知恵ある人外の蛮族
そうこうしているうちに、よくわからないまま話はついた。
私と魔法学校は同盟を結び、傲慢と暴食は協力関係となるという話に落ち着いた。
そしてルシファーと先生が婚約、今後はここを拠点に入学者を募り、その中で適当な人間を使って実験やらをしていくらしい。
恐ろしい話だけど、片棒担いでいるというか……まぁ主犯なのよね私。
懸賞金とやらが増額されたのはそれも原因なのかな……そういえばアップデートでそんなのが追加されるって話があったわね。
「さてと……それじゃあここにも用は無いしそろそろ新天地めざしますか」
「新天地だと? 同盟関係はどうなる」
「そりゃそのままよ。定期的に顔出すからその時はこっちが用意したもの買い取ってもらって、そっちが要求するルシファー素体のパーツを用意する。ストックはいくつか用意しておくけど無茶はしないこと。問題ないでしょ?」
「それはそうだが……色々と興味をひかれてな」
「データ用のサンプルも提供したでしょ。血液に髪の毛に腕と脚に触手に羽。他に何が必要だって言うのよ」
「生きたサンプルというのは採取したものよりも様々なことがわかるのだよ」
「だとしても、その実験にまで付き合う義理はないでしょ。どうしてもというなら高くつくわよ?」
「む……」
こっちとしては足止めされることになるし、ゲームを楽しめなくなる。
何より当初の目的だった「未知の味を追求する」というのが達成できなくなるからね。
「いかほどだろうか」
「ざっくりだけどこのくらいかしら」
テーブルを爪で削って数字を書く。
適当な数字書いて、その後ろにがりがりとゼロをいっぱいつけておいた。
「……無理だ」
「でしょうね」
「分割は可能か?」
「一括で。身体の分割はいいけどお金の問題はしっかりしておかないとだから」
「そうか……ではこれで買えるだけのパーツを売ってくれ」
じゃらりと音を立てて麻袋が手渡される。
中には大量のお金……まぁ新天地に行くならお金はあって困ることもないわね。
えーと、金額換算で……500万リルか。
散財したのは数十億だから足元にも及ばないけど、今は数万リルしか持ってなかったからありがたいっちゃありがたいわね。
「何が欲しい?」
「そうだな……内臓がいい」
「そう、じゃあまずは肝臓と」
手刀で脇腹に手を突っ込み肝臓を引っこ抜く。
「腎臓と膵臓」
そのまままさぐって更に二つ。
「あとは肺でいっか」
最後に肺を引きずり出してその場に置く。
……かなりHPが削れた感じがするけど、この身体はやっぱり脆いわね。
「助かる」
「ま、次来る時までにもうちょい貯めておいてね。今回は出血大サービスってことにしておくけど、次は内臓一個でこの値段付けるから。代わりに黄金の林檎いくつか貰っていくから」
「それはかまわないが……エルフの反応が気になるな」
「エルフがどうかしたの?」
「あの林檎の木はエルフの森から養分を奪っているらしく、忌避されている。詳しくは教えていないのだが実をとることで森が喰われていくのではないかという話も出ているからな。あながち間違っていないのはエルフの直感というところか」
「そう、じゃあ何かあったら私のせいにしておけばいいわ。どうせいなくなるんだし、たまにしか顔出さないんだから」
「だがそれでは同盟とは言い難いぞ」
「いいのよ、こっちにも利益はあるから」
エルフと敵対した場合、どう動くかとか大切になってくるでしょうしね。
今後そういう戦いが増えそうだから、練習できるなら機会があってもいい。
とはいえ、積極的に敵対するつもりもないのよね。
エルフってさ、細身だから可食部が少なそうで、しかも美味しくなさそうだから……。
タイトルで「何をいまさら」と思ったあなた、大分毒されてます。
モツ抜きを「いつものことだな」と思ったあなた、相当毒されてます。
エルフの可食部について「こいつなら」と思ったあなた、残念ですが手遅れです。




