余裕じゃろ?
えー、はい、残った99人全員が注射受けました。
あと96番君の弟君、可愛らしい赤ちゃんだったけどちょびっとスープ混ぜたミルクのませたら一気に元気になった。
さっきまでぐったりしてたんだけど、くぴくぴと飲んでいくにつれて血色がよくなっていって、元気に泣き出した。
一部男性がうるさそうにしてたけど無視、文句を言おうとした人もいたけど睨んだら大人しくなってくれた。
よかったよかった、手駒が減らなくて。
「さて、全員そのままの状態で聞いてね」
そのまま、というのは文字通りの意味。
えっとね、注射でパワーアップしたのはいいんだけどエネルギーを消費するのか滅茶苦茶ご飯食べ始めた。
全財産コインにしちゃったから一文無しで、しかもこの国滅茶苦茶食料品の値段が高い。
具体的には他の国の10倍、日本で例えるならコンビニ行ったら奥多摩だけおにぎり1個1200円だったみたいな!
そんなこんなでキメラに使う分を残しておやつのベルゼブブ素材とゲリさんの素材をマーケットに流した。
秒で落札されたけどお急ぎだったのでだいぶ足元見られたわ……。
悪魔王素材というのはさすがに稀少だけど、結構な人数が地獄エリアに辿り着いたみたいで悪魔素材や鬼素材を手に入れているのよ。
そう言った事情もあってすっごい安値で買いたたかれた。
以前ゲリさん国のっとり作戦の時に大量に流したのも原因だけどね、いろんな事情がかみ合った結果お値段なんと300万リル、内訳100万リルがベルゼブブで残り200万がゲリさん素材。
やはりドラゴン素材は貴重らしい……そういえばこのゲーム始めてからプレイヤー以外ドラゴン見ていないわね。
どこかに隠れ住んでいるとか?
あるいは同じドラゴンの種族を持っていないとたどり着けないところにいるとか。
うーむ、こういうの考えるの苦手だからこの辺にしておきましょう。
「正直に言うわ。お金がありません」
全員の視線が突き刺さる。
「いや、それはもう聞いたが……そんなに金ないのか?」
「うん、最初はただギャンブルして景品いくつか捥ぎ取って、あとは国滅ぼすだけだったから」
「それが何で無一文に……」
「ちょうどいい感じに使えそうな人材がいたから。だから全財産使ってあなた達を鍛えることにしたのよ。だけど……もうちょっと加減するべきだったわ」
「なんか……あんた考え無しなんだな。今までもこんな事あったんじゃねえか?」
「うぐっ……」
考え無し、祥子さんからよく言われる言葉だ。
それを赤の他人に言われると……悲しさのあまり全方位ビーム撃ちたくなる。
「で、それの何が問題なんだよ」
「武器を持たせてあげられない」
「あ? 武器?」
「え?」
「あ、あぁ……そうか、そういや俺達戦士として育てられてたんだっけか。化け物に改造されただけだと思ってたし今のままでも十分だと思ってたんだが……」
「大丈夫なの?」
「問題ねえよ、今ならこの林檎だって」
「それ握りつぶしたら欠片も汁もなめ尽くすまで踏み続けるわよ」
「……このテーブルだって土塊握りつぶすより簡単だ」
逃げたわね……まぁいいわ、食料を無駄にしなかったからヨシ。
「それでも不安が残るのよねぇ……国落としをするだけなら私一人でも十分、だけどここにいる101人、それも赤ちゃん抱えたままみんな無傷でってなるとなぁ」
「おいおい、あんた一人でそんなことできるわけねえだろ?」
「え? 余裕だけど」
「……えげつない方法か?」
「ん-とね、この黄金の林檎。そのまま食べるとパワーアップする代わりに時間制限の後死んじゃうのよ。だけどこの果汁を素材にかけるとその性能が跳ね上がるの。これをマンドラゴラにかけて、それを引っこ抜こうかなって思ってた」
「……範囲、わかっているのか?」
「え?」
「範囲だよ。マンドラゴラ一個で国を包み込めるほどの声量が出せるのか、あるいは国を超えて隣国とかにまで影響が出ないかとか」
……何も考えてなかった。
言われてみれば実験もできないわけだから、ぶっつけ本番は無茶だったわね……。
そう考えると逆によかったのかもしれない。
なんならもっと長時間この国に拘束されていたかもしれないと考えるとね。
「ま、まぁ? 私ならステゴロで殴り合いだけで国落とせるけどね!」
冷たい視線が再び……。
いや、ごめんなさい。
さすがにビームとか使わないときついかも……。




