マジでツッコミが追い付かないんだけどどうなってるの?
「我が妻よ、窮地と聞いて馳せ参じた。悪魔王となられたと聞き我も鍛錬を積んだのだ。その実力しかとご覧にいれよう」
「ロウ陣営に突撃、帰ってこなくていいからいってらっしゃい」
「おぉ、なんと無慈悲な命令か……だがそれがいい! そこな珍妙な髪形の女! すぐに兵を集めよ!」
「誰に向かって口をきいてらっしゃるのかしらこのぼんくらは。わたくしはメイリン・ソトース。裏世界を牛耳る女ですわよ」
「知ったことではない。所詮駒の一つに過ぎないのだ、我も貴様もな」
「ちっ……背中に気を付けなさいな」
「互いにな」
……この二人、結構相性いいわね。
つんけんしているけど息がぴったりだわ。
「フィリアさんも、あとで覚えておきなさいな。今回のこと責任取っていただきますからね!」
「それなら今までの貸しから1個引いておいてくださいねー」
うん、結構な数の貸しがあったはず。
えーと、軍事衛星を奪取されたときに宇宙で大立ち回りしたし、システムハッキングされて世界中の兵器を奪われた時も逆ハッキングで奪い返した。
商談中に乗り込んできた人たちを纏めて捕まえたし、メイリンさんの家がレーザーで焼かれそうになった時は身を挺してそれを防いだ。
太陽光集めた光線で狙撃されそうになった時も身代わりになって撃たれたし……ぱっと思いつくだけでもこれだけある。
両手足の指の数だけじゃ足りないでしょうね。
「ぐぬぬぬぬ……」
「おい、我が妻と戯れていないでさっさと行くぞ女」
「メイリンですわ! まったく……あなたもう少し男は選んだ方がいいですわよ」
「あぁ、あれ勝手に言ってるだけの痛い人なんで」
「……関わる相手を選んだ方がいいと言いなおしますわ」
「あっちから接触してきました。ストーカーです。あと関わる相手選ぶならメイリンさんは真っ先に関わらないようにしてます」
「この……」
「それより、あれ一応悪魔の中でも最上位ですからね。ここで時間とって機嫌損ねたら本気で負けますよ。何なら殺されますよ、医務室で眠りたいなら構いませんけど」
「あーもう! わかりましたわ! やればいいんでしょうやれば!」
ぷんすかと擬音を浮かべそうな感じで医務室を出て行ったメイリンさんを見送って、私はベッドに横たわる。
あー、面倒なのが増えた……運営は私に恨みでもあるのかしら。
そりゃまあちょっとやりすぎたことはあるかもしれないけどさ……それにしたってこの仕打ち。
カオス陣営に放り込んだだけでは飽き足らずあんな悪魔を助っ人NPCにするとか……悪魔を助っ人……?
……ふふ、いい事思いついちゃった。
「悪魔王の名において命ずる。地獄の悪魔達よ、私の前に現れなさい」
ふっふっふっ、数で負けて質で負けている今勝つことは不可能。
だったら数だけでも増やせばいいじゃない。
悪魔王としての能力の一つに悪魔を召喚できるというものがある。
相手にも事情があるから拒否権もあるけど、それでも王様の命令は絶対!
大学の頃の飲み会でやった王様ゲームで学んだわ!
服を脱げとか言ってきたやつが泣いて謝るまでご飯食べてやったけどね!
「あ、今お客さんとってて忙しいから別の機会にしてくださーい」
「同じく、常連さんが来ているんですー」
「もごもご……ごくん、ぷはっ。あー、接客中につき拒否しまーす」
……色欲勢力全員拒否か。
ま、まぁいいわ。
あの人たちはお仕事で忙しいからね!
生々しい音が聞こえたのは気にしない!
「怠惰勢力代表させられて答えまーす。全員炬燵が温かくて無理です」
怠惰は最初から期待していなかった!
「強欲勢力、アイゼン様が行ってるからヤダ。あの人俺達の手柄も奪う」
「同じく。アイゼン様と同じ戦場に立ちたくないです」
なんたること!
一番足手まといなのあいつじゃない!
「暴食勢力代表マリアンヌ、現在統治に忙しくて無理です。どこかの悪魔王様が考え無しに戦争しまくって、表の世界でも戦争に参加して今地獄は人口爆発でてんやわんやですから」
ガッデム!
「嫉妬の悪魔です。今少女漫画の主人公に嫉妬するのに忙しい」
「同じく嫉妬悪魔、少年漫画の主人公が出会いに恵まれすぎてて嫉妬中」
「右に同じく、異世界転生ハーレム作品の主人公に嫉妬しているからパス」
お前ら絶対暇だろ!
というか! 創作物に嫉妬しても意味ない!
「傲慢の悪魔です。傲慢に拒否します」
雑! もう断り方が雑!
「憤怒の悪魔。あなたがズタボロにされても憤怒することはないのでご安心を。ということで不参加」
……後でぶん殴りに行こう。
くそっ! 悪魔は役に立たん!
他に何かないか……他に!
「もう誰でもいいから参戦求む! 報酬はお金でも食べ放題でもアイテムでもいいから!」
「……………………」
その言葉に地面からにゅーと手が出てきた。
挙手している……のかしら。
まぁいいわ、この際だから誰でもいい!
「よろしく!」
「……」
その手の主がズズズズと浮上してきて、そして私の前でサムズアップした。
鏡を見ているような気分になるが、これは……紛れもなく私だ。
強いて言うならモノクロの私だ。
「穢れ、た英雄……食事……じゃな、かった……義、によって、手をか、す……」
喋ったぁあああああああ!




