学校編もといとかげ死亡RTA編
祝:毎日投稿継続1年
「わかったようなわからないような……」
授業を聞きながらついこぼれてしまった言葉、これが惨事のきっかけだった。
「はっ、こんな事もわからないのに僕たちの足を引っ張るのか?」
さっきの子犬君である。
明らかに馬鹿にした目、そして優越感に満ちた表情だ。
「やめなさいグレイ」
「でも先生、どれだけ貢献しても知識が乏しいのであれば魔法の実力だってたかが知れているじゃないですか」
「やめろと言っている。座らなければ減点だ」
「本当のことを言って何が悪いんですか! この女のせいで僕らの授業が遅れるんですよ!」
うーむ、聞いていると先生側の方がちょっと不利かな。
成績を盾にしているとはいえ子犬君のいうことは概ね正しい。
全部とは言わないけどね。
「知識があったとしても魔法が上手くなるわけじゃないでしょ」
「なんだと?」
なので助け船。
子供相手にイライラするほど大人げないわけじゃないからね。
まぁ……とはいえ現実を知ってもらった方がいいかもしれないわ。
こういう生意気なのは大成するか思わぬ強敵に出会って死ぬかの二択だから。
「知識ばかりの頭でっかちじゃ戦いについていけない、研究でも固定観念にとらわれて碌な成果を出せないと言ったのよ」
「撤回しろ!」
「お断り」
「このっ!」
子犬君が手のひらをこちらに向けて魔法を撃とうとする。
でも遅い、さっき実践講習やった人達よりも遅いし、レベル1の化け物プレイヤーの方がよっぽど早い。
まぁあれは種族特性みたいなのでカバーされているけどさ、それでもお粗末極まりないわね。
あー、でも先生も止める気配がない。
というかもう好きにやってくれという様子で、つまるところ伸び切った鼻をへし折れということみたい。
だとしたら喜んで。
子供は嫌いじゃないけど、生意気な子供は刀君の幼い頃を見ているみたいでいたたまれなくなるのよ。
将来若気の至りで苦しむんじゃないかなって。
その姿を見るのは楽しい……げふんげふん、哀れみが湧いてくるからね。
「バーストアロー!」
「えい」
何やらかっこよさげな技名を叫びながら撃ちだされた魔法、このゲーム魔法名は固定されていて変更できない。
あるとしたらオリジナル魔法か、フェイクで叫んだ名前、もしくは中二病だ。
この場合は三つ目ね、ただの火球が飛んできたので手のひらで払って撃ち返す。
当然当たらないようにしているけど、子犬君の髪を焦がしながら窓を突き破って外に飛んで行った。
……よしっ、今度は平気だったみたいね。
ゲリさん殺害のキルログが出ていない。
二度あることは三度あるっていうからちょっと身構えたけど……よかったよかった。
「な……」
「魔法の発動が遅い、威力も弱い、そもそもさっき教わった基礎の基礎であるはずの魔力圧縮とか言うのができていない。はっきり言って戦力外どころか論外」
「ぐっ……だというならお前の魔法を見せてみろよ! 腕力がいくら強くても魔法じゃ僕に勝てないだろ!」
「いいけど?」
魔導書を手に取り、それを見た瞬間ニヤリと笑みを浮かべる子犬君。
「はっ、所詮道具頼りかよ」
「実力で手に入れたものだから使って文句言われるのはおかしいと思うけど、まぁそこまで言うなら素手でいいわ」
んー、とりあえず装備を外すか。
何かいちゃもんつけられるのもあれだからなぁ。
えーと、ロストガン外してナイフ外して、それからの魔法効果に関係ない破壊王シリーズに着替えてっと。
うん、ゲーム的な演出で着替えは一瞬だから青少年の性癖捻じ曲げずに済むわね。
「先生、この防具の効果わかる?」
「ん? あぁ、ある程度はわかるが……どれも魔法強化みたいなのはついていないな」
「ということで先生のお墨付き。じゃあ行くわよ!」
さっき教わった内容をそのままに、今まで使ってきた空間を捻じ曲げる魔法。
それを子犬君の背後の窓に向けて発動……した瞬間だった。
「フィリアさん! いきなり撃ち落とすとか酷いっゲペッ」
窓から突撃しようとしたのか、子竜化したゲリさんがひしゃげて消滅していった。
……悲しい事故だったわね。
とかげ「教えてくれゴヒ、俺は後なんかい死ねばいい」
刹那さん「99822回」




