ナコトさん:スターシステムキャラ
「とりあえず失礼して、よいしょっと」
別室に移動して角を見てもらうことになった。
負けっぱなしは悔しいはずなんだけどね、なんかもうそういう感覚すらない。
圧倒的すぎて勝てる気がしないからこそ、悔しさとかが出てこないわ。
縁ちゃんと大喧嘩した時みたいな感じで……いかん、トラウマが想起されそうだ、やめておこう。
「ふむふむ、なるほどなるほど……んん? いや、でもこれ……あぁ、そういう……ほほう……でも片方だけ……あ、それは報告書のあれか……だとすると……」
なにやらぶつぶつ言いながら私の角を撫でまわしているナコトさん。
うん、少し気恥しいしこしょばゆい。
「よし、大体わかったよ!」
「本当ですか?」
「うん、えっと伊皿木さんだったよね」
「刹那でいいですよ、兄妹が多いので」
「じゃあ刹那ちゃん、おめでとう」
「何がですか?」
「えーと、お誕生日かな? 君は生まれなおしたようなものなんだよ」
「はぁ……」
生まれなおした? どういうこと?
少なくとも死んだ覚えはないけど……。
「えっとね、この角は刹那ちゃんのご先祖様の血が原因だって言うのは理解している?」
「まぁ他に心当たりもないので」
「うんうん、話が早くていいね。それでその血が脆弱な人間の血を喰い尽くして、完全な鬼になったわけ。人間卒業というよりは生まれ変わりだね」
「えぇ……なんか嫌なんですけど」
「基本いい事の方が多いよ? まず不老、どれだけスキンケア怠ってもお肌はぴちぴち皴もシミも一つもできない! キューティクルも完璧で常にサラサラヘアーだよ」
「それは昔からそうですね」
ビキニエベレスト登山の時も特にケアしてなかったけど、肌も髪もダメージは無かったから。
昔からやっすいシャンプーで適当にごしごし洗うだけで十分だったし。
祥子さんにとがめられてトリートメントするようになったけど、それも安いやつ。
「あと寿命が延びる、平均で2000歳かな? 平和な世界なら5000は行けるんじゃないかな。鬼は好戦的だから喧嘩で死んじゃうこと多いから」
「それは嫌です、祥子さんとかと一緒に死にたいので」
「重いなぁ」
ケラケラと笑うナコトさん、眉が下がっているから困っている様子もあるけど、なんだかんだ楽しんでいるって言うのが正しいのかな?
「あとはフィジカル、喧嘩が強くなるよ。50㎝の鉄板くらいなら軽く貫けるパンチとか」
「それは以前からできてました」
「じゃあ力の使い方が下手なんだね、さっきのおためしでも力が分散してて弱かったから」
「むぅ……」
またうずめさんに頼んで修行でも連れていってもらおうかしら……今度は正確な攻撃しないと獲物がとれないような場所で。
多分海中とかになるけど……あぁ、でも無理か。
あの人今公安のお仕事で警察官と自衛隊の特殊部隊教育で忙しいから。
最近特殊部隊の数を増やしているとかなんとか……その中でも精鋭だけを集めたチームとか作るらしい、浪漫思考で。
「他には……んー、鬼ってそもそもできること多くないんだよね。フィジカルに全部のステータス割り振ったみたいな感じで」
「じゃあ特に嬉しくないです。人間に戻る方法は?」
「刹那ちゃんは焼いた肉を生肉に戻せる?」
「んー……戻した、と言うと語弊がありますが似たようなことなら」
「え? マジで?」
「はい、一度食べて消化して、我が身を削れば」
「それは戻してないね、生み出してるね」
「あ、取り込んだ肉をもとに自分の身体を部分的に同じ成分に変えて切り落とすとかも」
「それも違うし部分的だね」
「とりあえずこの角と刺青だけでもどうにかなればいいんです。寿命は……まぁなんか後からどうとでもできそうなので」
正直なところ、もともと長生きするだろうなという自覚はあったからね。
それが少しばかり伸びただけと考えればまぁ……。
逆に言うと祥子さんはお酒いっぱい飲んで、煙草いっぱい吸って、デスクワークでストレスも溜めてるから気を付けてもらわないといけないけどね。
昨今の技術力なら寿命くらい自由にできそうだし、化けオン運営にその辺の話でもしてみましょうかしら。
……スワンプマンになりそうだからやめておこう、最悪の場合私が増える事になりそうだ。
「じゃあこれ」
「はい?」
手渡されたのはのこぎりとファンデーションだった。
「特製だからね、角くらいなら切れるし普通に洗ったくらいじゃ落ちないから安心して!」
「どこに安心できる要素が?」
「ナコトさんお墨付き!」
ダメだこの人、ナイ神父と同じで我が道を行くタイプだ。
しかもあの人が我が道を他人に作らせるタイプとするなら、ナコトさんは我が道を素手で開拓していくタイプだ。
……絶対勝てないわ。
ナコトさんはルルイエ探偵事務所のキャラです。
クリスちゃんもそうなんだけどね、スターシステムでどの世界にも出てくる人たち。
クトゥルフだから許して?
ちなみにこれでも比較的常識人な立場の人です、比較的、ちょうどど真ん中くらい……。
年齢不詳だけどとりあえず言える範疇だと、クリスちゃんのご両親が結婚する前から知り合いで仲良くドンパチしていました。
なお元ネタはナコト写本。




