英雄さん「一緒にしないで?」
今日はちょっと忙しいので早めの更新
え? 今喋ったよね彼女。
穢れた英雄、私が英雄の称号を手に入れると同時に世界に認められて影として生み出された英雄。
システム的な事を言うなら正式に英雄の称号を手に入れた人のコピーを英雄NPCとして生成されているんだと思うけど……。
「あの、なんで召喚に応じてくれたの?」
「私、は英雄、求めるも、のがいるなら、馳せ参じ、る」
「いやいやそうじゃなくて……」
こっちはカオス陣営、真っ向から英雄に敵対している人たちだ。
それをなんで……。
「英雄、は、皆守る、ものがある」
「守るもの?」
「堕ちた、のは、秩序」
秩序ねぇ……確かにマナー違反したプレイヤーを狩っているから間違いないと思うけど、その割にはNPCの不正とかは放置しているわよね。
「代償、この地にす、まうものには手出し、できない」
「あぁ、だからプレイヤーだけが狙われるのか……」
なんか納得した。
「だとしたらあなたが守るものと、代償は?」
「自由、と、不自由」
んー?
「ちょっと待ってね、今考える」
「ん」
えーと、守るものと代償の順番で聞いたからその回答だと考えましょう。
まず守るものが自由、範囲が広すぎてどこまでかわからないけど……ともかく自由を求めてという理由があるなら彼女は自由に動けるわけだ。
いや代償が原因で動けない?
つまりそれが不自由ということ……なにをもって不自由とするのかがわからないわね。
「不自由が代償でいいのかしら」
「ん」
「なら、その内容は?」
「求める、者の声」
あぁ、なるほど。
つまり誰かが助けを求めない限りは彼女は動くことができないんだ。
英雄さんがNPCを殺せない代償、けれどそれは彼女を縛るものじゃなくてやろうと思えば片っ端からPKできるわけだ。
理性で抑えているのね、私と同じか。
食べたいという欲求に従っていたら今頃地球はぺんぺん草一本生えない不毛の大地になっていたし、海水は飲み干してしまっていたかもしれない。
「自由の内容は?」
「なんで、も。解放、をもとめ、るなら」
「この前の戦争の時は誰かが解放を求めていたの?」
「戦士」
「……戦いの中で精神をすり減らした人がもうこんなことしたくないって願っていたとか?」
「ん」
「その過程で呼び出した人を解放……殺したりした?」
「ん」
「ついでに指導者も?」
「ん」
……猿の手みたいな女ね。
願いは叶えるけど、本人が望んだ形で叶えるとは言っていないあれ。
例えば大金持ちになりたいって願ったら身内に不幸が起こって保険金が大量に舞い込んでくるような、曲解された願いの叶え方。
「私が言うのもなんだけど、もう少し人間の感情を学んだ方がいいわよ?」
「まな、んだ、から喋れ、る」
「あぁ……」
成長途中か。
質の悪いことにこの英雄はまだ子供なんだ。
だからもっとも単純な暴力という手段で動いている。
そのうち理性で動けるようになるんでしょうけど……厄介な存在ね。
「ちなみに、なんで守るものが自由で代償が不自由なの?」
「親の、影響」
すっと私を指さしてそう答えた。
……私、そんなに自由はないけど不自由もしていない気がするんだけどなぁ。




