実践講習
そんなこんなで広場に移動した私達。
手渡されたのは盾をモチーフにしたネックレスだった。
なかなかいい趣味しているけど……無骨ね、飾り気が一切ないからあまり可愛くない。
「これより特別講師による実践講習を始める。ルールは簡単だ、講師は10分間逃げる。逃げる相手に魔法によるダメージを与え守りの護符を破壊しろ」
「あ、一つ補足。逃げるけど攻撃はしない、ただしそれはあなた達に対してであって飛んできた魔法をはじくとかはするから流れ弾に注意してね」
さすがに回避一辺倒だと辛いのよね……できなくはないけどさ。
ただ影移動とか混ぜないと詰みってパターンが偶然出来上がると可哀そうなのよ。
そういう訓練受けていないであろう人に対して転移技はね……。
「舐めやがって……」
おぉ、血の気の多い子がいるみたい。
本当に小声だったから私にしか聞こえなかったみたいだけど、誰かが呟いたのが耳に届いた。
「それでははじめ!」
合図と共に無数の魔法が飛んでくる。
どれも直線的で工夫がないわねぇ……。
とりあえず弾くまでもないし、回避するにしても足を使うまでもない。
上半身の動きだけで全てを躱して……お腹が減ってきたのでベルゼブブの脚を齧る。
「やったか!」
「やってないわよー」
むしゃむしゃとおやつ食べながら返事をする。
うん、相変わらず蟹みたいで美味しいわね。
これボイルにしても美味しいんじゃないかしら、今度多めに取って試してみましょう。
「くそっ、範囲攻撃に切り替えろ!」
ほほぉ、状況判断が早いわね。
でもまだまだ甘い、範囲攻撃なんてのは大した脅威じゃないのよ!
「ほっ、よっ、はっ」
飛んでくる魔法を両手の拳……を使うまでもなかったので左手一本で弾く。
とりあえず空に向かって飛ばしたから被害の問題はないと思うけど……ん?
なんかキルログ出てる……ローゲリウスを殺害しました?
えーと、聞き覚えのある名前だけど……あぁ、ゲリさんか。
ちょうどこの辺り飛んでたのね。
運が悪い人だこと。
「包囲しろ! 連携だ! 左側の奴らは逃げ場をなくすように撃て! 右側は飽和攻撃で動きを封じろ! 俺はその間にでかいのをぶっ放す!」
「いい判断だけど甘いわね」
逃げ場をなくすように、という注文も飽和攻撃というのも実は結構高度なテクニックだったりする。
まず相手の移動範囲や移動速度をしっかり把握していないと意味がない。
つまりさっきから一歩も動いていない私に対してその手段は悪手。
さらにでかいのを、なんて言っている辺り何をするかは大体想像できてしまう。
範囲魔法を私が撃ち落とせないように手前で爆発させるとかそう言ったものでしょ。
その程度なら……。
「っしゃぁ!」
「たーまやー」
「なにっ!」
この通り攻撃範囲から逃れて相手の背後に回り込むくらい造作もない。
「ほらほら、ぼーっとしてる暇あったら攻撃攻撃」
「くっ……」
ありゃ、なんか動きが止まっちゃった。
もしかして近接戦のいろはを本当に知らない?
魔法の弱点なんて銃火器と同じだと思うんだけどな……。
近づかれたら取り回しがいいもの以外は封じられるし、取り回しがいい拳銃みたいなのでも周囲への流れ弾とか同士討ちを考えるとうかつに使えない。
こういう時のためにナイフとかそういうのを持っておくべきなんだけど……。
「じゃあ元の場所に戻るから再開、あとで接近戦の方法とか教えるからね」
「今だ! 背中を撃て!」
「奇襲するなら声をあげない」
まったく……近接戦どころか戦闘と指揮のいろはも教えた方がよさそうね。
次回予告
一会ちゃん「刹姉の目が紅く……」
マヨヒガちゃん「お母さん、トランザムは使わないでください」
刹那さん「了解トランザム、ユニコーン!」
果たして作者は生き延びる事ができるだろうか。
バンダイさん許してくださいマジで。
次回「トランザム」
お楽しみに。




