刹那式魔法戦闘術
「というわけで、あなた達はそもそもの連携がゴミ! まず声に出さずに合図をする方法を考えた方がいいわね。一番有名なのはハンドサインか作戦名を相手に悟られないようにする方法。と言っても手は杖を持っているわけだから作戦名ね。例えば単体狙いの魔法は林檎をキーワードに、誰を狙うのかを色で分けるとか」
「質問、なぜ林檎なのですか?」
「さっき実験で生み出して食べたくなったから」
あの黄金のリンゴ美味しそうだったなぁ……。
毒に弱くなければ食べてたんだけど、流石に無理よね。
「例えば最前列の中央を狙うなら赤の林檎が作戦名、向かって左なら緑の林檎で右なら青の林檎ってね。範囲攻撃ならまた別の名前、場所を変えて別の名前、コンビネーションで別の名前といろいろ考える必要が出てくるわ」
「……あの、それって必要な事ですか? 魔法使いは近づかれる前に安全圏から魔法を撃っていればいいと思うんですけど」
「甘い、例えば私ならこういう攻撃手段がある」
空に向かってビーム。
お腹がすいているので威力は控えめに……あ、またキルログでゲリさん撃破してた。
「はっきり言って魔法以上の射程と威力がある技よ。使い勝手も悪くない。こんな技を連発してくるのが魔の者だからね? はっきりいってこのままだと学校は消滅するわよ」
私の言葉に肝を冷やしたのか、生徒たちが固唾を飲み込む音が響く。
「ちなみに他にもこれで狙撃する方法もある」
ロストガンを見せると全員の目つきが変わった。
さすが研究者……でいいのかしら、いいのよね、魔法使いってそういうイメージだから。
「これは射程こそ長いけど、距離が離れると命中精度も威力も低くなる。それでも私なら百発百中よ?」
「威力が落ちるってどれくらいですか?」
「んー、最大射程を超えた段階で重症に至るくらいかしら。よほど当たり所が悪くない限り死なないから大丈夫」
まぁ悪い所に当てるんだけどね。
「あとはこういう行動してくる相手がいた場合遠くから狙い打つとかできないから」
影移動で適当な生徒の背後に回り込む。
本職の暗殺者ほどじゃないけど、真似事くらいはできるのよね。
本場で暗殺対象として狙われ続けたからその経験で学んだ。
「今のは純粋に移動魔法に近いものだけど、本職は怖いわよ? 気配を消して相手の死角に入り込んで正面からサクッと切り捨てるから」
説明しながら今言ったことを実践する。
うーん、流石に100人近い人数に囲まれているせいもあって死角に入るのが大変ね。
みんな「消えた!」とか「どこだ!」とかいってきょろきょろしているから常に移動し続けなきゃいけないし。
「とまぁ、こんな感じで接近してくる人もいる」
「あの、それ魔の者全員ができるんですか?」
「さすがに全員ではないわよ。でもできる人もいる。私みたいに正面から飽和攻撃を突破してくる人もいるし、そもそも魔法が効かないなんて人もいるから」
「……そういう場合は、どうしたらいいのでしょう」
「殴る、あるいは斬る」
「魔法使いに求める事じゃないですよ……」
「なにも魔法使いが肉弾戦やったらダメなんてルールないんだからやればいいじゃない。例えばそうね……炎を拳に纏わせてぶん殴るとかそういうの、魔法として存在しないの?」
「乱暴な魔法ですね……そんなのあるわけないじゃないですか」
「無ければ作る! これ研究の鉄則よ? まず作って、そのメリットとデメリットを考えて、使い物になるか散々調べて、そして最終的に使えるなら最適化していく。炎じゃあまり意味がないというなら雷でも纏ったら? 殴られた相手はそれだけで気絶するかもしれないわよ?」
私の言葉に生徒たちはもちろん、教師陣もざわつき始めた。
え、私今何か妙なこと言った?
「確かに、雷の魔法は威力こそ高いが当てるのは難しい……」
「そもそも雷を呼び寄せるのに数人がかりだったが、腕に纏わせる程度のものならば個人でも使える……」
「だが自分が感電する危険性があるだろう」
「それは防御魔法や守りの護符で対処できるだろう」
なんか議論が始まってる……。
こうなると研究職は面倒くさいのよね。
まぁお話合いは任せるとして、私の講義はこれくらいかしら。
「それじゃあ今日はこのくらいでいいかしら。新魔法でもできたら教えてもらうとして、今は他のあれこれ教わりたいから」
私としてはそろそろこっちが魔法教えてもらいたいのよね……。
ただ、その前にご飯食べたいからログアウトしよう。
新技が色々疲れるものだったわ。
刹那さん「ちなみにビームの一番いい使い方は拳で相手のガードぶち破ったところに全力全開の一撃をぶっ放す事」




