黒棺したい
その後、囲碁路哭さんと巨人さんの試合が行われた。
見応えのある……プロレスだったわ。
がっぷり組み合って投げ合って殴り合って蹴り合って、とにかくド派手だった。
しばらく見ていると巨人さんは霧を纏って周囲に冷気が溢れ、全てが凍てつくほどの寒さに変わった。
対する囲碁路哭さんはというと両手の口でその冷気を食べながら近づき、そのまま巨人さんの腕を食いちぎって勝利。
続けて行われたギャラルホルンさんと三日月委員長の試合、なんかもう凄かった。
長いからギャラさんと呼ぶけど、あの人がどこからか取り出した笛を吹くと半透明の人がいっぱい出てきて三日月委員長と戦い始めた。
対する委員長はというと背後霊みたいなのを出して、それが巨大化した。
なんだろう、よく似た姿だったけど顔が被り物みたいな……うん、表情がピクリとも動かない作りものみたいなのですっごく不気味だった。
そして身体はスマートな鎧姿で、巨大な大太刀持っていた。
そんな幽霊対決だったけど勝利をもぎ取ったのはギャラさん。
あの物量には勝てなかったということで、最終的に体力切れた委員長の負けとなった。
そして……ついに来てしまった、私の試合。
相手はソリッドさん、念動力の使い手だけどどこまでやれるかしらね。
「胸を借りるつもりで行きますよ先輩」
「こい、フィリア」
……あ、なんか今少し感動した。
この会社でお仕事し始めてからナイ神父以外と会話する機会が少なかったのもあるんだけどね、まともにキャラ名で呼ばれたのは初めてだわ。
「試合開始!」
ナイ神父の掛け声と共にソリッドさんが剣を構えた。
こちらも拳を構えて、互いに機会をうかがう。
そして、私達の間で空気の破裂する音が響いた。
「ほう……お前もその力を使うか」
「盗ませてもらったわ。見盗り稽古は得意なのよ」
「くくく……いいぞ、ならばこれはどうだ!」
レッドクイーンさんとの試合で見せた超機動、たしかにこれをどうにかするのは面倒くさい。
だったら他にやりようがある。
「燃え盛れ!」
コピー技その二、レッドクイーンさんがやってた炎の異能で周囲一帯を焼き払う。
「あまい!」
しかしその炎は全て地面に叩きつけられ、大地を焦がすだけだった。
「そうね、ならこれでどうかしら?」
全神経を集中させてもう一人の自分をイメージする。
私が抱える霊感、それは霊力なんて言い方もされる。
縁ちゃんや永久姉、羽磨君に比べたら弱い。
刀君にも負けるから本当に下から数えた方が早い私だけどね、それでも技を真似るくらいはできる。
「行きなさい!」
呼び出した背後霊みたいななにか、正しくその道の名前で言うなら……陰陽師の式神かしら。
それを使いソリッドさんの軌道をふさぐように移動させる。
焼け付いた地面、もう一つ仕掛けをしようと思っていたけど弾く方向がそっちでよかった。
余計な力を使わないで済む。
上には逃がさない、追加で召喚した式神を上空に飛ばし待機させる。
「小癪な……!」
式神を切り裂こうと剣を振りかぶったのを見て勝ちを確信した。
振り下ろされる鉄の塊、能力を使いこなせず絶えず自壊しては再生する式神、それがぶつかり合った瞬間だった。
「馬鹿な!」
ソリッドさんの剣には大きな歯形がついた。
私の式神よ? 鉄くらい食いちぎるわ。
あとはとどめ、ぱちんと指を鳴らすと上空で待機していたのがソリッドさんを掴み、そして地面に引きずり落とした。
「ぐあぁああああああ!」
焼けた地面で寝そべるのは相当きついでしょう?
私も最初のうちはきつかったわ。
自分がバーベキューにされる経験は慣れないと本当に苦しいからね。
「負けを認める?」
「まだだ!」
ソリッドさんの全身から強い力が発せられる。
そう、まだやる気なのね……。
「じゃあこれで行きましょうか」
今コントロールできる最大限の力で式神を生み出す。
委員長がやっていたアレと同じ、特大サイズのだ。
これならば多少強い力で弾かれたとしても押し返せる。
「くっ!」
その大樹のように太い右手が相手を掴み、そして天高く持ち上げたところで命令を下す。
右腕、拳より先を自爆させろと。
「くそがぁああああああああ!」
最初の紳士な態度はどこへやら、悪態をつきながら光に飲まれていった先輩を見る。
ここはあれね、あの名台詞を言うチャンスだわ。
「汚い花火ね……たーまやー」
とりあえず、これで一勝!
あ、爆発はワームホール作って上空に全部吹っ飛ばしたわ。




