もはや前振りとかいらんよな
「さて……とりあえず期限までみんな大人しくしている事。私一度……えーと、別の場所に用事があるからね。期日には戻ってくるから大暴れしましょ」
そう言ってからログアウトした。
うん、彼らにログアウトって言っても通じないのよね……。
魔の者や英雄と呼ばれるプレイヤーはその強大な力と不死を保つために一時的に身をひそめるという設定があるとかなんとか。
というわけで、明日までゲームはお休み。
ちょっと疲れちゃったからねぇ。
「ん?」
ログアウトして身体を起こすと何か違和感が……。
妙に身体の動きが鈍い。
んーと……あれ? なんか身体が妙に小さい気がする……なんだこれ。
「せっちゃん? 起きてるー?」
「起きてます……よ?」
あれ、声もなんかおかしい。
「入るわよー……え?」
「どうしました祥子さん」
「せっちゃん……でいいのよね」
「何を当たり前のことを」
「当たり前……ねぇ、そこに鏡あるわよね」
「えぇ、どうしたんですか?」
言われるがままに鏡を見てみる。
……んん?
なんか服がダボッとしているなぁとか、自慢のDカップが妙に軽いなぁとか、身体の動きが鈍いなぁとか、声が高いなぁとか思っていたけど鏡に映っていたのは子供だった。
正しく言うなら小学生当時の私の姿。
……待って、何があったの?
「祥子さん……?」
「せっちゃん……とりあえず縁さんの服借りて公安に行きましょう。そこで検査を受ける、いいわね?」
「はい……」
どうしよう、なぜかわからないけど子供の姿になってしまった。
えぇ? いままで異常あった時ってだいたい前触れとか、何かしらの理由があったはずなんだけどなぁ。
今回は本当に唐突過ぎる。
とりあえず祥子さんの荒い運転で交通ルールガン無視しながら公安に突撃。
そこで血を抜かれたり、妙な機械の中で色々調べられた。
「特に異常ないですね」
「そんなばかな」
「いたって普通の小学生女児です。本当に伊皿木さんなんですか?」
「小学生の頃のアルバム持ってきましょうか?」
「いえ、結構です。そういった情報もすべて公安で記録されていますから。しかし、データを見るに本当に異常はないんですよ」
「んー、でも明らかに異常事態ですよね」
「えぇ、異常がない事も異常ですから」
はい?
「あのですね、普段の伊皿木さんであれば何かしらの異常値が出るんです。基本的には白血球や赤血球の働きがおかしいんです。例えば注射しますよね、すると針が皮膚を突き破らないなんてのは当たり前、どうにか刺さった針を白血球が分解してしまうなんてこともあります。なのに今回はすんなり刺さって、異常値も無し。なんですかこれ」
「知りませんよ」
いや本当に、今回に限ってはなんの心当たりもない。
私は普通にゲームをしていただけなんだけどなぁ……強いて言うならちょいちょい明鏡止水で合一使ってたくらい。
「んー、まぁ何とも言えないので今日は安静にしていてください。異常があればすぐに対処できるように公安に泊まり込みで」
「あの、ゲームでちょっと予定があるんですが……」
「バイタルチェック可能なVOTを用意してありますのでそこからログインしてください。基本的に自由に動いていただいて構いませんので」
「はい」
うむ、どうやら私は正体不明原因不明の異常事態に巻き込まれてしまったらしい。
見た目は子供、頭脳は大人な小学生女児か……辰兄さんがここにいなくてよかったわ。
持ち帰られて酷い目にあっていたはず……。
「あー! 何この子可愛い!」
……しまった、可愛いモノ好きの一会ちゃんがいたの忘れていた。




