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化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


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運営会議

「公安が動き出したよ、さっきうちに買収の話が来た」


 大量のモニターに囲まれた部屋で一人の青年がつぶやく。


「どう返事した?」


「3億つんだら考えてやると答えたら5億持ってきた、ドルで」


「それで?」


「考えといてやるといって帰した、まぁ答えは決まってるけどね」


「だよなぁ、誰かに頭抑えられるのが嫌だから個人資産でやってるんだっての」


「それで、5億はどうする?」


「開発運営資金にすればいいだろ、自由に使っていい金なんだから」


「まぁな、それよりこのプレイヤー面白いな」


 別の青年が見ていたモニターに、その場にいた10数人の眼が向けられる。

 映し出されていたのはフィリア、暴食の異名を持つプレイヤーだ。


「勇者イベントを独り占め、妲己との好感度も上々で、英雄イベントの謎に触れた……面白いけれどちょっとやりすぎじゃない?」


「いやいや、このくらいがいいんだろ。物語には主人公が必要、オンゲは誰もが主人公になれるなんて言っているけど人生と同じで大半は十把一絡げのモブなんだ。俺は彼女が主人公にふさわしいと思うね」


「そうは言うけど、ある程度の公平性を保たないとゲームとして続かないわよ?」


「それはそうだ、ならこういう案はどうだ? このイベントを週1回、短縮版として体験できるようにする。そこで条件を満たせば勇者関連のイベントにも関われる、実績は翌週に持ち越すこともできるようにするんだ」


「悪くないアイデアだな、だがその管理は誰がやるよ。俺たちみんな手いっぱいだぞ?」


「そんなん、うちの優秀なAIに任せてしまえばいい。こんなことに手をこまねいている暇はないからね」


「僕もシナリオ作るのに時間が欲しいんだけど……」


「今回金が入ったから多少の余裕はできる。運営にあたってもプレイヤーの数が伸びてきているからな」


「それはやっぱりあれのせいかな」


「あの女な……広告塔としてもいいんだが、少しあれのPCをのぞかせてもらったんだよ」


「まーたハッキングか? しかも個人のパソコンなんて見て……すけべめ」


「うるせえな、気になったんだからしょうがねえだろ。とにかくだ、あれのPCを見たら公安と関りがあった、そんな奴を懐に入れるのはどうかと思うぞ」


「あーそりゃ……いや、案外面白いかもしれないな」


「なに? どういうことだ。まさかギャルゲーにありがちなおもしれー女的な……」


「ちげーよハゲ、このフィリアってのをこっち側に入れることを条件に国から金を貰う、ただしこっちのやり方に口出しはさせないってのは大前提にして、対価はこっちで作った遺伝子サンプルとかデータを用意してやれば十分だろ?」


「まとめるとフィリアというプレイヤーを雇用、国からのお目付け役として迎え入れるしこっちが作ったものは渡すけど金と自由を要求か?」


「そのとおり! まぁ実際どこまで向こうが聞き入れるか知らないけどな、俺としてはどっちに転んでも面白いと思うぞ?」


「ま、話すだけ話してみるか。俺達は作り終えたものよりもこれから作るものに力を入れたいからな。国が管理してくれるってならむしろ望ましい。正直毎日のように来るハッカーどもにもクラッカーどもにも嫌気がさしていたんだ」


「そうそれ、そっちの相手に手を緩められるなら運営関連に手を出せるようになるだろ? お前が手伝ってくれるならAIだの自然環境だののプログラミングもはかどるってもんだ。なによりこれから先のエリアはもっと高度なAIを必要とするからな」


「……なぁシナリオ担当。俺が口出しすることじゃないけど、あの塔本当に作るのか?」


「あれは必要……プレイヤー全員が無条件で右を向くのは面白くない。ならプレイヤー間で仲間割れを起こすための装置が欲しいから……」


「あまり派手にやるなよ? ばれなきゃいいが、昔のゲームみたいに吟遊呼ばわりされるぞ」


「吟遊? 詩人じゃないよ……?」


「古いゲームでな、まだテレビゲームもなかったころのものだがNPCの活躍を見せたいがためにプレイヤーを駒扱いするシナリオの俗称だ。あるいはそういうゲームを作ったやつに向ける蔑称でもある」


「吟遊……気を付ける」


「そうしろ、今回の勇者イベントなんてプレイヤーによっては吟遊と言われても仕方ないレベルだ。負けイベじゃないにせよ、勝ち目はごくわずか。正直俺ならこんな糞シナリオ書いたやつをぶち殺しに行くね」


「今、僕のシナリオを糞って言った?」


「あぁ糞だ、お前も思っているだろう? 突貫作業でやらされたせいでな。まったく……会社に頭抑えられていたから野に下ったのに今度はプレイヤーに頭抑えられて、大変だなお前も」


「むぅ……確かに今回のは酷い出来だったと思う」


「だろ? 顧客を言い訳にしたくないけど、好き勝手言いやがるなあいつらも。だけどあの性格の悪さは最高だ、エネミーと書けば誰もが強大なモンスターを想像するが、まさか勇者一行を当て馬にするとはな。しかもそこに隠しイベントを追加、得られるアイテムの重要性は低いが情報は値千金、糞とは言え時間のことを考えれば最高の出来栄えだ」


「へへっ……」


「はいはい、そこいちゃいちゃすんな。とりあえず方針としては公安の犬と首輪の役目はこの女でいいの?」


「それで話を通してみてくれ、ダメだったら話はなかったことにと伝えろ」


「りょーかい、交渉はこっちの役目だからな」


 そう言って全員は再びモニターに視線を戻した。

 これから始まるのは新しい地獄かもしれない……。


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