マッチポンプ
ひとまず、移民が来るまで私はやることが無いと判明した。
なので検証班の人に新しい情報を流して、蛮族の国跡地に行く。
当然姿は隠すので学校でフード付きのローブを借りた。
なにをしにって? そりゃ当然ナンバーズ……元拳闘奴隷だった皆さんが始末した人達の素材を漁りに。
さすがにルシファーのキメラには使えないけど、その素材をカジノにあったプールに水を張って黄金林檎を丸ごと握りつぶしたものに漬けて、そこに別の素材をドボン。
しばらく光り輝いていたプールだったけど、素材の強化が終わったのか光が治まった。
うん、プールに水を張る意味はないんだけどあとで飲み干すときに床を舐めるよりも楽だったからね。
あと大量の素材にまんべんなくってなるとこの方が手間が少ないし、林檎も一個で足りる。
下手に大量消費してエルフの森が悲惨なことになるのはちょっとね……。
そしてその素材を使って、ゾンビに見立てたキメラを作る。
なお見た目がゾンビっぽいだけで元は人間、聖属性とか炎属性の魔法が効きそうに見えるけどそんなことはない。
そして打撃と斬撃に対して強いという特性を持ったゾンビ風キメラが爆誕したのである。
それを、街に解き放つ。
これで蛮族の国に住んでいた人たちは私が言った呪いだとか穢れた地とかそういう話に信憑性を見出すに違いない。
この状況をどうにかしようと思ったら逃げるか、あの水を飲んで運よく力を手に入れて脱出するしかないからね。
なお、キメラ自体はそんなに強くない。
せいぜいがレベル換算で100といったところかしら。
化け物プレイヤーの初期組が既に300突破、ゲリさんもこの前300を超えたと言っていたし、トッププレイヤーなんかは400を超えているという話だから。
なお私の場合レベルは飾りなので無視、まだ200代で低迷している状態で、なおかつRFB解除すると水中移動しているのかっていうくらい鈍いからよわよわよ。
けどね、英雄プレイヤーってまだみんな二桁なのよね。
つまりここにレイド単位で来て、お城跡地の水を飲んでパワーアップしようとするなら亡者の群れを抜けなければならない。
そしてこのキメラたちにはあの水を飲んだ人は攻撃しない、近くで動物やモンスターを連れてきて水を飲ませる、死んだ人の素材はプールに投げ込んで強化してからキメラにするという設定を加えている。
つまり勝手に増殖するのよ。
なおカジノだけは安全エリアとして用意して、キメラに経営を続けさせている。
さすがに私が支払ったお金が返ってくることはなかったけど、賭けが無効になったという理由でいくらかのコインは返ってきた。
それをもとにシステム的に可能だったので色々とアイテム交換をしてみた。
例えば化け物プレイヤーにとって最重要なユニークアイテムを取得できる「パンドラ」だけど、こっちでは少し名前が違っていた。
その名も「堕ちた英雄の灯」という名前の物体。
まぁガチャに変わりはないんだけど、これを使用すると呪われた装備が出る確率98%、ユニーク装備0.5%、その他1.5%と言った割合でなんか出てくるらしい。
とりあえず1000個交換し開ける事にして、適当にキメラを量産しながらオープン!
さすがに1000個ともなるとパーセンテージに近い数字で出てくるわね……。
呪われた装備がごろごろと出てきたからこれは魔法学校へのお土産にするとして、ちらほら呪いを調べていくと私が使っても問題ないものもある。
例えば聖属性に弱くなる系、既に弱いから今更誤差の範囲。
他にも太陽光でダメージを受ける、これは装備で補っているから無問題。
あとは炎に弱くなる系。
ただね、どれも呪いがメインでそれ以外の効果が無いのよ。
普通のRPGだと呪われてる代わりに無茶苦茶強い、というのが定説なんだけど……ただ呪われてるだけ。
これは呪いを解除したら効果が反転するとかそういうのかしら。
太陽光がある限り体力が回復し続けるとかそういうの。
……そういえばクリスちゃんが遊んでたゲームでそういうのがあったわね。
RPGとシューティングの合体なんだけど、なんか紫外線を感知するシステムで太陽光吸収して云々みたいなの。
曰く、そのゲームを遊んでた子供が熱中症になって倒れたりして問題になったって聞いたわ。
実際どうだったのかは知らないけどね、まだインターネットすら未発達な時代のゲームらしいから記録が残ってないとかで。
聞けば聞くほど凄い時代だったらしいわよね、その前後100年って。
それはともかくとして、出てきたユニーク装備はなかなか面白い性能していた。
穢れた英雄の誇装備って言うやつで、攻撃特化な装備。
今使っている装備はどちらかというと私の弱点をカバーするという目的なんだけど、誇装備はもう攻撃しか考えていない。
例えば攻撃をはじくことでノーダメージにしていた籠手、腕装備なんかは相手を倒すと攻撃力上昇の体力回復装備。
足はいわゆるAGISTR強化のスピードを上昇させて攻撃力を上乗せする物。
太陽光ダメージ遮断の頭部装備は太陽光ダメージを3倍にする代わりに攻撃力を3倍、夜間限定で30倍にするというぶっ壊れた物。
胴体に関しては返り血を受けるたびにダメージ回復と全ステータス上昇みたいな内容だった。
うん、酷い戦闘狂装備だ。
誇はどこにあるのか……浜で捨ててきたのかしらね。
ついでのように出てきたその他の分類はやはりというべきか、ロストガンの系譜だった。
ただロストシリーズではなくエンシェントシリーズというべきで、エンシェントガンという武器は各種属性弾を撃てるというもの。
なかなか便利だけど、使う機会があるのかは微妙。
あとはエンシェントナイフって言うのがあって、これは自分の血液を刃に変えて剣のように扱えるという代物。
装備しないとその効果を発揮できないので、デメリットで武器を装備できない私には無用の長物ね。
ただ振り回すだけならできるんだけど、能力発揮できない武器なんて飾りにしかならない。
というわけでエンシェントシリーズも魔法学校へのお土産コースとなった。
いくつかはナンバーズにあげてもいいかな……。
とかげ「この前の連続死亡でデスペナ受けて200代までレベル下がりました」




