おいばかやめろ!
「あ、これ私の血混ざったから食べられないわ」
仕留めた獲物を並べて確認していく。
この方法は便利だけど、少量とはいえ私の血が混ざってしまった痕跡がある。
……ん? 痕跡?
今までそんなの気付かなかったけど……いやまぁ、そもそも血を使った攻撃とかリアルでしてこなかったけどさ、それでもその感覚は初めての物だ。
なんだろう、封印施されてから随分と感覚が鋭敏になった。
「ねールルイエさん。いろんなことがはっきりわかるんだけど、これなにかな。封印の影響?」
「あー、封印っつーか魔法を浴びた副作用っすかね。刹那の姐さんの場合吸収力が半端ねえんで、自分の身に起きたことならだいたいすぐ察知できるようになるんじゃないすか?」
「なるほど……」
そういえばビームだって今じゃ普通に使ってるけど、元は化けオン運営の実験に付き合った結果だものね。
他にも呪いは永久姉からの影響で、子供の頃おやつのプリンこっそり食べた仕返しに藁人形やられてから使えるようになったんだっけ。
喧嘩の仕方は刀君から、その力の使い方は一会ちゃんから、霊感の使い方は羽磨君から、再生能力は辰兄さんから、未来予知じみた演算と頑丈さは縁ちゃんから教わったようなものだし。
思えば私が自分の力で手に入れた物ってほとんどないなぁ……。
「うーん、あまりうれしくないなぁ」
「なんですか? 人間って強くなったら喜ぶって聞いたんすけど」
「どこ情報よ……」
「ラノベっす。チートパワーで俺つえーやれるようになったらどんな陰キャもパリピにジョブチェンジって聞いたので」
「それはジョブチェンジじゃなくて力に溺れてるだけでしょ……私の場合借りものよりも自分の力で手に入れたあれこれがないなぁって思って凹んだだけよ」
「え? 手に入れてるじゃないっすか」
「なにを?」
「借りものとか言ってるけど普通の人は一度や二度教わったり身に受けただけじゃ会得なんざ不可能っすよ。私らの知り合いだって血反吐吐いて死ぬような思いして、ようやくあれこれ物にしていきました」
「それで?」
「だから姐さんの力ってその吸収力と、それらを生かす応用力じゃないっすか? 今でこそ使いこなしているあれこれだって使いこなすには多少の努力が必要だったっしょ」
……まぁ、たしかに間違ってはいないと思う。
ビームだって最初はただ身体が光る薬の効果だったし、今ほどの威力もなかった。
血液を使ったファンネルも明鏡止水とビームの応用だ。
それを更に応用して針に変えたりもして、ルルイエさんの封印を受けたことで「異物」に対する感受性も上がった。
だからといって……やっぱり借りもの、という範疇を出ないわ。
「そんなに気になるなら自分でなんかあみだしゃいいんじゃないすかね? 例えばオリジナルの魔法とか戦闘流派とか」
「オリジナル……」
「誰しも生きてりゃオリジナルだとかオンリーワンだとかにあこがれるものでしょ」
「量産機に浪漫を抱くのも普通だけど?」
「でもそれって、結局改造してワンオフにしたいって願望があるからじゃないっすか? もちろんそのままが好きってやつもいるかもしれませんがね、それでも自分の色を出すことくらいはするでしょ」
「確かにね」
「そういう意味じゃ今までの姐さんは改造しまくったワンオフ量産機に乗ってたわけで、そいつを基にした完全オリジナルの専用機をって話っすよ」
「専用機ねぇ」
「ピンとこないなら創作料理でも何でもいいっすよ」
「料理……ふむ、そう考えるとちょっとワクワクするかも」
「なら修行でもしたらどうっすか? 私は忙しいんでサクッと帰りますが、ナコトさんはしばらくこっちにいるみたいなんで」
「そうなの?」
「わたしゃいわゆる不法入国と同じことやってるんで、長居したら面倒になるんすよ」
不法入国くらいならもみ消せるけど、ナコトさんの言ってた異世界からのって部分が引っかかるのかもしれないわね。
どこまで本当かわからないけど、とりあえず信じる方面で行動するなら。
見知らぬ世界からの来訪者ともなれば謎のウィルスや病原菌持っててもおかしくないからね。
……そういえばフレイヤさんが退屈そうに見てた映画でそんな話あったな。
宇宙人が攻めてきたけど、地球の病気に感染して全滅したとか言う映画。
傑作と名高いから暇なときにクリスちゃんと見てたけど、フレイヤさんの趣味には合わなかったみたい。
「というか、その話題の人物ナコトさんは?」
「あっちで牛相手に腕ひしぎ決めてます。あ、折った」
あの人も大概自由人ね。




