トカゲ何回死ぬん?
「やだー、絶対ヤダー!」
「別にもう実践講習やれとは言わないから顔出してほしいってだけだってよ」
「絶対嘘じゃーん! あのリンゴ食ったら内側から膨張して爆死したんだぜ! しかも面白がって料理に混ぜる奴とか出てきて……俺なんかい死んだと思ってるんすか!」
「さぁ? でも他のゲームやリアルと違って残機減らないからいいじゃない」
「リアルに残機はねぇ!」
先生方に頼まれてゲリさんを連れてきたはいいけどさっきからずっと駄々こねてる。
うーん、やっぱり会議の最中に居眠りしてる王様を拉致してくるのはまずかったかしら。
でもみんな私が顔出した瞬間にどうぞどうぞって引き渡してきたしなぁ……。
「普通に講師をお願いしたいらしいわよ? 私が以前話した魔法使いの天敵に対する対応策、それを一番感じたのがゲリさんとの実践講習だったらしいから」
ちなみに私の実践講習では圧倒的すぎて実感わかなかったらしい。
んー、あれくらいできる人結構いると思うんだけどな。
影移動は難しいにせよ、銃弾に比べたらよっぽど遅い攻撃だから避けるのは難しくない。
撃つにしてもみんな好き勝手に撃ってるから回避も反撃もたやすいし、逃げ場所も多かった。
まぁ足止めてたけどさ、それでも普通に避けたり撃ち落とすのは楽だったわよ。
「普通の講師って……危なくないですよね」
「さぁ? ここ普通に歩いているだけで迷子になるから何とも言えないわ」
「おうちにかえして……」
「だーめ、正式に依頼受けちゃったから私はゲリさんを先生たちの前に引きずりださなきゃお金貰えないもの」
「横暴だ……」
「横暴でも横領でも何でもいいけどね、覚悟だけはしておいた方がいいかもしれないわよ」
「覚悟ってなに⁉」
「普通に講師するとしても、それはゲリさんをはじめとした魔法無効系の人達の弱点ばらす行為だから。発信元がゲリさんってばれたらッて考えると……」
「おうちかえるー!」
「だーめ」
逃げようとするゲリさん、うーん翼引っこ抜いた方がいいかしら。
ちょっと脅かしただけなんだけどなぁ……この学校防衛はしっかりしているからその辺問題ないと思うんだけど。
「まぁ半分は冗談として、ぶっちゃけた話をしましょうか」
「なんすか……」
「悪くない取引ができると思うわよ、ゲリさんの国もギルドも」
「はぁ……あんまり気乗りしないんすけど」
「例えばそうね、この学校は結構なレアものを持っている。それを安全に輸送するとなるとなにがいいかしら」
「うちのタクシーを売り込めってことっすか?」
「それはもうやっている、って言いたいんでしょう? それだけじゃないのよ、国として今後守りを固めていく必要があるわ。英雄と化け物が共存している国、そのトップはドラゴンのゲリさん、面白くないって連中はわんさかいるでしょうね」
「フィリアさんそれを見越して俺を王様に仕立てた?」
「そんなことはないわよ、ただ必然的にこうなっただけで」
正しく言うなら必然になるように諸々計算した。
正直なところ地獄の悪魔王だけで手いっぱいだって言うのに、大陸で国を治めてとか言われたら無理無理。
速攻で滅ぼすわ。
「その防衛にこの学校の技術と人員が使える、学校はゲリさんの国からいろいろ補充ができて卒業生の拠点にしやすい、これぞ共存共栄ってやつね」
「そこに俺の被害は……」
「王様って言うのはね、生贄らしいわよ」
アホ王が言ってたけど、ピラミッドってひっくり返すと一人が全部背負っているようなものらしいからね。
つまるところ見方を変えるとそういうこともあるって話。
ゲリさんはなぁ……なんかリアルでも苦労していそうだし、そういう星のもとに生まれたのね。
ちょっと不憫だわ。
1話のうちに複数回と言わず、幕間で複数回死亡した模様。




