訃報の原因が目の前に
その後は言うまでもない。
歓迎というのは言葉ばかりで、お茶とかは出てきたものの質問攻めだった。
「ロストアイテムの所持者なら最初に言ってくれたらよかったのに」
「いや、言う前に攻撃してきましたよね」
「魔の者なんだって? ちょっと素材くれない?」
「報酬次第です」
「これ、新発明のアイテムなんだけど試してみてよ!」
「間に合ってます」
こんな感じ。
やってることが……やってることが運営と何も変わらない!
「それで、例えばこれ一個でいくらで買い取ってくれます?」
ロストガンを机の上に置くと歓声が上がる。
同時に先ほどからずっと案内してくれていた男性がフードを脱いで、目を細める。
「はっきり言うが、我々の財力をすべて集めたとしてもこれ一つに足りるかどうかだ」
「え?」
「ロストアイテム、その名の通り既に製法が失われて久しく、実物すら失われていると信じられてきた物体だ。それを持ち込まれては……」
「ダース単位で持ってますよ?」
インベントリからロストガンをゴロゴロと取り出す。
うん、司馬さんが始める時とかに譲渡の抜け穴ないかなって探して大量に巻き上げたパンドラだけど、実のところNPC相手に売ったりできるだけでプレイヤー間での取引はできなかったのよね。
「今ならまとめ買いでお安くしておきますよ?」
「いくらだ?」
「んー、正直に言ってお金に困ってないので物々交換でもいいです。あと魔法の使い方簡単にでいいので教えてもらおうかなーと」
「そんなものでいいのか?」
「そんなものって、ふつう秘密にしておくものじゃないんですか?」
「いやまぁそうなんだが……魔の者は我々が苦心して編み出した魔法すら簡単に再現してみせるし、自力で生み出して見せるという話を聞いてな」
「……魔の者は、という言い方に引っかかりますね。英雄は違うんですか?」
「奴らは才能の有無があるからな。魔法を極めようというならばこの学園に来るのが一番だが一つの技を磨きあげる者もいれば、幅広く開発する者もいる」
ほうほう、つまり英雄プレイヤーは魔法に対する適正とかそういうのを最初にキャラクリするのか。
私達が種族を選んだように、彼らはある程度ステータスの数値が見えて調節できているのかもしれないわね。
「それで、実際ここに来た英雄はいるんですか?」
「10人程度だったか。一人は名をあげ戦に赴いたがそれ以来話を聞かない。残りもここを出て行ってそれっきりだ」
「みんな薄情ですねぇ」
「元来そういうものだ。この地に住まう者であろうと学園を卒業して、研鑽を積むために秘境に引きこもり人前に姿を現さない、あるいは旅を楽しむのが普通だ。どのみち学園に何かしらの連絡が来るのは訃報ばかりだな」
「はー、殺伐」
「で、改めて聞くが魔法を教わる程度でいいのか? それと物々交換だが何が欲しい」
「知り合いの……なんて説明したらいいのかしら」
妲己のことを話そうとして言葉に詰まる。
えーと、悪魔王のアバターって言うのはちょっと問題があるわよね。
立場上封印されているのはそれなりに面倒な理由があるからでしょうし。
んー、ここは適当に師匠とでもしておきましょう!
「この尻尾、これくれた人がいてね。私の師匠みたいな人なんだけど特殊な場所に封印されているのよ。このペンダントが無いといけないような場所にいて、しばらく顔出してなかったからお土産持っていきたいの。実験用マウスとか美味しい動植物なんかがいいわね、できれば無毒の」
「これは……凄まじいマジックアイテムだな。まるで神の力が宿っているかのようだ」
言えない、その神様に封印されている相手だなんて言えない。
「こっちは余らせてる在庫を特価で売る。そっちは私の持っているアイテムをここに余らせているもので買い取る、悪い取引じゃないと思うけど?」
「ふむ……いいだろう。だが値段に関しては君が量を決めてくれ。少なすぎると感じれば増やしていい、逆もまた然りだが……まぁないだろう」
「どうかしら。これで義理堅いのよ私」
「なら、その義理堅さに頼ってみるのも一興か」
声を潜めて笑って見せるお兄さん、なんか誰かに似てるなーと思ったら化けオン運営の主任だわ……。
あの人たちマッドサイエンティストの自覚あったのね。




