この人が一番蛮族してる
作戦開始はリアルタイム午前6時半ちょうど、ゲーム内時間だとお昼ごろだったりする。
そんなに急ぐこともないけど、ばびゅーんと飛んでお城の真上に来て、周囲の様子を探ってみるとだいぶピリピリしていた。
そりゃまあ、国一番の観光名所であるカジノを占拠されたらそうなるわよね。
私もラスベガスに遊びに行った時テロリストに遭遇して、お忍びで遊びに来ていた大統領と一緒にカジノに監禁されたときはどうなるかと思ったわ。
まぁ、その大統領を一度誘拐した事あるから二人でビール飲みながらテロ対策部隊が来るのを待ってた。
最終的に私が全部叩きのめすことになったんだけど、あれはあれでいい思い出。
「他のみんなは……あら、早いわね」
既に全員が定位置についていた。
と言っても、定位置なんてのは逃がさないように包囲する人達しか決めてないけどね。
他の人達は好き勝手に暴れられるようにばらばらに行動してとしか言ってないから。
それでもみんな動く様子がない辺り既に身を潜めている感じだと思う。
だったら予定よりちょっと早いけど、始めちゃってもいいわよね?
「てなわけでー、これを試させてもらいましょう!」
懐から取り出した黄金の林檎をしゃりっと食べる。
酸味が強く、レモンのように強烈な刺激が舌の上を走り抜けたと思ったら続けざまにジャムのようなどろりとした甘味が口いっぱいに広がった。
そして鼻腔を破壊するほどの香りが体内から漂う。
「うわっ、美味しい……これ焼いてバニラアイスと一緒に食べたい」
思わず感想が漏れるけれど、続けざまに来た感覚に顔をしかめてしまう。
なんていうのかしら……溶岩食べた時、お腹の中が温かくなった時の感覚に似ている。
溢れるほどのエネルギーが体内で暴走しそうになっているというべきかしら。
「今なら惑星くらい破壊できそうね……」
ふと、そんなことを口に出してしまうほど気分は高まっていた。
けれどこのままだとまずいので、体内を荒れ狂うエネルギーを放出する。
それは熱風となり、国全体を砂漠の如き熱波で包み込んだ。
普段なら同じことしようとしたらラーメン屋さん数十軒はしごしないといけないのに、この林檎一個でこれだけの力を出してまだ余裕がある。
すごいわね……ということでもう一口。
うん、美味しい。
美味しさそのままにビーム!
口から発したビームは普段の数十倍の太さ、そして威力になり王城に向かって直進する。
一瞬、見えない壁のようなものにあたったように見えたがパリンという音と共に光に飲まれていった。
なにかバリアみたいなのがあったのかもしれないけど、どうでもいいわ。
「うーん、やりすぎちゃった?」
ビームの跡地を見て呟く。
土煙が立つことはなく、ただ光に飲まれて溶解した大地、どこまで続くかわからない巨大な穴がそこにはあった。
中にいた人?
レンガ造りのお城が欠片も残っていないからね……いやー、みんなにはお城から離れた位置に陣取ってもらって正解だったわ。
巻き込んでたら大変だった。
さすがにパワーアップしたと言ってもこれには耐えられないでしょ。
辰兄さんクラスに人間辞めてようやくってところかしら。
私じゃ耐えられないわね。
どうあがいても大やけど待ったなしの威力だったわ。
以前メイリンさんに見せてもらった【対流星用迎撃衛星レーザー】とやらにも引けを取らない威力だった。
曰く、地球に接近する流星やら彗星やらを蒸発させるための巨大ビーム兵器だとか言ってたわね。
地球に向けて照射すればオーストラリアが消滅する威力だとかなんとか。
……いや、国一つ潰すような兵器と比べたらあれか。
まぁそもそもの話、国落としにそんなオーバーキル兵器とかいらないでしょ。
こうして私は100人の愉快な仲間たちと一緒にやってみせているわけだし、司令塔潰してしまえばこんなもんよ。
っと、そうこうしているうちに国中から悲鳴が聞こえてきた。
うんうん、順調みたいね。
……悪い事思いついちゃった、ナイ神父が以前やってたことなんだけどね、リアルで久しぶりに顔合わせしたからインスピレーションがね。
「異形化」
まずスキルを使います。
いろいろな種族が合わさって、なおかつ悪魔王の能力を得た私、その異形化状態は巨大な人型の化け物となった。
いや、この際姿はどんな化け物でもよかったし、ぶっつけ本番だから失敗してもよかったんだけどね。
人間に近しい姿というのは都合がいいわ。
「聞きなさい、愚かな群衆よ。私は偽の神と敵対する者」
まずは適当な名乗り、偽の神って言うのはあれ、この世界で一般的に信仰されている神様のことね。
ほら、アレな言い方するとこの世界の創造主って運営なわけだからさ。
嘘は言ってないよ嘘は、だって私悪魔王だもん、神様の敵だもん。
「蛮族の国、通称とはいえそのように呼ばれている国は偽の神に魂を売った。故に私はここに100人の使徒をつかわせた。裁きを受けるならば偽りの力によって築かれた城の跡地まで来なさい。その場で震えるだけの者には使徒が天罰を下すでしょう」
抑揚のない声を出して、淡々と説明を続ける。
さてさて、何人くらい釣れるかしらね。




