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化け物になろうオンライン~暴食吸血姫の食レポ日記~  作者: 蒼井茜


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ルシファーさん食われる

「いつ気付いた、と聞くのは野暮かな?」


「野暮じゃないけど聞くまでもないんじゃない? 不意打ちされるかなーって気配探ってたら弱弱しい傲慢の気配を感じたから」


 まぁそれでもアイゼンより強そうだったのよね。

 なんていうか……100個並べたくさやの隣にある破裂寸前のシュールストレミングの缶みたいな感じ。

 臭いの強さには差があるけど、片方は外に出てきたらやばいなぁっていう感じの。


「なるほど、ではなぜこれがルシファーの欠片だと?」


「弱いのに、強いのよ。気配そのものが分割されている感じで微弱なのに内包しているエネルギーそのものがとてつもない。だけど普通の悪魔としては強すぎるし、爵位持ちにしては乗っ取られたとか身を隠しているという感じじゃないから」


「説明になっていないな」


「だって感覚的なものだもん。ねぇ、それどうやったの?」


「なに、簡単な事だ」


 そういうと先生は自分の爪をはがし、そしてそれを口に運んだ。

 しばらく咀嚼し、嚥下すると同時に血が流れ落ちる指に新たな爪が生えてきた。

 なるほどなるほど、人間が耐えられるギリギリのサイズに分割して食べたのか。


「面白いわね……」


「だろう? 我々の長年の研究の成果だ。これも対価になるかね?」


「まぁならないとは言わないけれど、正直使いどころがなさすぎる」


 だって私、食べた相手の種族取り込めるから。

 リアルでのクールタイムが必要だけどさ、それでもねぇ……。

 ついでに言えば体内に何かを封印するとかそういうの、リアルだけでお腹いっぱいです。


「それは残念。しかしこれを利用すれば面白いことができると思わないか?」


「というと?」


「君がここに来た際に乗っていた珍妙な馬車。あれに悪魔王の欠片を封じたらどうなるだろうか」


 ……それはちょっと面白そうね。

 今の所悪魔素材ばかり使っているから親和性は高いと思う。

 だけど危険でもあるわよね、こっちの制御離れたりしたらと考えると、はいやりましょうとは言えない。

 なら……専用のキメラ作るのはどうかしら。

 いっそ破棄してもいいなって言うの。

 例えるなら妲己みたいな悪魔王達が直々に作り出したって言うアバターをキメラという形で作るって言うのは面白そうね。


「くくく……想像するだけで楽しいだろう」


「いえ、あの馬車はそのままでいいわよ」


「なに……? 君は浪漫というものを理解していない人種なのか? つまらん」


「話は最後まで聞きなさい。わざわざ自分の持ち物を壊すかもしれない、捨てなきゃいけないかもしれないなんてのは無粋でしょ。使えるものはとことん使う、そして実験するなら失っても惜しくない物を使う。これは学校で死体のリサイクルや、マウスを使っているのと同じじゃない?」


「ほう?」


「新しく、ルシファー封印のためのキメラを作るのよ」


「なんと……」


「それもとんでもなく強力なキメラ。封印されているルシファーの肉体が全力出しても問題ないくらいのをね」


 まぁ正確に言うなら封印されたアバターが、だけどね。

 本体はまだ地獄エリアで悠々自適に過ごしているでしょうから。


「ははははは! 素人の浅知恵と笑って切り捨てたいがそうもいかない前歴が多すぎる! やはり研究とは新しい風があってこそだな! ここ500年、その手の話題が無くて退屈していたところだ!」


「まぁ長生き」


「悪魔王の肉体を取り込んだ影響だろう。なにせ俺はこの学校で一番多く奴の肉体を食っているからな」


「へぇ、どれくらい?」


「左腕一本。他の奴らはせいぜいが髪の毛数本や爪一枚、血の一滴といったところだろう」


「……あぁ、なるほど。色々合点がいったわ」


 蟲毒っていう呪いがあるのよ。

 壺とかに毒蟲や蛇なんかを入れて数か月間土に埋めて呪具を作るって言う方法。

 琴餐とかいう虫を使うらしいけど、それが何なのかはわかっていないとかなんとか。

 正しい使い方は毎年生贄を一人用意することで莫大な富を与えてくれるけど、生贄を用意できなかったら持ち主が食われるっていう話。

 対処法は蟲がくれた利益に上乗せして道端に棄てる事、呪具をどうにかする方法は今の所見つかっていない……というのが定説なんだけどね。

 私、それ何匹か食べちゃったことがあるのよ。

 子供の頃実家の地下に押し込められた時にお腹が減って、箱の中にいた蟲をぼりぼりと。

 美味しくはなかったけれど、身体は満足してたのを覚えている。

 話が逸れたけどそれを呪いに転じる方法として憎い相手に僅かな金銭と一緒に送ることで相手を食い殺させるって言うのが現代に伝わる一般的な蟲毒の使い方。


 よく似た話が結構沢山あるけれど、この学校ではその蟲毒を続けていたんだ。

 ルシファーという強大な毒蟲、けれど封印されて身動きが取れない大きいそれをたくさんの蟲が食べて、その毒に耐えて馴染んだ蟲がどんどん力をつけていく。

 そして最後にルシファーの全身を食べて、元の蟲は気付かないうちに封印されていた蟲その者と同化する。

 学校を卒業してもずっと居座っていいなんて話があるのはそのためかしら。

 いうなれば……うん、例えば輸血で封印の力の一端を手に入れた人がいる。

 その人から産まれた子供は産まれながらに悪魔王の血をその身に宿して、ルシファーを取り込むのに適した肉体になる。


 それを世代を重ねて繰り返すことでいつしか最高の素体ができるということ。

 その素体が完全にルシファーを取り込んだ時、蟲毒は完成するというシナリオなのかしらね。

 そう考えた瞬間、目の前にメッセージが出てきた。


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― 新着の感想 ―
[一言] >> 目の前にメッセージが出てきた ルシファーからだったら 「私を食べて(はあと)」 か反対の 「わ、わわわわ私を喰べてもお、おおおお美味しくないぞ(震え声)」 のどちらかで システムメッ…
[一言] *魔王が 邪神に戦いを 挑んだ。 次回:さらば、魔法学校
[一言] 毒(せっちゃん)をもって毒(蠱毒)を制す…いやただの捕食だこれ 先生わりと凄そうなのにフィリアのヤバみが上回るという
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