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化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


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STRとLuckが糞高い弟

「30連続でブラックジャックだと……」


「何かいかさまをしているのでは……?」


「いや、ルール的にあり得ないだろ……」


 方々から上がる驚愕の声、随分なれたものだわ。

 別にいかさまはしていない。

 ただ単純に、私この手のゲーム結構強いのよ。

 いかさまの技術はお父さんに教わって、運の良さはお母さん譲り。

 といってもお母さんより運がいいとは口が裂けて縫い直してもう一度裂かれても言えないけどね。

 あの人スロットやると777しか出さないから。

 競馬で183連敗したナツウララって馬に記念で賭けたら他の馬が転んだり騎手を落としたりして堂々の一着決めたくらいだし。


 なんというか……天が味方しているような人。

 そういう因子を一番強く受け継いでいるのが刀君なのかな。

 昔から良縁に恵まれて、賭け事に強くて、一番早く結婚した自慢の弟。

 本人はギャンブルは好きじゃないって言ってるけど、あの子と麻雀やった時何回天和出されたかしらね……。

 なおお母さんと刀君が一緒の卓になるとどっちが先に親になるかという勝負になる。


「そろそろ飽きたわね。他のゲームはないかしら」


「……お客様。申し訳ありませんが白コインが残りわずかでして」


「あら、そうなの?」


「えぇ、ですがこちらの不手際でお客様にご迷惑をおかけするわけにはいきません。よろしければ特別なお部屋へご案内させていただければと思います」


「高レートの部屋ね。いいわよ」


「では、専用コインに交換させていただきます」


 そう言って私のコインを乗せたカートを押して歩き始めるディーラー。

 くすねた瞬間にぶち殺す、と思っていたけれどそんな心配はいらなかったみたいね。

 砂漠のカジノと同じでいい感じにVIPルームに潜り込めた。

 最初から派手な動きしてれば向こうから声かけてくると思ったけど、想像以上に時間がかかったわね。


「こちらを」


「これは?」


「白コイン1000枚分のVIPルーム専用コインです。なお、これが最低ラインのものなので賭け事を楽しむのであればもう少しコインを用意することをお勧めいたします」


「そうね。せっかくだからこれ全部コインに変えてちょうだい」


 手持ちの1割くらいである100億リルをコインに変えてもらう。

 これでちょっとは足しになるでしょ。

 逆に言えばこれだけあれば好きなだけ荒らせるわ。


「さて、と……」


 手頃なスロットにコインを投入。

 カラカラと回っていくのを目で追って、ここだというポイントでボタンを押して回転を止める。

 そこに並ぶのは7の数字。

 だいたい感覚は掴めたし、初手からうまくいったからヨシッ。

 じゃらじゃらと出てくるコインも資金源にしてと……。


「おぉ、初手からとは随分運のいいお嬢さんだ。よろしければこちらで共に遊びませぬか?」


 そんな風に声をかけてきた老紳士。

 奇麗な服を身にまとっているけれど目は相変わらず腐っている。

 しかもこの人……全身から女性の匂いがする。

 本人が発しているわけじゃなく染みついた類、そこに微かに混ざる薬品と血の匂いから察するに相当あくどい事しているわね。

 なにより私の直感が告げている。

 この人は、ナイ神父ほどではないけれど極悪人だと。


「いいでしょう。何をして遊びますか?」


「なに、ちょっとしたゲームですよ。いかさまのしようもなければ、純粋な比べ合いのね」


 そう言って老紳士についていくと開けた場所があった。


「これは……」


「外にいる浮浪者にチャンスを与えるのですよ。ただ一人勝ち残れる殺し合い、番号で1から100までの数値を与えられ数字が若いほど有力株。数字が大きい相手程倍率がよくなります。そして我々はスポンサーとなり、好きな闘士に支援をするのですよ」


「支援?」


「武器の貸与、薬の投与、食事の用意などなど。試合が始まるのは三日後ですがそれまでにどこまで自分好みの戦士を育てられるかが問題ですな」


「へぇ……」


 悪趣味ね、とはさすがに言わない。

 心底楽しそうにしている人達だからね、その空気をぶち壊すのもよくないでしょ。

 だから、ゲームで全てをぶち壊すことにしよう。


「いかさまはできないって言うけど、それはどういう意味かしら。さっきの話だと危険な薬物も使えるんじゃないの?」


「それは資金力があるからです。金で解決できないことはない、何をしても許される、だからこそいかさまは存在しないのです。何をしてもいいからね」


「そういう意味ね……スポンサーが複数いる場合もあるのよね」


「えぇ、主に30番台が人気ですな。それなりに使えるのが揃っているので複数のスポンサーがつきます。逆に買っても見返りの少ない一桁や、最初から勝ち目のない50番台以降の輩には一人も着かない、なんてこともありますが」


「ふぅん」


 そう言って闘技場に並べられた戦士たちの顔を見る。

 誰もかれもがギラギラとした目をしており、この街にふさわしくない生きる活力に満ちた人たちだとすぐに分かった。

 どんなことをしてでも、どんなことをされてでも生き残る覚悟を決めた、そんな彼らが私はいたく気に入ってしまった。

 ここに来てから酷いものしか見ていなかったからね……ちょっと荒らしますか。


「ディーラー。このお金を全部コインに変えてちょうだい。そしてひとつ面白い試みをしたいの。必要ならその中からお金抜いて構わないわ」


 ずしんと地面に置いた大量のリル。

 久しぶりに素寒貧ね……でもまぁ、お金なんていくらでも稼げるからいいわ。


「お聞きしましょう」


「私がこれから100人の戦士を育て上げる。スポンサーは私一人、他の人は純粋に賭けに挑む。配当は私が出したコインから好きに引くといいわ」


「……上に掛け合います」


「えぇ、好きなだけ話し合って決めなさい」


 あなた達の最期をね。


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― 新着の感想 ―
[一言] >この人は、ナイ神父ほどではないけれど極悪人だと。 ナイ神父「心外ですね。 ただ“自分が”楽しめそうな形へ誘導しているだけなのに」
[一言] >私がこれから100人の戦士を育て上げる これが後の魔王軍である
[一言] 運に英語スペルはLuckね… サブタイは誤字報告範囲外なので
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