舌の根の乾かぬ内に人体実験
悶え苦しむ人たちを尻目にスープがぶ飲みしながら中で茹でられたサメも美味しくいただいた私。
少し時間ができてしまったわ……。
数字が若い人は肉体が健康な分早く済むかと思ったらそうでもなかった。
逆に数字が大きい子供やお年寄りは結構変化が早い。
これは……あれかしら、ある種の免疫能力的な?
言いかえるなら抵抗力って言うやつかしらね。
その辺が十分じゃない人はサクッと変貌しちゃうという。
えーと、人間性って言いかえてもいいかもしれないわね。
それを人外性が侵食していく感じ。
私がリアルでこれ飲んでも何の変化もないんだろうなぁ。
人間離れしているとは言われるけど、辰兄さんとか縁ちゃんに比べたら一般人と大差ないもの。
強いて言うならちょっとご飯の量が多いだけで。
「なぁ、これ全員待たなきゃいけねえのか? さっさと糞野郎どもぶち殺しに行きたいんだが」
「それやるとまだ変化中の人が死ぬからダメ」
「はっ、雑魚なんかどうせ死ぬ運命だったんだからいいじゃねえか」
早めに進化が終わった人……72番さんがそんなことを言ってきた。
成人男性だけど栄養が足りていないのかだいぶやつれた感じだったから早々に浸食されたのね。
だけど気に食わないなぁ……。
「ねぇ、ちょっとこっちおいで?」
「なんだ?」
近づいてきた72番さんの頭を掴み、そのまま握りつぶす。
物言わぬ躯になった72番さん、その死体はすぐに光の粒子になって消えた。
いくつか【人間素材のキメラ】と名称のついたアイテムがドロップする。
「ここを出るなら全員で、この決定に不服がある人は前に出なさい」
そういうと変化を終えた全員が黙って傅いてきた。
うん、それでいいのよ、力を手に入れたからって増長する人はいらないの。
トラブルの種にしかならないから。
「彼と同じ末路をたどりたくなければ今後も大人しくしている事。これはこの国を滅ぼした後も同じよ。誰彼構わず喧嘩売ったり、トラブルを起こす人は私が責任をもって殺す。胸に刻んでおきなさい」
その言葉に全員が、苦しみながら変化を続けている人も含めて頷いたのが見えた。
結構余裕あるじゃない。
んー、よし、ちょっと思いついたことやってみよう。
残ったスープをお皿に盛りつけて、錬金術を展開。
注射器を作ってちゅーとそれを吸い、適当な人を手招きする。
「もっとパワーアップできるかもしれないけど、死ぬかもしれない。やりたい人いる?」
「わしがやろう。老い先短い命じゃったんだ。今更死んだとて後悔はない」
100番のお爺ちゃんが挙手したので、遠慮なくその腕にプスリ。
中身を注入すると共に変化してなおよぼよぼだった彼に変化が現れた。
「おぉ……!」
お爺ちゃんが感嘆の声をあげる。
しわが目立っていた肉体、筋肉など失われていた体にハリと艶が戻り、そして筋肉が膨れ上がっていく。
ミチミチと音を立てて変貌していく姿は……控えめに言って不気味だったけど、お爺ちゃんは変化を終えると同時に2mを超える巨躯を手にし、そして見るからに近接戦闘大得意ですって感じの姿になった。
「ほっほっほっ、若返った気分じゃ! これならいくらでも魔法を撃てるぞい!」
「え? 魔法使い?」
「うむ、魔法学校の関係者じゃったが冒険者として外に出てな。紆余曲折を経てこのような地に流れ着いたが……全盛期を超える力を手に入れられるとは思わなんだ」
「へ、へぇ……」
「この杖を売らんでよかったわい。しっくりくる触媒としてこれが最適だったんじゃ」
「ミスリルかなんか?」
「いんや、オリハルコンとヒヒイロカネ、それとアダマンタイトの合金じゃ」
「なにそれ硬そう」
「滅茶苦茶硬いぞ。ただし魔力の通りが悪いから基本は鈍器じゃがな」
……それでいいのか魔法使い。
ま、まぁなにはともあれよ!
血管から食べる事でもパワーアップするならよし!
望む人は全員注射も受けてもらいましょう!
刹那さんの倫理観はもうぼろぼろ。
リアル忙しくてゴリラ令嬢の続き待ってもらうことになりますので、こちらは毎日更新続けます。
コミケは13日土曜日のN48aです、一般参加のチケットは入手したけどいるかわからないので!
今回はSFで行きます。
合同誌で頒布予定だからご注意くだされー。
SAN値の低そうな暑苦しい格好の奴がいたら私だ!




