トカゲのギルドはやばいぞ
「というわけでローゲリウス王には我が学校で特別講師を願いたい」
「いやー俺これでも王様だから時間が無くてねぇ」
「その点に関してだが先ほどそちらの国に特使を送った。既に伝令魔法により好きに使ってほしいという返答が来ているので問題ない」
「誰が俺を売った!」
「代表者を自称するベルゼブブという女性と、ローゲリウス王のギルドメンバーの方々、それから国民に調査をしたところ、いてもいなくても変わらない王様だから出稼ぎしてこいとの意見を頂いたようだ」
「俺……人望なさすぎない?」
「大丈夫よゲリさん」
テーブルの上でぺしゃってなっているゲリさんの背中をさする。
うん、この人には間違いなく人望がある。
なにより人外嫌う大陸のNPCから出稼ぎしてこいって言われる程度にはなじんでいるんだから問題ないわ。
「少なくとも売り物にはなるくらいの価値を見出してもらっているんだから」
「……ちょっと、俺王様やめようかな」
「やめてもいいけど……こっちで今後タクシー業務出来なくなると思うわよ?」
中途半端なところで人民を見捨てた王様なんてねぇ……。
そりゃいい噂はなくなって、今後扱いも悪くなる。
ついでに化け物プレイヤーからしたら大陸で悪名を轟かせたということでさらに扱いが悪くなるのは必然。
つまり詰み。
「………………わかったよ、その話受ける代わりにちゃんとうちの国とギルドの支援頼むぞ?」
「そこはもちろんだ」
うん、そしてなんだかんだ言って責任を果たそうとするゲリさん、嫌いじゃないわよ。
一会ちゃんとは違うタイプのツンデレさんなのかもしれないけどね。
本当に面倒だったらゲーム引退すればいいだけの話だし、ゲリさんの立場とか考えるとむしろゲームやっている時間があれば寝たら? って言いたくなる環境みたいだから。
「詳しく話を詰めるのは後にするとして、俺が教えるのは魔法に強い耐性を持つ敵や、俺みたいに高高度……つまり魔法の射程外から攻撃してくる相手への対処法とかか?」
「あぁ、魔法の射程は年々研究が続いていて徐々に伸びているがそれでも弱点は多い。耐性を持っている相手なんかは土魔法などの物理的な効力がある攻撃を当てればいいのだが、それは地面の上を歩く相手に限られるからな」
「となると……ちょいうちのギルメン何人かこっちに呼ぶか」
「ゲリさんのギルドメンバーってタクシーやってるから飛べるのは知ってるけど、平気なの? 戦闘関連」
ゲリさん個人の強さは知っている。
いかに厄介な相手で、いかに面倒くさくて、個人的に真正面から戦いたくない相手筆頭ともいえるから。
でもそのギルドメンバーとなると……面識がないのもあって私にはわからない。
「俺達はタクシー業務が基本だけど、その業務の中には護衛も含まれてるのよ。つまり砂漠とか海の上飛んでる時に襲われたら相手を討伐、最低でも撃退はしなきゃいけない。しかも背中に乗っけてる奴ら守りながら」
「なるほど、防衛戦に強いタイプなのね」
「まぁ……そこまで言うと語弊があるけどね。ぶっちゃけた話俺らはタンクとしての意味合いが強いと思ってくれたらいいよ」
「タンク……私には無理な芸当ね」
弱点属性が多すぎる私はそういう相手の攻撃を受け切ってなんていうのは無理。
捌くならできるけど、流れ弾が味方にあたる可能性があるからね。
回避盾も化けオンでは通用しない手法だから……うん、後衛が巻き込まれるからね。
「ちなみに純粋な戦闘力だと俺は中堅。攻撃力防御力全部含めてギルドでも平均的な数値だよ」
「ギルドマスターなのに?」
「いや、むしろ他の連中が特化しすぎててさ……攻撃一発でこの学校潰せるけど飛んできた枝が刺さっただけで即死とか、逆にこの学校の全員集めて攻撃受けてもびくともしない防御力だけど攻撃力は枝で死ぬ攻撃特化すらダメージ与えられないとかそういうレベル」
「現代の矛盾……」
「あ、それに関しては解決してる。攻撃特化のリソース切れによる自滅と防御特化の体力全損による死亡で引き分けだった」
「矛盾の解釈が壊れるわ」
防御で圧倒して相手を過労死させるとか……明らかに盾の戦い方じゃないわね。
いや、むしろらしいっちゃらしいのかしら。
しかしそんなに固い相手だとどう立ち回るべきかしら……やっぱり浸透系の技で内部破壊かしら。
攻撃特化の方は当たらなければいいんだからどうにかなるかな……でも一発でこの学校吹っ飛ばせるとなると……うーん、難しいわね。
「まぁ今回呼ぶのは俺と同じオールラウンダー型の奴と、その防御特化だから問題ないよ。荒事になってもね」
「うむ、よろしく頼むぞローゲリウス王」
なんか、話が奇麗にまとまったみたい。
私蚊帳の外だけど万事解決ね。
「ちなみに君にも講師の仕事をしてもらいたいと思っている」
……え?




