魔法学校の秘密
「ともあれ、こちらが開示できるものは全て開示しよう。それとこれを渡しておく、ローゲリウス王も一つ持っているといい」
差し出されたのは白い花柄のブローチだった。
んー、なんかこれ見覚えあるというか……似たようなものを持っているなぁ。
「魔力を込めるとこの学校に転移できる道具だ。名誉職の者しか手にすることができない貴重品であり、他者への譲渡が不可能な一品だと思ってくれ」
やっぱりだ。
どうにも見覚えがあるというかなんというか……妲己から貰ったものと一緒だ。
「ねぇ、悪魔王についてどう思う?」
なのでそんな質問をぶつけてみる。
「魔法の源、調べる価値のある研究対象、そして象徴だな」
「象徴というと?」
「魔法を使いこなす存在として名高いのが天使と悪魔。その片割れの王達は魔法の象徴だろう。天使側が癒しに特化しているとすれば悪魔は破壊の魔法を好む。つまり我らの目指す大量破壊魔術に通じる道だからな。この学校にいるものにとっては魔法の象徴だろう。無論、教会などでは真逆の考えがあるだろうし、そんな話をすれば悪魔崇拝者として捕らえられるだろうがな」
「へぇ、なかなかうまいごまかしね」
「……なんのことだ」
「当ててあげましょうか。この学校の地下には悪魔王がいる。封印でもされているのかしらねぇ。それもベルゼブブより厳重に」
「はっ、そんな研究対象がいるならば一度お目にかかってみたいものだがな」
目の前にいますよーとは言いにくいなぁ。
まぁそんなのはさておきだ。
いくつか不自然なのよね。
例えばベルゼブブ、魔法が盛んな地域では神様や王様にあやかった名前を付ける事は珍しくないでしょう。
だとしても、女性に蠅の王の名前を付けるかと言われたら……皆無とは言わないけど普通はしないわよね。
それを見ても何も言わなかったというのがまず疑問点1。
次にこの学校の防衛に関してだけど、たしかに実力を試すという意味で魔法の雨をかいくぐる試験があるのはわかる。
それでもね、明らかに魔法を撃ってくる人の数が少なかったのよ。
ゲリさんは魔力を数値に表した授業をしていたけれど、あの話で言うならあの乱撃に使われた魔力を数値化するなら軽く数万は行く。
そしてそこにいた先生たちはそれほどの実力者には見えなかった。
研究者としては一流、あるいは超一流かもしれないけれど実戦でとなるとね、いいとこ二流かしら。
これが疑問点その2。
そして最後になるけれど、手渡されたブローチ。
妲己がくれた転移アイテムと同じ分類の物で、見覚えもある。
となると共通点が生まれてくるのよね。
ベルゼブブの名を持つ女性を見ても何も思わない、悪魔王達が作り出したアバターである妲己と同じアイテムを所有している、人間ではありえない量の魔力、この三つの疑問を並べると一つの共通項が出てくる。
それが悪魔王。
「この学校に封印されているのは誰かしら。サタン? それとアスモデウス? あるいはレヴィアタンとかかしら。場所は概ねわかっているからいいんだけどね、挨拶くらいはしていこうかなと思って」
「挨拶だと? 君のような魔の者が悪魔の王にあってどのような挨拶をするのかね? 少なくとも、木っ端者など相手にされないだろうに」
「え? え? なんの話っすかフィリアさん? というか悪魔王ってうちのあれっすよね。何がどういうこと?」
ゲリさんはひとまずスルー。
うん、ごめんね、今ちょっと忙しいから。
「新参者の悪魔王として、先輩に挨拶するのは当然のことじゃないかしら?」
「新参者だと?」
「えぇ、改めまして魔の者にして……不本意ながら、ほんとーに! 不本意ながらその立場を押し付けられて出世してしまった暴食の悪魔王のフィリアです」
胸に手を当て一礼。
その間気配を探り続けていたけど、攻撃してくる様子はなし。
ただまぁ……ちょっと面白いもの見つけちゃったわ。
「で、質問は撤回するわ。初めまして傲慢の悪魔王ルシファー……の欠片を持つ人間さん?」
「ふっ……ふふっ……ふははははははっ! 実に面白い! この世には因果というものが確かに存在するのかもしれんな!」
そんな風に快活に笑う先生は、目の色が金に光り輝いていた。
同時刻、以前話していたラブコメからラブを抜いてマッスルぶち込んだ作品公開です。




