渾身の謝罪
私はVR空間で正座していた。
目の前にはナイ神父のアバターと、運営のキャラクターであるゲームマスター。
内容はゲームリリース早々に街を破壊した事である。
そりゃね、東京タワーを鈍器に見立てて振り回して、槍に見立てて突き刺して、最後に思いっきりぶん投げたからね。
街というか廃墟というか、もうなんか凄いことになっている。
「というわけで、反省してください!」
「はい……」
『やってることがひどすぎて擁護できないのほんと草』
『これでチートしてないってリアルチートすぎじゃね?』
『サーバーに街に、次は何を壊すんだろうな』
『最初に壊したものは常識かな?』
「はっはっはっ、刹那の視聴者はなかなかユーモアのセンスがあるね」
「だからリアルネームを……はぁ、もういいです。今回は私が悪かったということにしておきます!」
「いえ、9割がたあなたに非があると思いますが……」
『破壊活動したのこの人です』
『僕たちは止めました』
『ギルティ』
『歯車』
『男の娘』
おいコラ視聴者!
裏切るな! そして謎の団結力を見せるな!
「で、でも徒党を組んで襲ってきたのはアンチで……」
「それも貴女が気を付けていればどうにかなったのでは?」
「うぐっ……でも、配信に乗り込んできたし……」
「いや、そもそも戦闘を許可せずブロックすればいいだけですよね。何か言い残すことはありますか?」
「お、お慈悲を……」
「判決、有罪」
「お代官様ぁ……」
運営さんの足にすがるようにして目を見つめる。
祥子さん直伝の胸を押し付けた上目遣い!
これで落とせない男はいない!
「同性にやられましてもね……」
「え?」
「あ?」
「あ、いえ、別に他意はないんですよ? 渋いお声のお姉さまだなぁと思っただけではい」
「……仏の顔も三度まで、と言いますよね? 今のが3回目です」
「はい……」
「三度まで許すか、三度目でアウトかというラインはありますがどちらがいいですか?」
「許してつかぁさい……」
既に土下座である。
ついでにビームで地面を熱して焼き土下座である。
これが最大の誠意、ただ頭を下げて許しを請うなど誰でもできる。
故に、熱せられた大地の上での土下座。
以前祥子さんにガチギレされたときにビッグサイトのフライパンと呼ばれる場所で土下座した時を思い出す。
地面も太陽光もカンカンなのに、背筋はずっと寒いのだ。
「まぁいいでしょう。宣伝にはなりましたし、データ復旧も問題なく行えます。と言っても開始早々にメンテナンスはできないので定期メンテナンスの時にこの傷跡を直しますが……もっと盛り上げてくれますよね?」
「……はい」
くっ、早く化けオンに戻りたいのに!
ライバー活動に時間をとられてなかなかできない!
サムネイルを作るのも時間かかるし、権利関係の確認も大変なんだから!
この前ナンバーズ見に行って、ついでに黄金林檎の成長と難民受け入れとエルフの様子を見てきたけどそれ以外何もできてないのよ!
ゲリさんは着々と王様の地位を利用してギルドを拡大して、化け物が忌避される英雄大陸で一大勢力になってたし……ベルゼブブはその正室を名乗って好き放題している。
妲己は暇そうにしてたから注文してたあれこれを差し入れたら子供のようにはしゃいでてかわいかったし……私も早く化けオンに戻りたい!
「あ、刹那。せっかくだからコラボの予定立てておいたよ。題して、【大惨事だよ! スターライブ全員集合! 総当たりガチンコバトル大会! ポロリもあるよ?】みんな見てねー」
「おらぁ! 一発殴らせろぉ!」
ナイ神父に殴りかかった私は悪くない。
だからそのまま投げ飛ばされて街の被害が拡大したのも私のせいじゃないです許してください。




