悪魔王よりヤバイ女
「フハハハハ! 馴染む! 馴染むぞ!」
「我らがルシファーが目のまえに……」
「おぉ、貴様が俺の封印を解いたのか! 実に良いぞ!」
「なんたることか……これほどのエネルギー……研究したい」
「悪くないボディを用意してくれたな! 女の身体というのは気になるが……まぁいいだろう! うむ、悪くない!」
「これほどの密度の魔力……黄金林檎の力だけではないな……」
うーん、話がかみ合ってないわね。
このまま眺めてるのもいいけど、そろそろどうにかしないと収拾つかないわ。
「はい注目」
パンッと手を叩く。
……思いのほか大きい音出てびっくりしたわ、ガラスが割れてるし。
「騒がしいぞ女よ。俺を前に……前に……すまんかった」
お? なんか知らんが謝られた。
シュルシュルと音が聞こえそうな勢いで委縮していく。
うーん、怯えさせるようなことしたかしら。
あ、先生は耳から血を流して倒れてる。
息はあるから回復系アイテムぶっかけて放置しておきましょう。
「何に対しての謝罪?」
「調子に乗ってすまなかった……ベルゼブブから色々聞いているのでな。察するにこの身体もお前が作ってくれたのだろう。感謝せねばなるまい」
「あー、まぁお仕事だからね。悪魔的な言い方するなら契約とかそう言うの」
「ほう、対価はなんだ。俺ほどの存在が宿っても問題ないほどの肉体、さぞ搾り取ったんだろう?」
「そんなに」
というか実は貰っていない。
ちょっと忘れてたけど、これグランドクエストなのよね。
ルシファー復活させるか、それを阻止するために魔法学校潰すかみたいなの。
だからその報酬がどうなるかまだ分かってないけど……強いて言うなら協力関係を結んだってところかしら。
「なんだと? それはいかん! 貴様も悪魔王の端くれならば取り立てはしっかりしろ!」
「待った待った、ちゃんと報酬に値するものは得てるわよ?」
「聞かせてみろ」
「協力関係」
「つまらん、少ない、足りぬ!」
なんか一蹴された。
いや、これは価値観の違いかしら。
「ねぇ、ここにお金が一枚あるわ」
そう言ってインベントリからなけなしのお金を取り出す。
蛮族の国で散財しちゃって僅かなお金しかないのよ。
ちょっと国を蒸発させた時に拾ったお金がね。
「ふむ」
「これを1000枚、そう要求したとしてどうなると思う? 相手が無理と言ってきたら? 別の物を代わりにと取り立てたら?」
「ほう、そういうことか。強欲と呼ぶにはぬるく見えるが、視点を変えるとこれほど恐ろしい取り立ても無いということだな」
おぉ、流石傲慢の悪魔王。
からくりに気づいたわね。
協力関係なんて簡単に崩れそうだし、向こうが反故にしたらこっちが弱いとなると報酬には釣り合わない。
けれどね、もし私の方が立場が上だったら。
例えるなら……会社の協力関係かしら。
いわゆる親会社と子会社の違いで、親会社から提携を切られるとなったら相当な痛手だけど子会社から提携切りますって言われても困ることは少ない。
独立と言えば聞こえはいいけど、今まで頼ってきた部分を全部自分でやらなきゃいけなくなる。
それがどういうことかというと、今回の場合ルシファーの素体キメラのメンテナンスや政策を魔法学校がやらなきゃいけないことになる。
他にもロストアイテムの定期的な供給が見込めるのに一方的に切って損をするのは魔法学校。
私はいらないアイテムをあげるだけでほしい時にお金が手に入る。
そうなれば一回で取り立てるよりも今後も協力しましょうねって関係を作って、こちらに依存させて、そして搾り取ればいい。
なーに、搾り取られてると感じないならそれは協力なのよ。
「なかなか良いな。気に入った、俺の妻に迎え入れてやろう」
「お断り」
……傲慢系譜って色欲も兼ねてるのかしら。




