百合の波動(物理ダメージ)
さて、祥子さんのショック療法でどうにか普通にご飯を食べられるように……なってないんだなぁこれが。
いやね、ぶっちゃけた話あれから祥子さんの顔がまともに見られない。
二重の意味で。
どういうことかというと、まぁVOTが使えない今公安でお仕事をしている私、具体的には化けオン運営の実験に付き合ったり、一会ちゃんと書類整理したりしている。
それが忙しくてお昼ご飯を一緒に食べる事ができないのよ。
あと夕飯の時間も変わってくるから一緒の時間が作りにくい……というよりも、祥子さんがわざと時間ずらしているっぽい。
つまり避けられているのよね……凹むわ。
そしてもう一つの意味では、朝食は必ず一緒に食べるようにしているんだけど私が恥ずかしくて早食いしてしまう。
結果、互いに顔合わせする時間が少ないのだ。
フリーの時間とか祥子さん部屋に籠ってなにかしているから。
そんなこんなで、私と祥子さんの間に漂う空気が冷えている。
それは周囲にも伝染しているようで、クリスちゃんとかは居心地が悪そうにしているわ。
うずめさん、縁ちゃん、フレイヤさんはマイペースだけどね!
縁ちゃんのは今に始まったことじゃないけど他の2人……人の心が無いのかしら。
「刹姉、さっさと祥子さんと仲直りして」
そんな日々の中で不意に一会ちゃんに怒られた。
「別に喧嘩とかしていないけど」
「じゃあ2人のあの態度は何? 明らかに何かあったの丸わかりなんだけど」
「……うん、まぁなにもなかったわけじゃないけどさ」
「ならさっさと話し合ってきなさい!」
そう叫んだ一会ちゃん、自宅の中だからマヨヒガちゃんが防音にしてくれているからよかったけど……鼓膜が破れたわ。
さすがの声量、声だけで相手の鼓膜を破壊して三半規管を揺さぶるとは……。
「仲直りって言ってもねぇ……」
「互いに逃げられない場所で話し合えばいいのよ!」
「そんな場所がないから困っているわけで……」
『用意しましょうかお母さん』
「できるの? マヨヒガちゃん」
『はい、先日ネットで見つけた古いデータに面白いものがありました』
「面白いもの?」
『2000年代に流行った、SEXしないと出られない部屋というものがあります。こちらで観測することで疑似的に再現が可能です』
「大却下」
そんな部屋にいれられてみなさい。
祥子さんのことだから下手したら受け入れてしまいそうな気もするし、私がそれに耐えられるわけがない。
そして耐え切れなくなって、ビームで壁に穴あけてでも脱出する。
下手したら自爆する。
私がそんな空間に耐えられるはずがない。
「じゃあこうしましょう」
「え? ちょ、一会ちゃん? なにするの? なんで脱がせてるの⁉ ねぇなんか言って!」
なぜか実の妹に服を引っぺがされて運ばれる。
……なんだこの状況、お持ち帰りとでもいうの?
辰兄さんなら大喜びかもしれないけど、私実の妹に発情するような変態じゃ……。
「そおい! マヨヒガちゃん! ドアロック、いえ溶接! そして壁とドアを全力で補強! 縁のパンチでも壊れないくらいに!」
『無茶をおっしゃられる。しかし伯母上の言葉とあらば全力で耐え、全力で修復してみせましょう』
カポーン、と音が響き湯煙の中で私は茫然と座り込んでいた。
投げ込まれたのはお風呂場。
そこには一糸まとわぬ祥子さんの姿……おいこら二人とも!
「せっちゃん……?」
「違うんですこれは一会ちゃんが無理やり投げ込んで仲直りしろって言ってきてマヨヒガちゃんもそれに便乗して! というか本当に開かない! ドア溶接されてる! 壁も壊れない! 殴ってもびくともしないし罅入ったと思ったら速攻で直る!」
はめられた!
「……はぁ、そういうことね。まぁいいわ、一緒に入りましょう」
「え、でも……」
「もう何度か一緒に入ってるんだし問題ないでしょ。ほらさっさと髪と身体洗っちゃいなさい」
「……ふぁい」
やばいわぁ……すでに心がぐらぐらしている。
ごめんね辰兄さん、誘惑に弱い男とか思っていたけどあなたの心は強かった。
私、この状況に耐えられそうにありません。
刹那さんの早食いの様子
家系ラーメン:わんこそばみたいに食われる
カツ丼:モゴッ、プッ、カランカラン……
牛丼:ばりばりもきゅもきゅごくん




