黒幕登場
「その人の成長を反転させるってやつ! そいつの仕業よ!」
「えーとね、その人もう老衰で亡くなってるから多分違うよ? それに文字通り成長を反転させるだけで見た目が若返る速度は普通の成長と同じ。寿命は一般的なままだから」
「じゃあその人の関係者は?」
「んー、辰兄さんみたいな人だったからなぁ。何人いるかわからない」
「お盛んな人だったってこと?」
「うん、女性だったけどお子さんが数十人。お孫さんに至っては数百人かな」
ちなみにイベントでカオスチームに配属されたメイリンさんもその血縁者だったりする。
彼女の場合異能とかそういうのは無縁で、だからこそ本流の血筋と認められずにお金だけ与えられていたらしいけどね。
というのも本人も知らないことで私が秘密裏に調べてわかったことだったりする。
そんな人が今や武器商人の頂点……現代における異能者の天敵のトップって言うのが何とも皮肉が効いている。
「そこから絞り込むのって相当難しいわね」
「異能を持たない人もいるからね。逆に異能の才能はあるけど眠ってるだけの人もいる。突然開花するなんてこともあるらしいから」
「というか、刹姉詳しいわね」
「ナイ神父って人がそう言う人を集めた会社を作っててね。今はバーチャルアイドルのグループだったかな……ほら、イラストを2Dや3Dで動かすあれのグループ」
「神父様……? それが随分俗っぽい会社を経営しているのね」
「あの人は基本的になんでも手を出すわよ? 幼稚園から大学までエスカレーター式の私立校を運営しているし、アイドルのプロデューサーやってるし、フィギュアの会社なんかもやってたはず」
「ますます胡散臭い……」
それは否定しない。
というかあの人は胡散臭さの塊だからね、それ取ったら何も残らないわ。
何度かぶん殴ったことあるけど飄々と立ち上がるから恐ろしい。
縁ちゃんと辰兄さん以外で唯一殺し方がわからない人だ。
クリスちゃんとかうずめさんはほら、なんか殺しても死ななそうだけどどうにかできそうだから。
お母さんは全盛期のパワー見てると弱体化したよねぇって思うし。
フレイヤさんに至ってはなんか糞映画渡しておけば大人しくなるから。
だから正直に真正面からいっても、対策を立ててもどうにもならないなぁってのはこの三人だけなのよね……。
「その人に電話してみたら?」
「基本的にでないわよ。あの人忙しいらしいから」
「なんで? さすがに複数経営はきついと思うけど電話対応もできないって経営者としてどうなの?」
「そっちは割と部下の人達に丸投げしてるっぽいから平気なんだけどね。なんか世界を混乱させるための謀略に忙しいってこの前言ってた。電話は鬱陶しいから圏外の場所に住んでるとかなんとか」
「衛星通信が当たり前のご時世に圏外ってどこよ……というか謀略って……ツッコミどころが多すぎる!」
「なんだっけな……何度か放火されたらしいけど森の中に家があるんだって」
「場所教えてよ刹姉。今から私が燃やしに行くから」
「やめておいた方がいいわよ。確か群馬のどこかにあるって言ってたし」
「うっ……群馬はさすがに……」
うん、一会ちゃんだとちょっと厳しいわよね。
私でもまだまだ手こずるから。
いい所なんだけど、私達みたいなちょーっと普通の世界からずれた所にいる人間に対して厳しい土地だから。
縁ちゃんなら散歩感覚で行けるでしょうけど、今まともにあそこに突撃できるのは私しか残っていない。
刀君や辰兄さんならあるいは、なんてことも思うけど辰兄さんは海外で、刀君は新婚旅行中だからなぁ……。
お嫁さん、いい人だけどたまに目つきが怖いのよね。
邪魔したら殺すって目線で伝えてきたときは背筋に鳥肌立ったわ。
「ただいま」
とか考えていたらバーンと医務室のドアが開かれた。
縁ちゃんがミニスカートにもかかわらず蹴り開けたのだ。
……今日は水色か。
「はしたないわよ、縁」
「黒幕捕まえてきた。あとよろしく」
そう言ってボロボロの何かをこちらに投げ渡して早々に立ち去っていく縁ちゃん。
本当にマイペースねあの子……。
って、あれ?
「ナイ神父?」
「やぁ刹那。刺激的な妹さんだね、ところで手を貸してくれないかな。全身の骨を折られてしまったよ」
……胡散臭い人代表来ちゃったよ。




