊れないくらい丈夫な物体にしないといけない。
エンジン機構とか知らないから、爆発の推進力ですっ飛ばす事だけを考えて作るから。
そうなるとやはり現実的なのは船なのよね……。
「おじさん、廃棄船とかそう言うの売ってるところないかしら」
「廃棄船だべか? 基本的に廃材にして薪にしちまうからなぁ……あぁでもこの先にある海岸には難破船が打ち上げられて放置されてるぞ。ゴブリンが住処にしているから壊そうにも近づけないでいるんだ」
「そう、じゃあその船って貰っても大丈夫なのかしら」
「問題はねえべ。むしろ感謝されるくらいだと思うが……お前さんまさか」
「その船を基に自分で船作っていくわ」
「無茶だ。お前さんが強いならゴブリンは問題ないかもしれんが、難破船を直すなんて不可能だべ」
「そこは考えがあるから安心して。ちなみに賞金とか無いの?」
「領主様が不在でなぁ……少し前まで戦争だなんだ、どこぞの領主が悪さしただなんだと問題になってな」
「あぁ……」
剣聖リリーとキャシー関連のあれこれか。
あと堕ちた英雄さんに付き合わされた戦争イベントの。
まぁ、棚ぼたがあればラッキーくらいにしか考えてなかったからいいんだけどね。
「そ、じゃあ明日からはゴブリンに怯えないで済むようになるから」
「もしうまく行ったら教えてくれ。船乗り一同、そしてこの街に住む者として礼くらいはさせてもらうけんな」
「じゃあご飯いっぱい用意してほしいかな。船旅ができるくらいに」
「おう、そんときゃ山ほど用意しちゃるでな」
よしよし、意外と良い契約結べたわね。
ふっふっふ、覚悟しなさいゴブリン共。
あとついでに素材こと悪魔と空の上にいるって言うドラゴン共。
ゴブリン素材じゃ強化してもたかが知れてるからね……。




