女性陣全員そろった
「ゲホッ、ゲホッ……あー、死ぬかと思った。なんでこの家ビーム兵器搭載してるんすか! 明らかに過剰戦力じゃねえかよ!」
なんかガラ悪い人来たなぁ……。
化けオンで私のアバターに生えてる堕天使の羽みたいな感じだけど、烏みたいに真っ黒。
所々焦げているからもともとの烏の濡れ羽色と漆黒が混在している。
「うちはマヨヒガちゃんがセキュリティですから、ビームくらいならどこからでも出せますよ。あ、遅ればせながら伊皿木刹那です」
「マヨヒガ……? あ、ルルイエっす。えーと、ナコトさんの紹介で来ました、それ封印すればいいんすよね」
「お願いできますか?」
「うーん、やぶさかじゃないんすけどね。世の中、ほれ……なにかと便利な取り決めのブツがあるじゃないですか」
「ふっ……そういうと思って既に手配してありますよ」
親指と人差し指の先端をくっつけてこっちに笑みを向けてくるルルイエさん。
なに、私もその辺のことはちゃんとしている。
だからしっかり用意してあるさ。
「どうぞ、お納めください」
「ほほう、これは立派な……なんだ?」
「カエンタケ、ドクツルタケ、フグの卵巣、トリカブト、ヒ素の詰め合わせセットです。美味しいですよ?」
「は?」
「え? 一般家庭じゃお目にかかれない高級食材ですけど」
「いやいやいやいや、冗談きついっすよもー。こんなん人が食うもんじゃねえっすって」
そう言って詰め合わせセットを投げ捨てたルルイエさん、瞬時に身体が動いたわ。
「食べ物を粗末にするな!」
「おぶぇ!」
「こんなに美味しい物を粗末にするとか許しませんよ! いらないならいらないと言ってくれたらいいんです! そしたらこっちだって別の形でお礼を用意しますよ! 捨てるとかなに考えているんですか!」
「どうどう刹那ちゃん。それにルーちゃんも、相手のことを考えずにいきなりポイは悪い事だからね?」
「いや、どう考えても食いもんじゃないの混ざってるじゃないっすか……なんなん? ヒ素って」
「えーと、元素記号Asの33番元素、手に入れるのに苦労しました」
「いやそうじゃなくて、毒物じゃないっすか!」
「毒でも食べて無害なら毒じゃないですよ。同居人一同内臓が強くないので食卓にあげる事はもちろん、こうして家に持ち込むことすら怒られるのでこっそり用意したんです」
マヨヒガちゃんダンジョン87層にある鉱石取れる階層で。
つるはし用意してひたすら掘り続けたけど、出てきたのは恐竜の化石とかが多かった。
マヨヒガちゃんに預けて復元してもらって、日々の食卓を潤してくれているけど、その際に少量のヒ素が手に入ったからこうしておすそ分けしたんだけどなぁ……。
「それにしても頑丈ですね。奥歯へし折る気でぶん殴ったんですけど」
「あ? あー……そっか、こっちは基本的に人間種しかいないからこんなもんなのか」
「と、言いますと?」
「ナコトさん見てくだせぇ。こんな人がうろうろしている世界で人間みたいな貧弱な生物がどんな扱い受けてると思います? うっかり酒の席で喧嘩したら瞬時にあの世行き、なんてことにならんように人間辞めるか鍛えるかしてるんすよ」
「ほうほう」
「そういう意味じゃ刹那さんっしたっけ? あんたはまぁ……中堅ってとこっすかね。突出して強いわけじゃないけど弱くもないってところで。普段からこの人にばかすか殴られてりゃ骨も丈夫になるってもんですよ」
親指でナコトさんを指さした瞬間だった、ルルイエさんの指を掴む小さなおてて。
「人のこと指さしちゃいけないって教わらなかった?」
「あだだだだだだだだ! すんませんした! マジで折れる! つか捥げる!」
「あのー、それで封印なんですけど」
「あんたいい度胸してんなおい! こっちが指折れるか捥げるかのタイミングでそれ切り出すか!」
「交渉は相手が低い立場になったところを狙い撃て、それができないならこっちが上に立つか相手を引きずり落とせが伊皿木家の常識なので」
「物騒な常識だな! っだだあだだだだだだだだぁ!」
「で、どうします? 封印、してくれますか?」
「する! するから助けてぇ!」
やっぱり夕飯は手羽先にしようかしら……。
後で封印してもらってから地下に行って鶏絞めてこよう。
力加減とか覚えておかないといけないし、大きい鶏だから取っ組み合いの練習にもなるでしょ。
尻尾の蛇は邪魔だから先に切り落としてもらっておこう。
体調不良につき感想変身は明日とさせてください。




