宇宙人未来人異世界人超能力者が……ほぼそろうな
とりあえずだけど、その後は準備に時間が必要だとわかったのですぐに出かけた。
まず礼服が必要なので失礼にならないような物を探しに、一昔前だとスーツとかって裾上げとかに時間が必要だったけど技術の進化で当日に用意できるお店も増えた。
本当によかった……お世話になってるお店が緊急の案件も対応してくれるところで。
少し瘦せて、ついでに胸も大きくなっちゃったから下着も合わせて購入。
クリスちゃんも必要だということで購入した。
制服があると言ってたけど、VOT通学だから日本には持ってきていないということを失念していたらしい。
というわけで二人分のスーツを用意、そして軽くショッピングと、飲食店でショッキングして帰宅。
角はもうなんか面倒くさいから怪我ということにしておいた。
以前もあったのよ、乗ってたカプンコ社製のヘリが撃ち落とされて破片が脳みそに食い込んで医者にさじを投げられたことが。
ゲーム会社だけど最近じゃ乗り物も作ってるってことで試乗させてもらったんだけど、撃ち落とされた。
どんな呪いなのか知らないけど撃墜率100%のヘリを作っているということで悪い意味で有名だけど、生存率が非常に高いということで使い捨ての歩兵運搬用として用いるブルジョアな所もあるらしい。
なぜか訓練ですら撃墜されるという不思議なヘリコプターだ。
設計図もソフトウェアも見せてもらったけど普通だった。
なのにどこかで少しでも関わっていると墜落する、誰にどんな呪いをかけられたのやら……。
ともあれ、そんな怪我もしたので知り合いは大体スルーしてくれる。
最終的にその時の破片は邪魔くさくて引っこ抜いたんだけどね、この角引っこ抜こうとすると頭蓋骨に繋がっているのか首ごと取れそうになるからやめておいた。
流石に部屋とかお風呂血まみれにするのはね……マヨヒガちゃんダンジョンでも「土壌汚染がひどいのでやめてください」って言われてるから。
まぁそんなこんなで想定外の形だけど時間は潰せた。
そして、普段は適当な服装で赴くことが多い公安にスーツ姿で登場した私達。
どんな裏技を使ったか知らないけれど、本当に天皇陛下がいらした。
ついでにテンショーさんと、この前戦った三日月委員長が。
「テンショーさんに委員長? なぜこちらに?」
「私がお呼びしたのですよ。本来であれば呼びつけられるような立場ではないのですが」
「え? いやいや、陛下がそんな言い方を……」
「いえ、本当にお二方は私などよりも上の立場です。詳細をお話しすることは出来かねますがご了承ください」
「そこまで言われるのでしたら……」
目上の人、それも私みたいな小市民じゃ滅多に会えないような方がそう言うのであればよほどの理由なんだろうなぁ。
でも、うーん……気になる!
いや、今は静まれジャーナリスト魂!
この手の話は深く追求すると地獄を見る!
ナイ神父の裏を探ろうとした時のことを思い出すんだ私!
……あ、全部どうでもよくなった気がする。
あの時のことを思い出したら何も知りたくなくなってきた……ミサイルの雨、クリーチャーに囲まれながら古今東西あらゆる兵器による波状攻撃、しまいには核ミサイルにしがみついて配線ぶちぎりながら空の旅……思い出しただけでテンションが下がる。
「あ、委員長。あれからナイ神父と連絡の方は?」
「とっていないよ。しかしその角……」
「えぇ、なんか生えてきちゃいました。早く取りたいので彼女の知人にお話を聞こうと思ったところこちらに案内されたんです」
「なるほどね、合点がいった。しかし鬼の血かぁ。厄介な業を背負ってしまったね」
「えぇ、気にしたことはなかったんですけどね。今までもなんかある度にあれこれ引っこ抜いていたんですが、これはとれなかったです」
脳みその中の水晶玉みたいなのは引っこ抜いたんだけどね。
しばらく忘れてたけど、クリスちゃんと買い物の後ご飯食べてた時に「もっと喰らえ」とか頭の中で声がして鬱陶しくて思い出して、その場で引っこ抜いた。
ちょっとスプラッタな瞬間だったからかお客さんが顔を真っ青にして出て行ったけど、悪いことしちゃったなと思って支払いは全部引き受けた。
「委員長は陛下に呼ばれてこちらへ来たんですよね」
「それもあるけど、基本的には役目を果たすためというべきだからね。いざとなればこれの出番もあるかもしれんと思って」
「これって……」
委員長が指さした腰の刀、以前リアルファイターで私の角を斬りつけたのと同じものね。
なんか……よくわからないけれどぞわぞわする。
凄い嫌な感じの気配……見ているだけで鳥肌が立つ。
「髭切と呼ばれる名刀だよ。聞いたことくらいはあるんじゃない?」
「まぁ、はい」
ご先祖様関連ということでそれなりに知ってはいるけど……。
「鬼を斬るには最適だから。尤も、俺の場合大太刀の方が性に合っているんだけど……。やむにやまれずいろいろ取り込んだ弊害かな」
「はぁ、とりこんだ」
「その角と同じようなものだよ。色々あったの、気にしないで」
「わかりました。気にしません」
そう答えると委員長は目を伏せた。
テンショーさんに視線を向けるとひらひらと手を振られたので同じように返しておく。
……あれ? 陛下が自分より上って言った人にこの対応はまずいのかな?
でも変にかしこまるとあの人嫌がるから……まぁいいでしょ。
「あ、来ますよ刹那さん」
「え? なにが?」
そう言ってから気付いた。
クリスちゃんが指さした先、ただの壁だと思っていた場所が開いたのを。
「うー……やぱりこれ酔うなぁ」
そう言いながらふらふらと出てきた女の子、額に二本の小さな角をはやし長くしなやかな黒髪を腰の辺りで結んだ少女。
「ナコトさん!」
彼女が、待ち人だとすぐに分かった。
陛下は次話でも登場するので白装束用意して待機しております。
割とマジで、曽祖父の実家の蔵から引っ張り出してきた、了承を得たうえでお借りしている。
不敬にならないように滅茶苦茶気を使っているので胃が痛い。
が、刹那さんとは違ってこれは作者自身が悪いので甘んじて受け入れます。




