べ、別にバトルシーンが面倒になったわけじゃないんだからね、相手が悪かったマジで
「次は俺の番だ」
「おや巨人さん」
「そこの小娘ならばその程度だろう、だが俺は貴様のようなモノには負けん」
「そうですか、では早速」
十秒後。
「勝ちました」
「なぜだ……なぜ俺の技が通用しない!」
「いや、絶対零度をも凌駕する霧にはびっくりしましたよ? でも私エベレストをビキニで踏破する企画とか、マリアナ海溝どこまで潜れるか企画で海底までたどり着いたので」
ちょっと寒かったけどポテンシャルに異常が出るほどじゃなかったわね。
高い山も深い海も大変なのよ。
寒いのはもちろんのこと、気圧水圧の関係でいつものようには動けないし、山も海もよくわからない生物が襲ってくる。
山だとあれね、白い巨大なゴリラ。
殴り合いの末に仲良くなって意気投合して一緒に踏破した。
海だと全体像が目視できないくらい大きい蛇みたいなの、日本列島並のサイズがあるって言われても納得しそうなくらい大きかったけど……まぁ見た目通り大味だったわ。
「そもそも寒くなるだけだったら体温上げればいいじゃないですか。あとレッドクイーンさんの使ってた炎である程度相殺できましたし」
「化け物め……」
「酷いなぁ、善良な一般市民ですよ?」
「くっ……人の世とはかくも恐ろしき存在がありふれているというのか……エインヘリヤルに負けたのも理由があったということか……早急に対策を練らねば……」
あー、なんか自分の世界に入り込んじゃってる。
結構いるのよね、プロ格闘家とかだと負けた理由がどこにあるのか探るためにあれこれ考える人。
巨人さんもその類かな、見た目から察するにプロレスラーとか?
あの霧は演出にも使えるだろうしね。
「さぁ、次は誰かしら?」
「俺が行こう」
「えっと、囲碁路哭さんですよね」
「いかにも、彼奴に騙されてこのような場に立つ」
「あー、ということはお仲間ですか」
「ふむ、彼奴とは縁こそあれど同一ではないということか。仲間、ということはなるほど、先程までの戦いも納得がいく。良い闘争を楽しもうではないか」
「はい、よろしくお願いします」
30秒後。
「勝った」
「くっ……まさか俺が負けるとは……」
「いやぁ、流石になにもされていないのに首が無くなるとは思いませんでした」
勝負の途中で突然私の首が消えた。
そして手のひらに口ができた。
びっくりしたけど、その隙をついて攻撃してくることが無かったからね、普通に首生やして、手のひらの口をしまってそのまま殴り飛ばした。
「奥の手をこうもあっさりひっくり返されるとは思わなんだ……」
「いついかなる時も油断は禁物、相手が隙を見せたら即座に攻撃、これ基本ですよ?」
「ふっ……今まで戦った者は己の肉体の変化に正気を失っていた。心強き者とは実に恐ろしきかな」
「あー、メンタル強い人はすごいですよね。ブラック企業で平然と働いている人とか見てて心配になるのに、本人はけろりとしているんですから」
祥子さんとかね。
あの人公安のブラック人事に耐え抜いて、今じゃ並大抵のことじゃ動じなくなってるから。
相変わらずホラー見せるとよわよわになって、お風呂や夜中のトイレなんかについていくことになるけど。
古い資料の閲覧でドッキリ系の……なんていうんだっけ、ふらっしゅとか言うの見てモニターぐーぱんで殴ってひっくり返って椅子から落ちて部屋の片隅でガタガタ震えてたのは可愛かった。
なお祥子さんのパンチ力ではモニターに傷一つ付ける事が出来ず、液晶も無事だったけど本人は手首痛めたらしい。
「さて、後は委員長とレッドクイーンさんか……」
「の、前に!」
「うわびっくりした」
突然現れたナイ神父。
さっきまで実況解説席にいたと思うんだけど……。
「ここでいったんCM挟んで他のメンバーの試合を見ようと思います。いいよね刹那」
「まぁいいですけど、なんで?」
「いや、君連戦しすぎ。みんな予想外に盛り上がって挑んでるけどさ、これちゃんと台本あるんだからね?」
「その台本を共有しなかったのが間違いでしたね」
「こういうのはシークレットでサプライズなのが面白いんじゃないか」
「アドリブも面白いですよ」
「ほほう、それはたしかに……だけど公式チャンネル使ってる以上ちゃんと数字出さないといけないから」
「そういう裏事情を暴露していいんですかねぇ……」
テレビ出演の時は数字の話すると無茶苦茶怒られたんだけど……。
「いいのいいの、うちは自由がモットーだからね!」
「そんなだから番組が無茶苦茶になるんですよ……」
手のひらに出した口でナイ神父の肩を思いっきり噛んでおいた。
これ意外と便利ね。
コメント欄
『世界にバグは……必要だ!』
『誰かアザちゃん起こしてこいよ!これ見られないの可哀そうだろ!』
『ざっけんな!誰が後始末するって言うんだ!』
『いま画面に映ってるこいつらにどうにかさせればいいよ』
『それもそうか、行ってくる』




