やっと封印の話が進んだ……
さて、薬膳料理を食べて元気になったからぐっすり眠れて、むしろ寝すぎたお昼。
「それで本題だけど、その角と刺青を本格的にどうにかしたいんだよね」
「えぇ、寿命云々はさておき外見だけでも。これじゃ温泉いけませんから」
「あー、日本はその辺厳しいからね。私も温泉は好きだからよく行くけど、あっちだと結構自由なのよ」
「お国柄……というか世界柄ですか?」
「まぁそうだね、なんだかんだで種族的に生まれ付いた紋様があったり、刺青が儀式的な意味を持っていたりするから」
ほうほう、たしかに刺青そのものに意味を持たせるというのは日本でもあったことだ。
例えば罪人に刺青を彫るということもあったし、時代によっては身分や立場などを示す物でもあった。
ある種の個人情報になっていたのよね。
他の国の刺青事情は知らないけど、現代ではやろうと思えばボールペンと待ち針でできちゃう。
当然危険だからおすすめしないし、痛そうだから嫌だけどね。
「それなら封印はどうかな」
「封印ですか?」
「うん、私は鬼として生まれ変わったと言ったけど刹那ちゃんはまだその途中段階。お母さんのおなかの中って感じかな? 身体が徐々に鬼に近づいているっていう段階なの」
「つまり胎児が成長している途中みたいな?」
「そうそう、だからまだ半分くらいは人間なんだよね。鬼らしい象徴としてその角が生えてきたの」
「じゃあこの刺青は?」
「あー、鬼って聞いて何を想像するかな」
「えっと……真っ先に頭に浮かぶのは童話ですね。桃太郎に一寸法師、泣いた赤鬼なんかも」
少なくともご先祖様らしい茨木童子とかはすぐには思い浮かばない。
いや、親族だとか言われてもピンとこないからね……。
それこそ盛大な殴り合いとかしていたらまだつなげやすいんだけど。
「そうそう、でもってそれらのルーツって知ってる?」
「ルーツですか?」
「ある種の鬼にまつわる話でもいいよ。こんな仮説があると思ってくれたらいいから」
「はぁ」
「鬼というのはそもそも渡来人だった、なんて話」
ナコトさんが語ったのはこんな内容だった。
例えば桃太郎に出てくる鬼だが、赤鬼と青鬼がいるとする。
大きな身体に金棒を持って金色の毛髪、虎柄の腰布という姿はどちらも共通している。
違うのは肌が赤いか青いかだけど、白人さんの肌の色は見ようによっては青くも見えるかもしれない。
周囲に黄色人種しかいなかった昔の日本ならなおさらで赤鬼は日に焼けて真っ赤になった人、そんな外国人が難破してたどり着いた先が日本のどこかの島だったら?
虎柄の腰布というのは破れたズボン、あるいは交易品などだったのではないか。
当然日本語を喋れない彼らとの意思疎通は難しかった、しかも怯えている、なんなら貿易商ではなく海賊だったかもしれない、いろいろな状況が見えてくる。
そんな海外を知らない当時の人はどう見るか、見知らぬものや怖いものを神仏妖怪としていた国だ、当然名前を付ける。
名づけというのは呪いであると同時に、正体不明を解決させる手段でもある。
結果、外国人漂流者は「鬼」と呼ばれるようになったのではないか……という話だった。
「面白い仮説ですけど、それどこまで本当なんですか?」
「さぁ? 本当のことかもしれないし、全部ウソかもしれない。そういう話があるってだけだよ」
「それがこの刺青に何か関係が?」
「少し脱線しちゃったけど、とにかく鬼と畏怖された存在は君たち日本人とは違った肌の色をしていたということ。その変色途中なんじゃないかな」
「変色……」
「うん、あるいは鬼というだけあって、ついでに船乗りだとして相当な筋肉があったはずだし、それに海賊だというなら怪我だって相当していたはず。その名残がこうして浮き上がってきているとかもあり得るね」
「だとして、元が人間なら私は純粋な人間では? 鬼になる要素が無いですよね」
「いい質問だけど、その答えはさっき言ったよ。名づけは呪いだってね」
あぁ、なるほど……名前というのはとんでもない力を持っていたりするからね。
それこそ戦国武将なんかはすっごい長い名前で、信長なんかは上総介とかそう言った呼び方されていたって何かで読んだ。
それだけ名前というものに意味があった時代につけられた呪いだとするなら、子々孫々に至るまでの呪いとして残ってもおかしくないのか。
それこそさっきの仮説が本当だとしても人間が妖怪に変化して、その力の一端が現代に残るくらいには。
「それを封印すれば元に戻るんですか?」
「まぁ……そうなるね。ただし封印は定期的にメンテナンスして、なおかつ無茶して内側から力が溢れるようなことしたら大問題。しかも無理やり成長を抑えるようなものだから体への負担も半端ないよ」
「具体的には?」
「例えば生理がとんでもなく辛くなる。今までの10倍くらいには」
「10倍……」
「さすがに怖くなった? 他にもあるけど一番わかりやすくて安全なのがそれ。一番危ないのはそれこそ寿命を削るような感じかな、他にも頭痛とか記憶が飛ぶとか、意識を保てなくなるとかがあるよ。ちなみに男性だとEDだね」
「いえ、今までの10倍となると40リットルは血を流すことになるから処理が大変だなと思いまして……」
「うん、角生える前から化け物だったんだね」
なんでみんなして私のこと化け物っていうの?
流石にそろそろ泣くわよ?
Q.なぜこんなにのんびりしていたのですか
A.刹那さんの食欲とナコトさんの愉悦欲のせい




